第116話:出発

 翌朝になり、起きてから全員を居間に集合させた。

 そして昨日リリィが言っていた事情について2人に説明した。


「なるほどねぇ。リリィは父親に会いに行きたいのね」

「そんでついでに道中のモンスター達も狩りながらいくつもりなんだよ。ならお前らも一緒にどうかと思ってな。今のお前らなら問題無く倒せるレベルだろうし」

「そういうことなら一緒に行くわ。リリィにも色々助けてもらったし、あたしも出来る限り協力するつもりよ」

「私も同じです。リリィさんのお役に立てるなら喜んで協力しますよ」


 答えは聞くまでも無かったな。 2人とも迷いなく返事をしてくれた。


「! 本当か!」

「ええ。もちろんよ」

「微力ながら力になりますよ」

「ありがとうみんな!」


 リリィも思わず感激しているな。いい仲間に恵まれたと思う。

 これで次の目標は決まった。


「それじゃあもう一回聞くけど、リリィは北方面からやってきたってことで間違いないんだな?」

「うん。そこから歩いて街まで来たんだ!」

「あ、歩いてなのね……どれぐらい掛かったの?」

「ん~とね。5日ぐらい? 少し早めに歩いたからたぶんそのくらい」

「そ、そうなのね……」

「あっ。森を抜けるまで時間かかったからもっと経ってるかも」

「へ、へぇ~……」


 ということは……リリィの故郷に行くにもそれぐらいの日数が掛かるってわけか。

 これはちょっとした長旅になりそうだ。


「まぁ途中までは馬車で行ける所まで行こうと思う。そのほうが体力も温存出来るしな」

「よかった……」

「というわけで準備が出来たら出発だ。全員支度しろ」


 俺の言葉に3人とも頷き、それぞれ動き出した。




 それから数日が経った。

 俺達は馬車に揺られ続けて移動し、森の近くまでやってきたのだ。

 全員が馬車から降りてから、少し傾斜になっている坂を登った。そして森全体が見通せる場所までやってきた。


「この森を抜けた先にリリィが住んでた故郷があるのか」

「うん! あの山を超えた先にあるよ!」


 リリィが指さした方向には、森の先に山地が見えた。そこまで高くなさそうな山のようだ。


「へぇ~。結構遠いのねぇ。よくあんな場所から来れたわね……」

「だって外の世界が楽しみだったんだもん。アタシの実力でどこまで行けるかワクワクしてたし、楽しかったぞ!」

「そ、そうなのね……」


 リリィの体力ならそれぐらいこなせるだろうな。

 というか言動から察するに故郷から出たことないっぽいな。道理で色々と常識が欠けてると思った。


「でもあんなに遠くだと帰ってくる時が大変そうだわ……。行く時と同じぐらいの労力が必要ってことだもん。フィーネは大丈夫?」

「た、たぶん平気だと……思う……」

「あ、それなら心配要らないぞ。家にはすぐに帰れるし」

「へ? それってどういう……」

「おっと忘れてた」


 森に入る前にやっておくことがあるのを忘れてた。

 リリィに振り向いて思い出したことを伝える。


「リリィのスキルツリー見せてくれ。現状はまだ1つもスキル無いからな。今のうちに習得しておかないとな」

「うん。お願い!」


 リリィが冒険者カードを差し出してきたので受け取り、スキルツリーを確認した。

 まだ習得可能なスキルが全然増えておらず、初期スキルだけが表示されている。

 まぁ熟練度が溜まっていないから仕方ないんだけど。


「ん-と。SPスキルポイントは余りまくってるからスキルは取りたい放題だな。とはいっても今は初期スキルだけだけど」

「よく分かんないから任せる!」

「あいよ。つっても現状はほぼ1択だけどな」


 スキルツリーから初期スキルである《パワースラッシュ》を選ぶ。


「このパワースラッシュってやつを習得するんだ。このスキルは特別に強いというわけじゃないんだが、使いやすくて便利な攻撃スキルなんだよ。習得しといて損は無い」

「これかな……」


 リリィが操作して《パワースラッシュ》を習得。これでリリィもスキルが使えるようになった。


「今はこれくらいしか選択肢が無いけど、後はひたすらモンスター狩りまくって熟練度貯めるしかない。こればかりはどうしても時間が掛かる」

「でもひたすらモンスターをぶっ飛ばせばいいんだろ? だったら余裕さ!」

「まぁそういうこった」


 今のリリィならその辺の雑魚には負けないぐらい強くなってるはずだからな。大した問題じゃないか。


「よし。これで準備完了だ。んじゃさっそくあの山目指して出発するぞ」

「おー!」


 そして全員で森の中へと突入していった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る