第100話:☆姉妹の活躍
ゼスト達の前方には、10人以上のガラの悪そうな男達が立ち塞がっていた。
「仲間にならねーってんなら、ここで痛い目に遭ってもらうぜ?」
そんな男の言動にため息を吐くゼスト。
「おいおい。孤児達を救うんじゃなかったのか? さっき言ってた事とやってる事が違うぞ?」
「エンペラーの邪魔になりそうな奴らは消えてもらうだけさ。それに、お前らみたいなバカ共は救うつもりはねぇよ」
「ふーん……」
もはや興味無さそうに周囲を見回すゼストだった。
「随分と多いな。こいつらもお前の仲間か?」
「ああそうだ。もし仲間になったのなら歓迎してやったのにな。つくづくバカな奴だな」
「円盤だかプロペラだか知らんけどな。賊の仲間になるつもりはねーよ」
「エンペラーだ! 間違えんな!」
「んなもん知ってる。覚えたくねーだけだよ!」
「こいつ……馬鹿にしやがって……!」
男の表情がどんどん怒りに満ちていき、周囲にいる仲間に向かって叫び出した。
「野郎ども! こいつらをやっちまえ! おれ達を馬鹿にしたことを後悔させてやれ!」
「暴れてやるぜ~!」
「ヒャハハハ!」
「おれはあの女を相手するぜ!」
「じゃああの弱そうなガキを仕留めてやる!」
周囲に居た男達はそれぞれ動き出した。
それを見てゼストも、3人に向かって叫ぶ。
「お前ら雑魚共は任せたぞ。俺は奴の相手する」
「おう! 悪い奴らは全員ぶっ飛ばしてやる!」
「やっぱり襲ってくるんじゃない! 賊なんて信用できないわ! 頭に来たから懲らしめてやるわ!」
「私も同じ気持ちです! 任せて下さい!」
そしてそれぞれ動き出し、周囲に散っていった。
ラピスは少し移動した後に弓を持ち、男が3人居る場所に方向に向かって構えた。
そしてスキルを発動させる。
「覚えたてのこのスキルを使うチャンスだわ! 食らいなさい! 《ソニックアロー》!!」
矢は男3人の間を当たらないように通り抜けていった。
すると――
「ぎゃあああ!」
「い、痛ぇ! どうなってんだ!?」
「当たってねぇはずのに斬られたぞ!?」
そんな光景を見てラピスは少し驚いた後に笑った。
「へぇ……こうなるのね。いいじゃないこのスキル。気に入ったわ!」
早くもソニックアローの特徴を見いだすラピス。予想通りの結果で満足していた。
しかし直接当てるよりもダメージが減るためか、男達はまだ平気で動ける様子だった。
「そうだ。それじゃあ私も……」
フィーネはラピスに向けてスキルを発動させる。
「――《マジックバリア》!!」
ラピスの体が一瞬だけ光り、バリアが形成された。
「ありがとうフィーネ!」
「うん! 気を付けてね! あとは……」
フィーネは周囲を見回し、少し離れた所に居るリリィを発見した。
「リリィさんにもした方がいいよね」
そういってリリィに向かってスキルを発動しようとする。
だがスキルを使おうとした瞬間――
「このガキ!」
近くに茂みに隠れていた男が飛び出してきたのだ。
「!! フィーネ危ない!!」
叫ぶ前にラピスの体は動いていた。
全速力でフィーネの元へと向かっていく。
「え……?」
フィーネは振り向いて飛び出してきた男の存在に気づく。
しかしあまりにも咄嗟のことで体が動けずにいた。
「食らえ!」
男が剣を振り上げ、フィーネに向かって振り下ろそうとした時――ラピスがフィーネを守るように飛び出した。
そして剣はラピスの体を直撃――
「お姉ちゃん!!」
――したかのように見えた。
「あ、あれ? 手ごたえがねぇぞ……?」
直撃したはずの剣に斬った感覚が伝わらず、不思議そうに見つめる男。
そんな隙を見逃さず、ラピスは腰にあった短剣を引き抜いた。
「この……離れなさい!!」
「!? ぐあああっ!」
短剣は男の腕を切り裂く。咄嗟のことで力が入っていなかったためか、傷は浅かった。
しかし男はよろけて剣を落とした。
「お姉ちゃん!! 大丈夫!? ケガはない!?」
「平気よ! フィーネのスキルのお陰だわ!」
「よ、よかった……ごめんね。私のせいで……」
「いいのよ。それよりも一旦逃げるわよ!」
「う、うん!」
ラピスはすぐに走り出すと、フィーネもそれに続くように走り出した。
「こ、このガキども……よくもやってくれたな!! おいてめぇらも加勢しろ!」
「お、おう!」
男は剣を拾って姉妹の後を追おうと走り出そうとする。他の3人の男も後に続くべく動き出した。
「そうだ……これなら……!」
フィーネは立ち止まって男の方向に振り向く。
そしてスキルを発動させた。
「《ファイヤーウォール》!!」
「うおっ!? 何だこりゃ!?」
「あちち……」
男達のすぐそばに炎の壁が出現した。
それを見てラピスが何かを思いついたようだ。
「あっ……ひょっとしたら……」
炎を壁から逃げようとする男達に向けて弓を構える。
そして――
「これなら――《グラビポイント》!!」
矢が放たれ、炎の壁を通過して男のすぐ近くに落下した。
すると矢が刺さった地面を中心に、周囲を引き寄せる空間が形成された。
近くにいた男達はそれに吸い込まれるように引き寄せられた。
「!? な、なんだ!? 体が勝手に……!」
「ぎゃああああああ!」
「熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い!」
「た、助けてくれー!」」
「服が燃える! 熱いよぉぉぉぉ!」
男達は炎のすぐ近くで密集してしまうが、いくら離れようとしてもその場から遠ざかることが出来ないでいた。
グラビポイントは周囲の敵を引き寄せる効果があり、いくら動こうとしてもすぐに元の位置に戻ってしまうのだ。
ジャンプしてもすぐ落下してしまうのと同じで、常に矢の元へと引き寄せられてしまう。普通の手段では逃げることが出来ないのである。
「フィーネを傷つけようとした罰よ! そこで反省していなさい!!」
「お、お姉ちゃん……そこまでするつもりは……」
「いいの! これくらいしないと気が済まないわ!!」
しばらくその場から男達の悲鳴が鳴り響くことになった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます