第66話:ポロリ

 今日も全員で討伐をしに森を訪れている。

 ラピスもすっかり元気を取り戻したようで、いつもの調子で動けていた。これなら心配要らないだろう。

 今日訪れているのはヘビーボアが出る森だ。まだラピスの調子が万全でないと踏んでここを選んだが、どうやら杞憂だったみたいだ。


 そんなこんなで討伐も順調に進んでいた。

 リリィは少し離れた所に居たが、既にモンスターを倒したところだった。


「ふぅ。これで終わりかな。おーいみんなー! こっちは終わったぞー!」


 リリィはそう叫んでこっちに近づく。

 だが――


「こっちも落ち着いてきて――って、何よその恰好!?」

「え?」


 よく見るとリリィの服が一部切り裂かれ、そこからおっぱいが片方だけ出ている。


「さっき木の枝に引っかかっちゃってさ。勢いで破れたんだよなー。でも大丈夫。ケガはしてないぞ!」

「そうじゃなくて! 見えてるじゃないの!」

「何がだ?」

「!? リリィさん! 胸がはだけてますよ!?」


 片方だけおっぱいをポロリした姿のリリィだが、本人は平然としている。

 さすがリリィ。これくらいでは動じないんだな……


「少しぐらい隠しなさいよ! 丸見えじゃないの!!」

「えー。何でだよー」

「いいから! 早くしなさい! ゼストが居るのよ!?」

「あわわわわわ……ゼストさんは見ちゃダメですぅぅぅぅぅぅぅぅ!」

「わ、分かってるって」


 フィーネに目隠しされながら反対方向に離れていく。


「なんでもいいから隠しなさいよ!」

「でも着る物持ってないし。このままでいいよ」

「よくないわよ! 見られたら恥ずかしいと思わないの!?」

「なにがだ? アタシは気にしないぞ」

「えぇ……」


 なんというか男らしいというか……

 冒険者としては頼もしいが、女の子としては間違っているような。どんな育ちをしたらああなるんだろうな。

 それはともかく、何とかしなくては。


「フィーネ。そろそろ離してくないか。何も見えん」

「あ、ご、ごめんなさい……」


 目隠しが取れてから着ていた上着を脱いでフィーネに手渡した。


「これをリリィに着させろ。俺のやつだけど無いよりマシだ」

「は、はい。持っていきます」


 フィーネは受け取ると抱えながらリリィの元へと走って行った。

 それから少し待っていると着替え終わったようで、ようやく安心して振り返ることができた。

 しかし服を着たリリィは不満そうにしていた。


「ん~……」

「どうしたリリィ。その服が気に入らなかったのか?」

「苦しい……」

「は?」


 何だろう。やけに不満げな表情だ。

 どこが気に入らなかったんだ?


「……やっぱり要らない!」


 そういって突然脱ぎだすリリィ。

 あっという間に上半身が裸になってしまった。


「なっ……何してるのよ!? 丸見えじゃないの!!」

「だって苦しいんだもん。これなら無いほうがいい!」

「だからっていきなり脱がないでよ!」

「ゼ、ゼストさん見ちゃだめですよぉぉぉぉ!」


 再び目隠しされて背を向くことになってしまった。


「お、おいリリィ! 何が不満なんだよ!? そんなに嫌だったのか?」

「だって息苦しいんだもん。ぎゅーって押さえつけられるし。無いほうがいい!」

「息苦しい?」


 そんな馬鹿な。サイズ的に平気なはずなんだが……

 ……あっ、まさか。


「もしかして胸元が苦しいのか?」

「うん。胸が締め付けられるみたいに苦しかった」


 なるほどそういうことか。

 規格外のおっぱいのせいでサイズが合わなかったわけか。


「……贅沢な悩みね」

「?」


 ラピスの恨めしそうな声が聞こえてきたが、気にせずインベントリを漁る。


 結局リリィに着せたのは大型のローブだった。

 全身を包み込むような大きいローブなのでリリィでも着ることが出来た。

 だがやはりリリィは不満そうだった。


「むぅ~……これ動き難いぞ……」

「我慢しろそれぐらいしか無いんだ」

「やっぱり何も着なくてもアタシは平気――」

「絶対ダメ!!」


 ラピスの迫力に気圧されたのか、リリィは渋々着たままで動くことになった。


 しかし防具か。そろそろ変え時かもな。

 これから先は厳しくなってくるだろうし。ある程度高性能な物が欲しくなってくる。

 いい機会だ。帰ったら防具屋を探してみるか。


「あの……ゼストさん」

「ん? どうした?」


 フィーネが複雑な表情で見上げてくる。


「ゼストさんって……大きいほうが好きですか……?」

「……は?」

「リリィさんみたいに……胸の大きい人が好きなんですか……?」


 …………なんて答えたらいいんだ。

 すっげぇ答え辛い……


「まぁ……その……ひ、人それぞれ違うんだし。気にする必要は無いんじゃないか?」

「…………」


 そりゃ俺だって男なんだし。無いよりはあったほうが嬉しいさ。

 だからといって、女の子相手に正直に言えるわけがない。


「むぅぅぅ……」


 フィーネは自分の胸元をペタペタ触りながら、リリィを見つめていた。

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