第77話:対処法

 俺は剣を握り、ダークリッチの元へとダッシュした。


「いくぞ!」

『……!』


 そして近づくと同時に攻撃。

 キィン!と音と共に鎌で簡単に防がれてしまう。


『余に対して臆せず攻めてくるか……!』

「これくらいでビビッてられるか」


 何度か打ち合いをするが、全て防がれてしまう。


『ほう……大した腕前だな……』


 そのまま追撃しようとするが、相手は後ろに下がろうと動く。

 だが逃がさない。


「逃げるんじゃねーよ!」

『クッ……!』


 再び距離を詰めると同時に切りかかる。ひたすら離れずに相手に近づいていく。

 ストーカーの如く相手に詰め寄っていく。


 これには理由がある。

 ダークリッチは一番近くのプレイヤーに対して高速移動するスキルを持っているのだ。離れていると思わぬ不意打ちを食らうことがある。かなりのスピードで移動するので慣れていないと対処は厳しいだろう。


 しかし対策は簡単である。自分から詰め寄ればいいだけだ。

 これなら高速移動してこないので不意打ちされずに済む。

 接近戦に持ち込めばこちらのもの。


 そのまま数回攻撃を仕掛けるが、全て防がれる。

 だが――


「そらよっ!」

『……ガハッ!』


 一瞬の隙を見逃さず攻撃が命中。

 それを食らった相手はわずかによろける。


『……ク…………グォォォォォォォォ! よくも……よくも余の体に傷を負わせたな……!』

「一撃食らっただけで死ぬタマじゃねーだろ。大げさな」


 そのまま追撃しようと剣を構える。

 しかし攻撃を仕掛けようと思った時だった。


『……カカカ。なるほど自信があるだけはある。今までの愚者共とは違うようだ。しかしこれならどうだ?』

「!」


 するとダークリッチの体が徐々に消えていき、完全に姿が見えなくなった。


「え!? 消えた!? あいついきなり消えたわよ!?」

「ゼストさん……!」


 予想外の出来事だったのか、ラピス達も困惑している。


 俺は相手の姿が消えたのを確信した後……奥の方へと走り出した。走るといっても全力ではない。小走り程度の速度だ。

 数秒走っていると、突然俺の背後にダークリッチの姿が現れた。


『死ねぇい!』


 鎌を振り下ろすが、既にその場所には誰も居ないので大きく空ぶった。


『な、何ぃ!?』


 姿を現したと同時に急ブレーキ。そしてすぐに来た道を戻りダークリッチの元へと急ぐ。


「こっちだ!」

『……ッ!?』

「《クロススラッシュ》!!」


 大きく隙を晒した為に防御が間に合わずフルヒット。


『グァァァァァァ!』

「さすがにまだ足りないか」

『な、何故だ……どうして余の攻撃をかわせる!? ありえぬ!!』

「それぐらい読めてたさ。お前の性能ぐらい把握してる」

『ぬうぅぅぅぅぅ……!』


 これがダークリッチが使うもう一つのスキルだ。それは一時的に消えて、一定時間後に別の場所に出現するというものだ。つまりはワープである。

 出現位置は固定であり、一番近くのプレイヤーの背後に現れるというものだ。


 そう……のだ。


 そして出現してから攻撃までにわずかに時間差ラグが存在する。

 ならば対策は簡単。常に動き続けていればいいだけだ。それだけで不意打ちをかわせる。


『ぐ、偶然だ……偶然避けられただけだ……! フンッ! 運がいい奴め!』

「そう思うんならもう一回やってみればいいさ。今度は動かないでやるからさ」

『おのれ……! その傲慢な態度を後悔させてやるわ!』


 そう言うと再び姿を消した。

 俺は宣言通りにその場から動かずにいた。


 奴のスキルは常に動き続けないと一見避けるのが難しそうだが、慣れれば意外とそうでもない。

 消えてから出現するまでの時間が固定だからだ。


 それはつまり攻撃タイミングが読めるということでもある。


『攻撃タイミング』と『位置』が分かっているということは――


「…………」


 出現すると同時に振り向く。


『終いだッッッ!!』

「《カウンタースラッシュ》!」

『!? グアァァァァァ!』


 カウンター攻撃が命中し、そのまま地面に倒れた。


 カウンタースラッシュは相手の攻撃を無効化して反撃するスキル。なので相手の攻撃タイミングを知っているならこういった反撃方法もあるわけだ。タイミングが完璧につかめるのでカウンターの的となっている。

 これも対策の1つである。


 すぐに倒れているダークリッチまで近寄る。


『き、貴様……何者だ!? 何故そこまで余の行動が読める!?』

「さぁな」

『こ、こんなことありえぬ……! どうして的確に動けるのだ!? 余の心を読んだとでもいうのか!?』

「んなことできねーっての」


 倒れているダークリッチに剣先を向けて狙いを定める。


『ま、待て……その程度では余は死なんぞ! これ以上は切るだけ無駄だ!』

「じゃあどうしてそんなに慌ててるんだ?」

『そ、そんなことはない! この程度で動揺などするものか!』


 とは言いつつも明らかに動揺してる。

 まぁ仮にも不死の王だからな。テキトーに攻撃しててもこいつは倒せない。

 しかし倒し方は既に知っている。


「この距離ならを外さねぇよ。一撃で終わらせてやる」

『な……!?』


 ダークリッチの倒し方は簡単だ。体の中央部分にあるコアを破壊すればいいだけだ。

 しかしこのコアはバリアで守られていて何度攻撃してもダメージは無い。だからコア以外の部分を攻撃する必要があるのだ。

 ある程度ダメージを与えてHPが減った後に、バリアが無くなってコアを攻撃出来るようになる。これがダークリッチ戦の対処法だ。


「これで終わりだ! 《インパルスドライブ》!!」


 このスキルは、剣をドリルのように回転させて放つ強力な突きだ。1点に集中して突き刺すのでダメージが高い。


『ガハッ……!』


 剣が体に突き刺さり、そのままコアを破壊した。


『あ、ありえぬ……余が負けるなどありえぬ……! たかが小僧1人に劣るというのか……!? そんな馬鹿な……馬鹿なぁぁぁぁぁぁぁぁ…………』


 そう叫んだ後に動かなくなった。

 そしてダークリッチの体が崩れ始め…………チリとなって消えていった。

 残されたのは持っていた鎌だけだった。


「お。ドロップした。ラッキー」


 その場に残されたソウルイーターを持ち上げた後、皆の元へと戻ることにした。

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