第113話:フィーネ失踪?

 リリィと共に急ぎ、2人と合流することができた。 

 それから他の場所に行こうかとした時だった。 

  

「……あれ?」 

「どうしたのフィーネ?」 

  

 すぐ隣に居るフィーネが止まって首を傾げたのだ。 

 そんなフィーネの行動にラピスも不思議そうにしている。 

  

「………………」 

「フィーネ? どうしたのよ」 

「……な、何でもないよ」 

「そう? だったらいいんだけど……」 

  

 しかしフィーネは納得していないような表情で俺を見つめる。 

 それから密着しそうなぐらい近づいてきた。 

  

「ゼストさんは……」 

「ん? 俺がどうかしたか?」 

「その……誰かと会っていたんですか?」 

「うん?」 

  

 どういうことだ? 会っていた? 

 唐突すぎて意味がわからない。 

  

「別に誰かに会いに行ったわけじゃあ……あっ」 

「?」 

  

 会っていたというか、変な占い師に絡まれたことはあったな。 

  

「なんつーか、怪しい占い師っぽいやつに遭遇はしたな。面倒だったからさっさと金置いて逃げたけど」 

「そ、そうですか……」 

「人に会ったのはそれぐらいだけど、それがどうかしたのか?」 

  

 実はもう一人、娼婦っぽい女にも絡まれたんだが、何となく言いにくい。これは別に言う必要もないだろう。 

  

「い、いえ……何でもないです。変なこと聞いてごめんなさい」 

「いやまぁ別にいいけどさ」 

  

 どうしていきなりこんな事聞いてきたんだろうか。俺が誰かと会うのがそんなに気になるのかな。 

 まぁいいや。せっかく合流したんだ。何か食べに行くか。 

  

  

  

 その日の夜。 

 家の中を歩いていると、ラピスがキョロキョロと周囲を探すような動きをしているのを発見した。 

  

「……あっ! ゼスト! 丁度いいわ!」 

「どうかしたのか? 探しものか?」 

「実はフィーネが見当たらないのよ。さっきから探しているんだけど、どこにも居なくて……」 

「フィーネが? 部屋に居るんじゃないのか?」 

「部屋にも来てないわ。どこにいったのかしら……」 

  

 フィーネの行方が分からない? 

 一緒に帰宅したんだから家の中にいるはずなんだけどな。 

  

「トイレに篭っているとかは?」 

「見てきたけど居なかったわ。お風呂場にも居なかったし……」 

「そうか……」 

  

 この家は確かに広くはあるが、迷子になるほどではないはずだ。 

 フィーネも住み始めて慣れてきた頃だろうし、今更迷子になるとは考えにくい。 

 だったら何処に消えたんだ? 

  

「もう一度探してみる。ゼストも見つけたら知らせてくれると助かるわ」 

「そうする。俺も少し探してみるよ」 

「お願いね!」 

  

 そしてラピスは周囲を探しながら離れていった。 

  

 しかし本当に何処に居るんだろうか。 

 もう日は暮れているし、この時間に外出したとは思えない。 

 イタズラで隠れるような子じゃないし、ここまで探しても見つからないのはおかしい。 

 う〜ん…………分からん。 

  

 とりあえず一度部屋に戻って落ち着こう。 

 そう思い自分の部屋まで移動して中に入ると…… 

  

「…………え?」 

  

 布団が不自然に膨らんでいることに気がつく。 

 誰か入ってないとあそこまで大きくなるはずがない。 

 まさか………… 

  

 ゆっくりと近づいて覗き込んでみると…… 

  

「……居たよ」 

  

 フィーネが気持ちよさそうにして眠っていた。 

 なんでこんな所に居るんだ? というかどうして俺の部屋に入ってきてるんだ? そもそもなんで眠っているんだ? 

 あれだけラピスが探しても見つからないわけだよ。 

 俺の部屋に居るなんて思いつきもしなかっただろうしな。だからここだけ捜索しなかったんだろう。 

 とりあえず起こすか。 

  

「フィーネ。起きろ」 

「…………う、う〜ん……」 

  

 フィーネは眠そうにしながらゆっくりと起き上がってきた。 

  

「なーに……お姉ちゃん……まだ眠いよぅ……」 

「よう」 

「…………」 

「…………」 

  

 まだ寝ぼけているのかボンヤリしていたが、徐々に目が開いて俺が居ることに気づいたようだ。 

  

「……ッ!?!?!? あ、あれ!? ゼストさん!? どうしてここに!?」 

「それはこっちのセリフだ。何でフィーネが俺の部屋に居るんだ?」 

「え…………」 

  

 ようやく今いる場所に気づいたようだ。 

 どんどんが顔が赤くなっていく。 

  

「あっ…………」 

「自分の部屋じゃないだろ? ここは俺の部屋だぞ」 

「…………」 

「どうしてこんな場所で寝てるんだ? 寝るなら自分の部屋でいいだろう」 

「あぅ……その……あの……」 

  

 さすがに予想外すぎて俺もビックリした。 

 フィーネは勝手に人のベッドに潜り込むような性格じゃないはずだ。というかそんなことする理由もないはず。 

 いやまさか…… 

  

「もしかして部屋を間違えたのか? 寝ぼけてて入る部屋を見間違えたとか?」 

「! そ、それです! そうなんです! うっかり寝ぼけていたんです!」 

「やっぱりか……」 

  

 そんなことだろうとは思った。 

 家に帰ってきてからも眠そうにした気がするしな。 

  

「とりあえずラピスを探してこい。フィーネのこと心配して探してたんだぞ」 

「そ、そうですね! お姉ちゃんの所に行ってきます! 迷惑かけてごめんなさい!」 

「いいって」 

  

 フィーネはベッドから降りてから慌てて部屋から出ていった。 

  

 しかしまさかフィーネがこんなドジっ子みたいなことするなんてな。ある意味ではラピスと似ているかもしれない。 

 とりあえず見つかってよかった。一安心だ。 

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