第121話:驚愕の発言

 日が暮れて外は既に暗くなっている。

 俺達はリリィの家でのんびりと過ごしていた。

  

「でね。その時にリリィは一撃でモンスターをやっつけちゃったのよ! すごかったんだから!」

「へえ。それはすごいな。そんな活躍してたなら見てみたかったな」

「でしょ? すごい頼りになるのよ!」


 皆もすっかり打ち解けている。

 今の話題はリリィの活躍についてだった。

 ジークさんがリリィがどうやって戦っているのか気になったようで、それを聞いたラピスとフィーネがリリィの武勇伝を語っていた。

 それを聞いているリリィが少し恥ずかしそうにしている。あんなリリィを見るのは初めてかもしれない。

  

 そんなこんなで雑談しながらくつろいでいると、膀胱が限界に近づいてきたことを感じた。

  

「あの、トイレ借りたいんですけどいいですか?」

「それならここを出てから家の裏にあるよ。暗いから気をつけて」

「ありがとうございます。行ってきます」

  

 俺は立ち上がって家を出ることにした。

 しかし家を出てからすぐに近くに誰が立っていることに気づく。

 何となくその人を見てみると……


「…………族長さん?」

「あっ……」


 こっちを眺めていたのは族長だった。

 あの迫力あるおっぱいは間違いない。確かカルラさんだっけか。

 何故あんな所で立っていたのか疑問に思ったが、それよりも自分の膀胱具合を優先することにした。


「そ、それじゃあ俺はこれで……」

「…………」


 軽く頭を下げてからすぐにトイレに向かうことにした。


 それから用を済ましてから家の中に入ろうかと思った時だった。

 カルラさんがさっきと同じ位置で立っているのを発見した。


 さっきからリリィの家をずっと眺めている気がする。

 どうしてあんな所で眺めているんだろうか。用があるのなら声を掛ければいいのに。

 ……まぁいいや。さっさと戻ろう。


 そのまま進んで家の中に入ろうかと思った時だった。


「ま、待ってくれ!」

「え?」

「そ、その……君はリリィの仲間なんだろう?」

「まぁそうだけど……」

「もしかして君はパーティのリーダーなのかい?」


 急に話しかけられたと思いきや何故そんなこと聞いてくるんだろうか。

 しかしリーダーか。深く考えたことは無かったな。

 俺がまとめてるようなものだし、リーダーと言ってもいいかもな。


「ん~……似たようなもんかな?」

「そうか……」

「……?」


 すると今度は考えだしてしまった。

 今の質問は何だったんだ?


「あの……何故そんなこと聞いてきたんですか?」

「…………」

「もしもーし?」

「…………君に聞きたいことがあるんだ」

「はぁ。俺に聞きたいこと? 何ですか?」

「ここでは話しにくい。場所を変えようか。少し遠くなるが付いてきてくれないか?」

「どうして急にそんなことを……」

「頼む……」


 頼み込むその目はどこか悲しそうな感じがした。

 まるで助けを求めているかのような雰囲気だった。

 色々と疑問が湧いてきているが、内容が気になったので付いていくことにした


「いいですよ」

「! そうか。すまないな。どうしても話しておきたかったんだ」

「でも俺はトイレに行きたくて出てきたから、みんなに知らせないと……」

「ああいや。それはアタイがしよう」


 そういって家に向かって歩き出し、ドアを開けて顔を覗かせてから、『ちょいとゼストって子を借りてくよー』と言って出てきた。


「じゃあ行こうか。アタイの後を付いてきてくれ」

「あ、はい……」


 あれでいいんだろうか。

 家の中では困惑した声が聞こえてきた気がするが……まぁいいか。後で事情を説明しよう。


 それからカルラさんが歩き出したので俺も後を追うことにした。

 既に日が暮れていて辺りは暗くなっているが、月の光りが明るかったので割と何とかなりそうだった。


 それからずっと付いて行くが、どうやら村から離れていくようだった。

 そのまま進んでいくと、傾斜のある坂道を登っていくことになった。


「暗いから足元に気を付けて」

「は、はい……」


 それからは特に会話も無く、ひたすら登りづつけた。

 そして眺めが良さそうな高台へとやってきた。もし日が昇っていたら絶景だっただろうな。

 ひたすら進んでいくと、とある大きな石の側までやってきた。


「さて……ここで話そうか。その前に……」


 カルラさんは腰に付けていた容器を石のすぐ近くに置いた。

 あの石はもしかして……墓石だろうか?


「それってもしかして……」

「ああ。ここにはサリィが眠っているんだ」

「サリィ? 誰なんです?」

「あれ? ジークから聞いてなかったのかい? サリィはジークの嫁。つまりリリィの母親だよ」

「……!」


 やはり墓石だったか。

 というかリリィの母親はサリィという名前だったのか。


「そんじゃ……そこに座ろうか。アタイもいつもその岩に座ってるんだ」


 墓石から近い場所にある岩に座ることになった。この岩は椅子として使ってくれといわんばかりに座りやすい形をしていた。


「さてと……アンタもこれ飲むかい?」


 すぐ横で容器を持って差し出してくる。


「それは?」

「酒だよ。飲みやすくて美味しいぞ。飲んでみな」

「い、いや。俺はいいです……」

「そうか。じゃあアタイだけ頂くよ」


 そう言ってグイッっと一口飲んだ。


「ぷはっ……」


 そして墓石の方を見つめ始めた。


「………………………………」


 しかしその状態から何も話すことも無く、お互いに無言のまま時間が過ぎていく。

 向こうから話始めるまで待っていたが、このままだと話が進まなさそうなので声をかけることにした。


「あの……俺に聞きたいことって?」

「ん? ああそうだったな。悪い悪い。ちょっと考え事してたんだ」

「はぁ……」

「君に聞きたい事があるんだが……その前に、サリィが何故死んでしまったのか知ってるかい?」

「えーと……」


 あれ。そういえばリリィの母親が亡くなった原因は聞いてないかも。

 リリィからは小さい頃に死んじゃったとか言ってたが、具体的な死因については話してなかったな。


「いや。知らないですね」

「そうか……話してなかったのか……」

「……?」


 再びカルラさんはそのまま黙り込んでしまった。

 何故このタイミングで聞いてくるんだろうか。もしかして聞きたい事ってリリィの母親に関係することなのか?

 しかし俺は本当に何も知らないし、話せる事は無いと思うんだけどな。


「………………知りたいか?」

「え?」

「サリィが死んでしまった原因をさ」

「教えてくれるなら……」

「そうか。なら教えるよ。サリィはな――」


 話した内容はあまりにも衝撃的だった。



 その言葉で眠気が完全に吹き飛んでしまうのに十分すぎるほどだった。



 しかし淡々と、ハッキリとカルラさんは口にした。



 その内容は――



「サリィはな……………………………………アタイが殺したんだ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る