第92話:襲撃
俺達はシュベルの街から出発し、馬車で王都セレスティアへと向かっている。
再び死神の居た洞窟を通ることとなったが、問題なく通過することができた。もし死神がリポップしていたら再び討伐するつもりだったが、その必要は無かったようで安心した。
そんなこんなで順調に馬車で揺られ続けて移動していた。
このまま問題無く到着できるだろう。
そう思っていた。
だが――
「う、うわぁ!」
「!?」
急にブライアンの叫び声と共に馬車が停まったのだ。
「な、何今の?」
「どうかしたんですか?」
「う、馬が……」
「……ッ!?」
ブライアンが指さすその先には、血を流して横たわっている馬の姿があった。
しかしそんな光景に驚く暇もなく男の大声が聞こえてきた。
「ハハハハ! これで動けねぇだろ!」
「中に居る奴全員出て来いよ!」
「命が惜しいなら言うこと聞くんだな!」
これはまさか……
「ね、ねぇ。あの人達って……」
「ここらに居る盗賊だろうな。ようやく俺達の出番ってわけだ」
ざっと見た感じ、10人ぐらいだろうか。
ガラの悪そうな男たちが少し離れた所で馬車を囲うように立っていた。
「ひ、ひぃ……皆さん頼みましたぞ!」
「ああ! ラピスとフィーネはブライアンを守れ! 俺とリリィは前に出る!」
「分かったわ!」
「任せて下さい!」
「おう!」
それぞれすぐに動き、俺とリリィは馬車の外へと出た。
すると、馬車の近くに居た男が俺を睨みつけてきた。
「なんだてめぇ? もしかして護衛か?」
「ああそうだ。出来ればこのまま見逃して欲しいんだがな。面倒だし」
「ハハハッ! いきなり命乞いかよ! 頼りねぇ護衛だなおい!」
そんなつもりで言ったわけじゃないんだけどな。
「まぁいいや。おれらが言いたいことは1つ。金目の物を全部置いて消え失せな。そうしたら命だけは助けてやるよ」
「賊の言う通りにするわけないだろ。お前らこそ消え失せろ。邪魔なんだよ」
「ヒャハハハハ! おいおいバカか? この状況を見てそんなこと言える立場だと思ってるのか? 周りを見てろよ!」
周囲を見てみると、それぞれ武器を持った盗賊らしき男達がこっちを睨んでいた。
20人近くいるかもしれない。
「随分と大所帯だな。馬車1つ襲うぐらいで大げさじゃないのか?」
「てめぇには関係ねーだろ! それより見てみろよ! この戦力差をよ! これを見てもまだ同じことが言えんのか!?」
確かにこの人数差だと少し面倒かもしれない。
ラピスもフィーネも少し緊張気味になっている。
「その足りない頭でよーく考えてみろ! 今すぐに消えるか、おれたちに殺されるか……さぁ選ぶんだな!」
「…………」
ふーむ。ここまで多いと守りながら戦うのは少し厳しいか。
例え撃退しても、荷車が無事でいられるか不安だ。
ならば……
「さぁどうする? 抵抗するってんなら望み通りに殺してやるよ。でもひたすら命乞いして謝るってんなら生かしといても――」
「そうか。ならこっちも頭数を増やすか」
「あ? 何言ってんだ?」
少し離れてから召喚スキルを発動させる。
「こいつならいけるはず……頼んだぞ! 《召喚》!! ダイナ!」
地面が光り、大きなモンスターの姿が現れた。
「な、なんだこいつ!?」
そいつは2本の大きなハサミを持っており、足が複数生えている。
そして尾の部分は大きく反っていて、先端部分には毒針がある。
その正体は――巨大サソリである。
「初めて見るモンスターだわ! そんなのも呼び出せるのね!」
「こいつはダイナって言うんだ。シンプルな性能だけど、その分扱いやすい」
「すごい……」
「へぇ~!」
そんな巨大サソリを見て盗賊共が騒ぎ出した。
「ひぃ! こんなデカいモンスター召喚できるのかよ!」
「おいおい聞いてねーぞ……!」
「見たことねぇモンスターだぞ……」
「騒ぐな!! デカけりゃいいってもんじゃねぇ!! 人数ではこっちが上なんだ!! ビビってんじゃねーぞ!!」
リーダーらしき男がそう叫ぶと、周りにいた男達も冷静になっていった。
「そ、そうだな……」
「やってやる……!」
「う、うおおおおおお!!」
1人の男が巨大サソリ――もとい、ダイナに切りかかった。
そしてダイナがハサミで剣を受け止める。
「何っ!?」
バキィン!!
「!? ば、馬鹿な……おれの剣が……」
大きなハサミで剣を挟んだ瞬間、刃の部分が折れて男の近くに落下した。
「ダイナのハサミはなかなか強力だぜ? 人間程度なら紙のように切り刻めるからな。試してみるか?」
「ひ、ひぃ……!」
切りかかってきた男はすぐに逃げ出してしまった。
「チッ……あんなのが居るとはな……」
「ど、どうする?」
「ここは一旦引くぞ! てめぇら撤退だ!」
「お、おう!」
リーダーらしきが叫んだ後、周囲にいた男達は全員逃げるように離れていった。
「待て! 許さないからな!」
「追うなリリィ! 放っておけ。こっちが優先だ」
「わ、分かった」
これでひとまず安心かな……
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