第101話:☆リリィの活躍

 姉妹から少し離れた先にはリリィが大剣を構えて立っていて、その先には複数の男達が睨んでいた。

 そんな男達はリリィを見てニヤけるように笑う。


「へへ……おい姉ちゃん。なかなかいい体してるじゃねーか。おれと一緒に遊ばねーか?」

「やだ! お前らなんかと遊びたくない!」

「固い事言うなよ。そんなエロい体してるくせに冒険者やってるなんてもったいないじゃん。エンペラーに来れば気持ちいいことさせてやるぜ?」

「うるさい! 盗賊みたいな悪い事してる奴らなんかと一緒になるもんか!」

「おー怖い怖い」


 男達の視線は、露骨にリリィの胸元へ集中していた。しかしリリィはそんなことを気にする様子は無かった。

 そんな中、1人の男が飛び出してリリィの元へと駆け寄っていく。


「じゃあおれが先に貰うぜ! たっぷり可愛がってやるよ!」


 男は短剣を持ったままリリィに近づいていく。

 リリィは近づく男に反応して大剣を横に振りかぶる。


「大人しくしていれば痛いしねーぜ!」

「やぁぁぁぁぁ!」

「おっと」


 大剣を短剣で受け止めるが、すぐに短剣にヒビが入って壊れてしまう。


「なっ――ぐほっ!」


 受け止めきれず、軽く吹き飛ぶ男。

 そして地面に落下して意識を失った。


「どうだ! お前らなんかに負けないぞ!」

「!? すげぇ力だな……」

「おっぱいだけじゃなくて力もでけぇのか……」

「マジかよ……どこにあんなパワーがあるんだ……!?」


 リリィが只者ではないと察したのか、男達はそれぞれ困惑していた。

 しかしそんな雰囲気でも臆することなく近づく男が居た。


「いいねぇ。その強気な態度気に入ったぜ」


 前に出てきた男の腕には盾が装備されていた。その盾はそれほど大きくなく、片手で扱いやすいぐらいコンパクトな物だった。

 そんな盾を持ったまま男はリリィに近づいた。


「なかなかやるじゃねーか。それだけ強けりゃエンペラーでも活躍できるな。ウチに来いよ。姉ちゃんだけでも歓迎するぜ?」

「盗賊の仲間になんてなるもんか! お前らなんか大ッッッ嫌いだ!!」

「ふんっ。嫌われたもんだな。だったら力ずくでも連れて帰ってやるだけだ!」


 男は盾を前に構えながらリリィに接近していく。

 リリィも大剣を強く握り、足に力を入れ、接近してくる男に狙いを定めて振りかぶる。


「覚悟しな! 逆らったことを後悔させてやる!」

「うおぉぉぉぉぉりぁぁぁぁぁぁ!」

「無駄だぁ!」


 大剣が勢いよく盾と激突し――


「なっ――」


 男は耐えきれずに後方に吹き飛んで宙を舞った。


「ば、馬鹿なッ!?」


 勢いは衰えることなく飛び続け、近くに居た別の男と衝突した。


「げふっ……」

「ぐぇッ!?」


 そして2人は地面に倒れ、意識を失った。

 そんな光景を見て他の男達がざわめく。


「な、なんだ今の……」

「う、嘘だろ……人が吹っ飛んだぞ……」

「なんつー馬鹿力だよ……」

「化け物かよ……」


 その場に居る全員が、リリィが全力で放ったパワーに驚きを隠せないでいた。


「どうだ! お前らなんかに負けないからな! 悪いやつは全員ぶっ飛ばしてやる!!」

「ひぃ……」


 男達の目には、リリィが怪物のように見えていた。最初はリリィの胸元ばかりに目を奪われていたが、今はそんな余裕も無くなっていた。

 単体で戦って勝てなければ数で押し切ろうと考えていたが、もはやそんな気力すら無くなっていた。

 心のどこかで相手が女だからと思って油断していたせいかもしれない。


「次はどいつだ!? ぶっ飛ばしてやるからかかってこい!」


 リリィが大剣を向けると、男達は怯えて逃げ腰になってしまう。


「お前が行けよ……」

「い、嫌だ……あんなのが居るなんて聞いてねぇぞ……」

「お、おれは抜けるぞ……」

「冗談じゃねぇ! こんなの勝てるか!」


 1人がその場から逃げると、それに続いて次々と逃げ出していった。

 そんな光景を離れた所から見ていた男が叫んだ。


「おい何してんだ! てめぇら真面目に戦え! 相手は女1人だぞ!」

「無理だ! あんなの勝てねぇよ!」

「チッ……腰抜けが……」


 ゼストの前に立っていた男は周囲の状況に気づき始める。

 そしてゼストに向かって話し始めた。


「……やるじゃねーか。まさかこの人数差でもひっくり返されるとはな」

「賊相手に負けるほど落ちぶれてはいねーよ。分かったならさっさと諦めることだな」

「チッ……舐めやがって……!」

「さぁどうする? まともに戦えそうなのはお前ぐらいじゃないか?」

「…………」


 男は少し考えた後に呟く。


「くそがっ………………まさかアレを呼び出すことになるとはな……!」


 そしてゼストから離れるべく少し下がった。

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