第97話:ラピスのスキル
俺達は討伐に向かうべく、森へ向かっていた。
そして森に入る手前で止まり、皆も同じように止まった。
「? どうしたんだ? 行かないの?」
「まぁ待てリリィ。ちょっとラピスとフィーネに用事があるんだ。森に入るのはそれからだ」
「分かった! じゃあ待ってる!」
さて。2人にはそろそろ新しいスキルを覚えてもらおう。頃合いだろうしな。
そして2人に振り向いた。
「どうしたの? あたし達に用なの?」
「ああ。その前に聞きたいんだが、お前らレベルはいくつなんだ?」
「えーっと……あたしは17になったばかりだわ」
「私も同じです」
なかなかいいペースだ。レベルアップ速度はそれなり早いと言えるだろう。
「ならそろそろ新しいスキルを覚えてもらおうと思ってな。まだ使えるスキルは少ないから苦労する場面もあっただろう」
「そういえばそうね。スキル覚えたのはだいぶ前だったもんね」
「ゼストさんに任せていたので、スキルはそのままでした」
「別に意地悪してたわけじゃない。これにも理由がある」
このゲームの仕様の問題である。このあたりの説明は以前もしたと思うが、少しややこしいので改めて話しておきたかった。
「スキルの習得条件は覚えているか?」
「えーっと……前提スキルを取ることだったっけ?」
「そうだ。でもそれだけじゃない」
「確か……熟練度でしたっけ? それも必要なんですよね?」
「そうそう。その2つが習得できるスキルを増やす必須条件なんだ」
他のゲームと違って、このゲームではジョブのような概念が存在しない。武器によって習得できるスキルが異なるのだ。
だからこそ、スキル習得の自由度は高いと言える。
「その中でも特に重要なのが熟練度だ。こればかりはひたすら戦うことでしか増やすことが出来ないんだ」
「そういえば前にもそんなこと言ってたわね」
「だからレベルが上がれば新スキルも習得できる……とはいかないんだ。結局は熟練度が無いと新スキルも増えないからな」
「ということはつまり、熟練度が上がるまで待っていたということですか?」
「そういうことだ」
レベルを上げるだけでは強くなれないシステムってわけだ。
この辺に関しては色々とあるんだが、今はまだ説明する必要もないだろう。
「というわけで、まずはラピスからだな。スキルツリーを見せてみろ」
「分かったわ。はい冒険者カード」
ラピスから受け取り、一緒にスキルツリーを確認する。
「んー……うん。順調に増えているな」
「そう? よかった……」
「欲しいスキルとかあるか? 無いなら俺が選んでしまうけど」
「そうねぇ……もっと沢山のモンスターに対処できるスキルが欲しいかも」
「ふーむ。範囲攻撃か……」
弓系統は範囲攻撃できるスキルが少なめの傾向にある。全く無いというわけじゃないけど。
その代わり、単体相手なら強力なスキルが多い。
スキルツリーを眺めながら良さそうなスキルを探していく。
「それじゃあ……これだな。《ソニックアロー》ってやつ。これがいいんじゃないかな」
「これね。これはどんなスキルなの?」
「これは放った矢に風の刃が纏うようになるスキルだ。範囲としては小さめだけどね」
「風の刃? へぇー! 強そうね!」
「なかなか便利だぞ」
矢に入り乱れた風を刃を纏うことで、ダメージも底上げされる。
「このスキルの良いところは、直接当てなくてもダメージを与えられる点だ」
「ああそっか。そういう使い道もあるのね」
「うむ。矢が通っただけで風の刃が切り刻むからな。矢の進路上に居た敵全員にダメージを与える事ができるんだ」
「へぇー! いいじゃない! そういうのが欲しかったのよ!」
「とはいっても、直接矢を当てるよりはダメージ量は低くなるけどな」
「それでも十分よ!」
直接矢を当てる必要が無いというのが、このスキルのメリットだ。
例えば飛んでるモンスターなど、当てにくい相手にも役に立つ。使いどころは多く何かと便利なスキルだ。
「さっきも言ったけど、範囲はあまり広くないからな。過信は禁物だぞ」
「覚えておくわ」
「本当ならもっと広範囲のスキルがよかったんだけどな。でも今は熟練度不足でこれが限界だ」
「大丈夫よ。そこであたしの腕でカバーしてみせるわ!」
「うむ。その意気だ」
さて。ついでにもう一つ欲しいところだ。
ん~……何か無いかな……
「おっ。いいのあるじゃん」
「え? どれどれ?」
「これだ。《グラビポイント》ってスキルだ」
「な、何これ? どういうスキルなのか想像できないわ……」
このスキルもなかなか便利なスキルだ。ある意味、弓の本領が発揮できるスキルともいえる。
「これはな。矢が命中した地点に敵を引き寄せるっていうスキルなんだよ」
「へ、へぇ~。今までにないタイプのスキルね……」
「変わった性質を持ったスキルでな。ダメージ自体は無いんだ。ただ敵を引き寄せるために使うスキルなんだよ」
「なるほど~」
ダメージ目的ではなく、敵を引きつける為のスキルだからな。
あまりない珍しいタイプのスキルだ。
「直接相手に矢を当てるのもいいし、地面に対して撃つのもありだ。基本的には地面に撃つことが多いかもな。他と違って使い方が異なるから注意しろ」
「そうね。色々と試してみるわ」
「というわけで、とりあえずこの2つのスキルを選んでみたんだが。どうだ? 習得してみるか?」
「……うん! この2つにするわ!」
ラピスはスキルツリーを操作し、2つのスキルを習得した。
「ソニックアローは有効な場面が多いけど、グラビポイントはそうじゃない。使う状況を選ぶスキルだ。万能ではないが、こういうスキルを使いこなせるかどうかで腕が問われるんだ。状況によって使い分けるんだぞ」
「分かったわ!」
「さて。じゃあ次はフィーネだ」
「は、はい! お願いします!」
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