第78話:小さな違和感

 皆の元へ行くと、3人ともすぐ近寄ってきた。


「す、すごーい! 本当に死神を倒しちゃうなんて!」

「消える相手にも冷静に対処したのはカッコよかったです。一度も攻撃受けずに倒せちゃうなんてゼストさんぐらいですよ」

「やっぱり強いな!」


 3人が俺を囲んでくる。まるで有名人がインタビューを受けるような気分だ。


「だから言っただろ。あれぐらいなら1人で倒せるって」

「普通は本当に倒せるとは思わないわよ! 強そうだったし……」

「ああいうのは対処法さえ知っていれば誰でも出来るよ。単に初見殺しなだけだ」

「そうなんですね……あれ? その手に持っているのは……?」


 フィーネが俺の手に持っている鎌を見つめる。


「あー。ドロップしたから持ってきたぞ。ほらこれがソウルイーターだよ」

「へ、へぇ……触っても大丈夫なの……?」

「装備するだけなら問題無いよ。ラピスも使ってみるか?」

「え……い、いや。あたしはいいや……」

「そうか」


 ラピスは既に弓を使っているし。今さら変える必要もないか。フィーネも同じ理由で不要だな。

 ってことは……


「リリィは使ってみるか? そこそこ強いぞこれ」

「んー。別にいいや。使い難そうだし」

「そっか……」


 誰も使わないか。せっかくドロップしたのに勿体ない。

 まぁ俺も使う予定は無いし。このままインベントリ行きかな。

 ちなみに性能はこんな感じ。


 ――――――――――――

 □ソウルイーター

 攻撃力:444

 適正レベル:44


 ・攻撃命中時、低確率で即死効果

 ――――――――――――


 特にデメリットも無いし悪くは無いと思う。けど鎌である以上は若干癖があるのは否めない。ちなみにこういう即死効果は、自分よりレベルの低い相手にしか効果が無い。

 ま、どっちみち適正レベル不足か。


「じゃあ戻ろっか。早くしないと置いて行かれそうだし」

「あ、そうだったね。帰りましょうか」

「だな!」


 3人は来た道を戻ろうとして歩き始めた。


 ………………


 …………おかしい。やはりおかしい。


 なぜこんな場所にダークリッチが居るんだ?


 本来は別の場所に出てくるモンスターのはずだ。こんな場所に居るはずがない。

 だからこそ、この場所に出現するのははありえないと思っていたんだ。それを確かめる為に来たわけだしな。

 だがありえない光景を目にした。他の場所で遭遇するはずのモンスターがこんな所で出てきやがったからな。


 どうして違う場所に出現したんだ?


 なぜこんな場所に居たんだ?


 この世界は俺が知っている仕様とは違うのか……?


 ………………


 分からない……


「ゼストー! 早く来ないと置いてかれちゃうわよー!」

「…………ああ。すまん今行く」


 今この場で考えたところで仕方ないか。何もかも情報が不足してるからな。


 小さな違和感だったが、記憶の片隅に留めて置くことにした。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る