第88話:勝利宣言

 俺達は街を離れ、街の外へとやってきた。

 そして街から少し離れた平原で戦うことに決った。


「ここらがいいな! 周りに何も無いし、暴れるにはもってこいだ!」


 そういって斧を軽く振りまわすダイーザ。

 そんな光景を見てラピスが驚く。


「あんな重そうな斧を片手で扱うなんて……なかなか力持ちなのね」

「リリィさんの剣も大きいし、一度持った事あるけど重かったよ」

「もしかしたら同じぐらいの重量かもね。あいつもリリィ並のパワーがありそうね……」

「でもゼストさんならきっと勝てるよ。一緒に応援しよう! お姉ちゃん!」

「そうね。ゼストが負けるわけないもんね! あんな奴やっつけちゃえ!」

「アタシに気にせず全力でぶっ飛ばしていいぞ!」


 そんな皆の応援を見て不気味に笑うダイーザ。


「いい気なもんだなおい。まさかとは思うが、女どもにカッコイイところを見せたかったわけか?」

「関係ねーよ。1人だったとしても勝負を受けてたさ」

「ほう。大した度胸だな」


 俺だけ馬鹿にされてるのならどうでもよかったし無視してた。しかしディナイアル商会の名誉が傷つくというのなら話は別だ。

 さすがに無視するわけにはいかない。


「オレとしては物足りねぇし、お前ら全員でかかって来てもいいんだぜ?」

「いや。俺1人でいい。負けた時の言い訳にされたら面倒だからな」

「野郎……言うじゃねーか……!」


 頭に血管が浮きそうな表情で睨みつけてくるが、いきなり動きが停まった。


「それなら……ふむ……そうだな」


 何かを考え込むダイーザ。

 そのまま少し考えた後に俺の方を見てくる。


「……よし。これでいくか」

「? 何がだ?」

「よく聞けゼストとやら! 始まる前に言っておくことがある!」


 そしてすぐにニヤリと笑い、俺に向かって指を指してきた。


「予告しよう! お前は3発で終わらせる!」

「…………は?」


 いきなり何を言ってるんだこいつは?

 唐突すぎて理解出来ん。


「なんだそれ? 何が言いたいんだ?」

「ハンデみたいなもんさ。Dランク程度に何度も攻撃する必要は無い。お前には3回の攻撃で終わらせてやるよ!」

「はぁ……」


 よく分からん。予告ホームランみたいなもんか?


「つーか何で3発という具体的な数字なんだ?」

「そりゃ簡単さ。1発目でオレのパワーに驚愕し、2発目で実力差に絶望し、3発目で沈む。ほら完璧じゃないか」

「はぁ……」


 俺には全く理解できないが、どうやらこいつの脳内では完璧なシミュレーションが出来ているらしい。

 俺には全く理解できないけど。


「なんでそんな予告とかするんだよ。必要ないだろ。意味わからん」

「だから言っただろ。ハンデみたいなもんさ。それにもし予告通りになったら……」

「なったら……?」

「最高に盛り上がるだろ! 女をたぶらかすような調子に乗ってる奴が、予告通りに死ぬなんてさぁ!」


 なるほどねぇ。そういうことか。

 確かに盛り上がるかもしれない。エンターテイナーとしては間違ってないかもな。


 しかし予告か……ふーむ……

 どうせなら俺も乗ってみるか。


「じゃあついでに俺も予告してやるよ」

「ほぉ! そりゃ面白れぇ! どうするってんだ? まさか一撃で倒すとでも?」

「いいや。そんなのじゃない」


 そしてダイーザに指さして宣言する。


「俺はお前に触れずに倒してやるよ」

「な、なんだと……!?」


 一瞬にして驚きの表情を見せるダイーザだったが、すぐに元に戻った。


「……ははーん。そういうことか。読めたぞお前の狙いが!」

「…………」

「つまりお前は、遠距離攻撃だけで終わらせるつもりなんだな?」

「…………」

「考えたな! 確かにそれならオレに触れる事なく決着がつくだろう。そういうことだな!?」

「…………さっさと始めるぞ」

「ガハハハハ! 図星ってわけか! その程度でオレがビビるとでも思ったのか? オレの真似して何を言い出すかと思いきやその程度か。浅知恵としか言いようがないな」


 そしてダイーザは斧を握って叫んだ。


「遠距離攻撃だけでオレを倒せると思ってるその甘い考え……すぐに後悔させてやるぞ!」

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