第98話:フィーネのスキル
フィーネの元に近づくと、冒険者カードを差し出してきた。
「お願いします」
「んーと……うん。フィーネも習得可能なスキルが増えてきてるな。順調だ」
「よかった……」
フィーネが使う杖系統のスキルはかなり複雑だからな。さすがにフィーネに任せるのは酷だろう。
「それじゃあまずは……これだな。《フレイムジャベリン》ってスキルだ」
「これですね。どういうスキルなんですか?」
「そろそろフィーネも火力不足に悩む時期だと思ってな。それを補うためのスキルだ」
「そうなんですね!」
今ある中では火力がある部類で使いやすい。そんなスキルだ。
「これはな。炎で出来た槍を生成して、それを相手に投げつけるスキルなんだ。ファイヤーアローの上位版と言ってもいい」
「なるほど~! 強そうですね!」
「そして命中した時に、小爆発を起こすんだ。つまり近くに居た敵も巻き込むことが出来るんだ」
「これも範囲スキルみたいな感じですか?」
「一応な。とはいえ、やはり直接当てたほうがダメージがデカい。それでも十分火力はあるけどね」
このスキルで敵が密集してる所に撃つと爽快なんだよな。
爆心地を中心に敵が吹っ飛ぶから、まるでロケットランチャーを撃ったかのような気分になる。
「今フィーネが習得可能なスキルの中では、威力が高い部類になると思う。これである程度は火力不足は解決するはずだ」
「そうですね。強そうなスキルなので使いこなしてみたいです」
「だからといってファイヤーアローが要らなくなるわけじゃない。そこは頭に入れといてくれ」
「そうなんですか?」
強力なスキルではあるが、それ故に弱点もある。
「フレイムジャベリンは確かに威力は高いし役に立つだろう。しかし消費MPが多い上に詠唱も若干長めなんだ。どんな状況でも有効というわけじゃない」
「つまり使い分けるということですか?」
「そうだ。ファイヤーアローは消費MPも少ないし詠唱もかなり短い。だから扱いやすいんだ。初期スキルだから威力は低いけど、その分使える状況が幅広い。当分は有用なはずだから上手く使い分けるんだ」
「はい!」
「それじゃあ次のスキルだ」
スキルツリーを眺めて良さそうなスキルを探す。
しかしそんな時だった。
「あ、あの! 欲しいスキルがあるんですけど! いいですか?」
「ん? 何が欲しいんだ?」
「その……みんなを守れるようなスキルがあれば役に立てると思って……」
「守るスキル?」
「はい。何かいいスキルありませんか?」
「ん~……」
防御系のスキルはいくつかあるが、まだ熟練度不足で習得できないのが多い。
今ある中で有用なのとなると……
「じゃあこれはどうだ? 《マジックバリア》ってやつなんだけど」
「バリアですか?」
「うん。これは1回だけ受けるダメージを無効化するバリアを張ることが出来るんだ」
「おお! そういうスキルが欲しかったんです!」
「でもこれでいいのか? 他にも便利なスキルはあるぞ。今はまだ熟練度不足で習得できないけど」
「少しでも皆の役に立ちたいんです。だからやれる事が多い方がいいと思って」
攻撃系スキルだけではなく、支援系スキルも使いたいってことか。
「それに私では敵わないようなモンスターとか出てきた時とか、足手まといになりかねないですから。そんな状況でも何かしたいと思って」
「大丈夫よ! フィーネはとっても役に立ってるわ! 足手まといなんじゃじゃないわよ」
「でもこの前にみたいに、不死身のモンスターとか出てきたら私は何も出来ないし……」
「あー……そんなモンスターも居たわね……」
巨大スケルトンのことか。あいつはギミックを理解してないと、いつまでも蘇生し続けるもモンスターだったしな。
ギミックの性質上、どうしても近づく必要があったからな。ああいうのはリリィみたいな前衛に頼るのが定石だ。
「だからね、そんな状況でも何かしたいの。せめて少しでも安全に動けるようにしたいと思って」
「そういうことね。まぁフィーネの好きなようにしたらいいと思うわ。危なくなったらあたしがフォローするから安心しなさい!」
「うん! ありがとう!」
なるほどねぇ……
つまりはモンスターを対処しながらも、味方にバフを配るような立ち回りがしたいと。そういうスタイルを目指したいと思ったわけか。
ある意味スタンダードなプレイスタイルともいえる。
「いいんじゃないか? パーティに貢献をしたいと思う気持ちはよく分かる。だからサポートにも回れるようにしたいと。そういうスキルも欲しいってことだな?」
「はい! これならゼストさんにも役に立てるかと思ったんです!」
ふーむ。実践を何度か重ねていく内に、やりたい事が見えてきたようだ。これでフィーネの方向性が定まってきたな。
最初の頃はどういうプレイスタイルなのか見えてなかったからな。でもこうやって自分に合ったやり方を目指すのは良い兆候だ。
これなら俺としてもどのスキルを習得すればいいのか判断しやすいし、取捨選択の参考になる。
「そういうことならマジックバリアはお勧めだ。他のスキルの前提になるしな」
「ならこの2つを選びますね」
「おう」
フィーネはスキルツリーを操作し、フレイムジャベリンとマジックバリアを習得した。
「マジックバリアは1回攻撃されたら効果が切れるから注意するんだぞ。これをアテにせず、あくまで保険として使うんだ」
「分かりました」
1回だけならどんな攻撃も無力化してくれるから強そうに思えるが、逆を言えば1回でバリアは消えてしまう。過信は禁物なのだ。
他にもっと優秀なスキルはあるが、マジックバリア習得が前提になってるスキルも存在するので仕方なく習得せざるを得ない。
こういうスキルは沢山存在する。
「あとはそうだな……バフスキルが欲しいのなら――」
「おい! そこのお前ら! お前らは冒険者か?」
「え?」
声がした方向に向くと、そこには見知らぬ男が立っていた。
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