第108話:オークとの再戦
俺達はとある場所に向かって移動中である。
今日も皆と一緒に狩りに出かけている。
「ねぇねぇ。どこにいくつもりなの?」
「ん? 前にも行ったことのあるオークの森だよ」
「え……オーク……」
途端にラピスの表情が曇る。隣にいるフィーネも同じように少し戸惑っているようだった。
そんな光景にリリィも不思議そうに眺める。
「あれ? どうしたんだ? 元気ないぞ?」
「まぁちょっとな。オークには苦手意識があるみたいなんだ」
2人は前にもオーク狩りに来たことがあったからな。その時のことを思い出してしまったんだろう。
少々トラウマ気味になっているのかもしれない。
「だ、大丈夫かしら……倒せるかなぁ……」
「何言ってんだ。昔と比べたお前らも強くなったんだし。十分勝てる相手さ」
「う、うん……平気よね……?」
自信なさげなラピスだが、実力的には問題ないはずだ。
だからこそまた狩りに行く。色々なモンスターを相手にして慣れて欲しいからな。
そしてオークの森入り口付近に到着。
さっそく森の中からモンスターの気配を感じ始めた。
「いきなり遭遇か。探す手間が省けたな」
「よーし! じゃあアタシが相手になってやる!」
リリィが大剣を構えて気配がある方向を見つめる。
しかし向こうからやってくることは無かった。
「うーん、襲ってくるかと思ったけど動かないのかな」
「ただ警戒してるだけかもしれないが、もしかしたら誘ってるのかもしれんぞ。囲まれないように注意しろ」
「分かった。じゃあアタシが近づいてみるから、皆は援護頼んだ!」
「ま、任せて!」
全員が頷いた後に、リリィは大剣を構えたまま茂みに近づいていった。
するとそれに反応するかのように1体のオークが飛び出してきた。
「グオォォォォ!」
「! 来た!」
リリィはすぐに反応して動き、オークに接近する。
オークも近づくリリィを睨んで襲い掛かる。
「ガァァァァァ!」
「やぁぁぁ!」
リリィは攻撃を避け、オークを斬りつけた。
「ガハッ……」
「これでどうだ!」
よろけるオークに対して追撃をし、3回ほど斬りつける。
それが致命傷になったのか、オークは倒れ、動かなくなった。
「おお! やるわね!」
「見事です!」
「! まだ居るぞ!」
リリィが叫ぶと同時に、周囲から複数のオークが茂みから姿を現した。
やはり他にも居たか。最初の1体で様子見していたんだろう。
「!? 来るわ!」
2人は急いで武器を構えてオークに振り向いた。
「こっちは俺に任せろ。リリィは近づく奴らを片っ端から倒せ! ラピスはリリィが囲まれないように数を減らせ! フィーネはラピスのフォローしろ!」
3人とも頷いてからそれぞれ動き始めた。
「これで……どうだ!」
リリィは一番近くにしたオークを斬りつけ、よろけたところに追撃すると同時に2体目のオークに向かって動き出す。
「ここは通さない……ッ!」
「ガハッ……」
2体目のオークへの反応も悪くない。
さすがリリィだな。複数相手でも動じずに対応している。
あの様子なら任せっきりでも大丈夫だろう。
俺は近づくオークを対処しつつ、ラピス達の動きを見る。
「! あっちに3体ぐらい固まってるわ!」
「それなら私のファイヤーウォールで……」
「いいえ。あたしが足止めするから、フィーネはあの爆発する槍を使って!」
「フレイムジャベリン? うん分かった!」
言い終わるとすぐにフィーネは詠唱を開始。
ラピスは即座に弓を構えてスキルを発動させた。
「食らいなさい……《ソニックアロー》!!」
風の刃を纏った矢がオーク集団に向けて放たれた。
矢は3体いるオークの真ん中に命中。オーク達はよろけ始めた。
「グガガッ……」
しかしすぐに態勢を立て直す。まだ致命傷にはなっていないようだ。
そして再びラピス達に向かって走り始めた。
「やっぱりまだ足りないわね……それならこれで! 《グラビポイント》!!」
矢が放たれると、オーク達の少し前方の地面に落下した。
そしてスキルが発動し、3体のオークは矢の周辺に引き寄せられた。
「!?」
「グガッ!?」
「ガァァァァァァ!!」
オーク達は何が起きたのか理解出来ずに困惑しているようだ。その場から脱出しようと足掻いているが、矢の中心に引き寄せられたまま逃れられないようだ。
「お姉ちゃん行くよ!」
「やっちゃって!」
「《フレイムジャベリン》!! えーい!」
詠唱が終わって炎の槍がオーク達に向かって放たれる。
オーク達は迫ってくる攻撃に逃れることは出来ずに直撃。
そして命中と同時に爆発し、それぞれ吹き飛ばされた。
「……!」
さすがに直撃されて耐えられるはずがなく、オーク達は倒れたまま動くことは無かった。
「ほぉ。やるじゃん。見事な連携だ。なかなかいい動きだったぞ」
「………………」
「……? ラピス?」
どうしたんだろう。ラピスがやけに大人しい。
せっかく撃退に成功したってのに、喜ぶ気配が無い。
何となくだけど、困惑しているような……?
「おーい。ラピス。どうしたんだ急に黙って?」
「……え、い、いや……その……」
「何だよ。ハッキリ言えよ」
「私は……お姉ちゃんの今の気持ちが分かるような気がします」
「へ?」
なんだなんだ。フィーネまで困惑しているようだ。
どうしたんだろう?
「何があったんだ? 説明してくれよ。急に黙ってどうしたんだよ?」
「いやだって……その……なんと言うか……」
「???」
「こんにあっさり倒せて驚いているというか……」
倒せたことに驚く?
ラピスは何を言っているんだろう。オーク倒したぐらいでそんなに驚くことなんだろうか。
このくらい2人なら大して苦労しないだろうに。
………………
あっ……まさか……
「もしかして……前にオークと戦った時と比べてるとか?」
「う、うん……」
「はい……」
……ああ。そういうことか。
以前にオークと対峙した時は1体相手でも逃げ回っていたもんな。その時のことを思い出したんだろう。
「そんでやけにあっさり倒せてしまったから困惑している……と。こういうことか?」
「そ、そうね……ゼストの言う通りよ」
「なんだそういうことか……」
納得した。つまりはこうだ。
初めてオークと対峙した時は1体相手でも倒せずに逃げ回っていたからな。それが原因で、オークに対して実際よりも強敵意識が根付てしまったんだろう。
しかしついさっきその強敵をあっさり倒してしまったからか、ある意味拍子抜けしてしまった……ということらしい。
「あれって……本当にあたし達がやっつけたのよね……?」
「当たり前だ。他に誰が居るんだ? 俺は一切手を貸してないからな。お前たち自身がやったことだ」
「……そっか。そうよね」
「私達って……こんなに強くなったんですね……!」
「そうだ」
あの頃に比べたら成長したもんだ。
オーク1体相手にロクに攻撃を当てられずに慌ててたからな。それに比べたらかなりマシになっている。
「これならあたし達でも1000体ぐらい狩れる気がするわ!」
「だろ? この程度の相手ならそれぐらい出来て当然だ」
「私もまだまだいけます!」
「うむ。その意気だ」
自信がついてきたようで何よりだ。
これで一つまた壁を乗り越えたな。
「まだ終わってないからな。早くしないと全部リリィが狩り尽くしちゃうぞ」
「そ、そうね! よーし。ドンドン狩るわよ!」
「頑張ろうね!」
「うん!」
そしてオーク狩りは順調に進んでいった。
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