第117話:それぞれの動き
森の中をある程度進んでいくと、モンスターの気配がし始めた。
気配を察知したのかラピスが叫ぶ。
「……! 何かいるみたいよ! 気を付けて!」
「!」
前方を歩ていたリリィが足を止めて警戒し始めた。
すると、前方の茂みからモンスターが姿を現した。
「あいつは……キラーマンティスだな。防御力は低いけど、その分鋭い鎌が強力だ。注意しろ!」
「何度か倒したことある! この程度ならアタシでも倒せる!」
出てきたのは、デカいカマキリ型のモンスターであるキラーマンティスだ。
リリィが素早く大剣を構えて対峙する。
「丁度いい! お前でスキルを試してやる!」
そう言ってキラーマンティスに突っ込んでいった。
そして近づくと同時に大剣を振り上げ――
「いくぞ! 《パワースラッシュ》!!」
キラーマンティスは避けきれずに直撃。一刀両断した。
胴体ごと切り裂かれ、そのまま地面に倒れて動かなくなった。
「さすがリリィね。一撃で仕留めるなんてやるじゃない」
「おー……」
「まぁリリィならスキルが無くても一撃で倒せたかもしれんけどな」
あのモンスターは耐久力自体は大して高くない。ある程度の威力を持った攻撃なら一撃で葬ることも難しくは無い相手だ。
「お。まだ来るみたいだぞ! みんな気を付けろ!」
リリィが叫ぶと同時に周囲からキラーマンティスが複数現れてきた。
「よーし! まとめてぶっ飛ばしてやる!」
「あたし達も援護するわよ! いくよフィーネ!」
「うん!」
それぞれが動き出して襲撃してくるモンスターに対処していった。
襲ってきたモンスターを全て片づけて奥へと進む。
さすがに慣れてきているだけあって苦戦することなく倒し切れた。
更に進んでいくと、ラピスが再び反応した。
「何か来るわよ! ……たぶん飛んでくる!」
「!? ど、どこ!?」
「! 来たぞ!」
羽音らしき音が徐々に大きくなっていく。
その方向を見ると……
「あいつだ!」
「何あれ!? ハチ!?」
姿を現したのは巨大な蜂型のモンスターだった。
「あいつはキラービーだな。そこまで強くないけど針に気を付けろ! 毒を持ってるぞ!」
「!? ならさっさと倒さないと……」
「で、でも……届かないぞ! アタシの剣だとあんな高い所にいるやつは無理だ!」
相手は空を飛んでいる飛行型のモンスターだしな。いくらリリィでも高い位置に居る相手にはどうしようもないみたいだ。
こういう時の為にスキルで対処したいんだが、リリィはまだ1つしかスキルがない。現状はどうにもならないか。
「だったらあたしに任せて!」
ラピスが飛んでくるキラービーに狙いを定める。
「当たって! 《ソニックアロー》!」
風の刃を纏った矢が放たれる。
動きが早いキラービーには矢が直撃することは無かったが、すぐ近くを通過したせいで風の刃がキラービーの羽を切り裂いた。
浮力を失ったキラービーは成すすべもなく落下していく。
そのまま地面に激突。すかさずリリィが落下地点に向かって急いだ。
「これなら……やあっ!」
リリィの大剣でキラービーは一撃で切り裂かれた。
「剣が届くならこっちのもんだ!」
「さすがね。これなら無理に当てる必要は無さそうね。羽さえ奪っちゃえば何も出来なさそうだし」
「剣が届かなくてどうしようか悩んでたんだ。ラピスのお陰で助かったぞ!」
「飛んでるモンスターなら任せて! 片っ端から叩き落としちゃうんだから!」
なかなか良い連携だった。
お互いに苦手とする部分を補うように動けていて理想的ともいえる。
「! まだ来るよ!」
他にもまだ居たらしく、数体のキラービーがこっちに向かってくるのが見えた。
「やっぱり1匹だけじゃなかったのね! でもこれくらいなら何とかなりそうだわ!」
「今度は私も……!」
フィーネが詠唱を初めて火の矢が増えていく。
「このくらいなら……《ファイヤーアロー》!」
3本の火の矢が生成され、キラービーに向かって発射。火の矢は2本が外れたが、1本が命中した。
命中したキラービーはよろけながら落下していく。
「もっと落ちてこい……ここだ!」
落下途中だったが近くに居たリリィが切り裂く。地面に落下したのは真っ二つに分断されたキラービーの死体だった。
「うん、いける! これならアタシでも戦えるぞ!」
「じゃあトドメは任せたわ! 片っ端から撃ち落とすから後はお願いね!」
「おう! 任せろ! どんどん落としてくれ!」
かなり安定して動けていて悪くない。それなり長く組んでいる3人だけだって息もピッタリだ。
ここは俺の出番は無さそうかな。
その後も襲ってくるモンスターに対して問題無く倒し切ることが出来た。
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