第68話:突然の訪問者
リリィの防具について少し悩んだが、防具屋にでも行こうかと思っている。実は行先については目星が付いている。
前に武器屋を探し回った時に、ついでに他に良さそうな店が無いか記憶していたのだ。また今後寄ろうかと思っていたから丁度いい。
その中で気になる場所があったのでそこに行こうと思っている。
そんなことを考えている時だった。
コンコン
「ん? 玄関からか?」
玄関のドアをノックする音が聞こえてきたのだ。
そしてすぐに男の声が聞こえてきた。
「すみません。どなたかいらっしゃらないでしょうか?」
ドアの向こう側から聞き覚えの無い男の声がしたので不思議に思ってしまう。
家にまで訪ねてくるような人って誰だろうか。
「誰かしら?」
「もしかしてゼストさんの知り合いの人でしょうか?」
「うーん……どうだろう……?」
わざわざ俺に合いに来るような知り合いは少ないはずだ。俺がこの世界に来てから接点のある人は限られてるからな。
しかもこの家に移住したことを知っている人となると、かなり限られてくる。すぐに思い浮かぶ人物がいない。記憶にある人物には該当しないはずだ。
一体誰なんだろうな。
「まぁいいや。とりあえず出てみるよ」
椅子から立ち上がって玄関まで移動し、ドアを開けた。
すると、ニコニコと笑顔を浮かべたイケメンの青年が立っていた。
「あ。もしかして貴方がゼストさんですか?」
「そうだけど……誰ですか?」
「おっと申し遅れました。僕はディナイアル商会代表のレオンと申します」
そう言って軽く頭を下げた。動作に迷いが無く、実に慣れていそうな綺麗なお辞儀だった。
目の前の男を見てみると、素人目でも身なりがいい姿だと思えるほどしっかりした服装だった。スーツみたいでどこかの貴族みたいな恰好だ。
だが俺はこの男のことを全く知らない。完全に初対面だった。
「レオンさんだったっけ? 俺に何か……?」
「はい。今回はゼストさんに『専属契約』のお願いをしにまいりました」
「専属契約……?」
なんじゃそら。この人はいきなり何を言っているんだ。
「はい。貴方と専属契約の締結をしたいと考えております。今日はそのお話をしたいと思い、お訪ねした次第です」
「ちょ、ちょっと待って。専属契約って何?」
「おや? ご存じないですか?」
「今日初めて知ったんだけど……」
いきなりやって来て専属契約どうのこうの言われても訳が分からない。頭が混乱するばかりだ。
「簡単に説明しますと、ゼストさんが討伐で得た素材を買い取りたいんですよ。それらの素材を全て僕達が引き取ります」
「つまり素材を独占したいってこと?」
「そうです。それが『専属契約』となります」
そういうことか。
いつもは冒険者ギルドに渡してた素材を、代わりにこの人が買い取ってくれるようになるわけか。
「専属契約をさせて頂けたらこちらもある程度のサポートをするつもりです。例えば高品質な装備品なども優先的に提供できるかもしれません」
「…………装備品となると。防具もか?」
「勿論です。他では手に入りにくい物や、オーダーメイドで作り上げることも出来ます。優秀な職人を抱えておりますので」
ほうほう。それは魅力的だな。
オーダーメイドで作ってくれるのなら、いちいち探す手間も省けるしな。
ということは……
「女物の防具とかあるの?」
「ありますよ。女性用の装備品も数多く揃えています。そういった品も需要がありますから」
これはラッキーかもしれない。丁度リリィ用の防具が欲しかったところだったんだよな。
専属契約とやらも気になるし。話を聞く価値はあるかもしれない。
「興味湧いてきたし。詳しく話を聞きたいんだけどいいかな?」
「! ありがとうございます! 詳細をお話しますので、これからディナイアル商会までご案内しますよ」
「いや。うちでいいよ。中で話そう。そのほうが落ち着けるし」
「……よろしいので?」
「いちいち出向くのも手間だし。こっちのほうがいいかなと思って」
「そうですか。それでは失礼します」
そういって軽く頭を下げた後に家の中に入ってきた。
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