第61話:子供の作り方
ゴブリン退治が終わってから俺達は家へと向かっていた。
後から知ったことなんだが、討伐数は俺達のパーティが一番だったらしい。
他の冒険者達はサボっていたわけじゃないが、倒すのに時間が掛かっていたり、そもそもあまり湧かなかったりで効率が悪かったようだ。
その分報酬も上乗せされたみたいで、他と比べて何十倍も多く受け取ることが出来た。
たかがゴブリン程度でここまで貰えるのは嬉しい誤算だ。しばらくは金に困ることは無さそうだ。
そして依頼を達成したことによりランクアップ。これで俺はDランクになった。
パーティ全体の貢献と認められたらしく全員が評価されたとのこと。なので全員がDランクにランクアップすることができた。
そんなこんなで家に到着。
皆は家に入ると、ドッと疲れたようにソファーに座った。
「さすがに疲れたわね……。今日はもう動きたくないわ……」
「あんなに倒したのは初めてだもんね。私も疲れちゃった……」
「アタシはまだいけるぞ」
さすがリリィ。体力は人一倍あるようだ。
まぁ俺も少し疲れたかな。さっさと風呂入って寝たい。
「でもさ。あんな強い奴倒しちゃうなんてすげーよな!」
「どうしたいきなり」
リリィが目を輝かせながら話しかけてくる。本当にいきなりだ。
「どうやったらそんなに強くなれるんだ?」
「ひたすら経験を積むしかないんじゃないか。というかリリィだって十分強いだろ」
「でもゼストと比べたらまだまだ弱いし……」
「まぁ俺は少し特別だからな」
俺は転生特典があるし、他の人に比べて優遇されているのは仕方ないだろう。
比較対象が悪かっただけだ。
「うーん……もしかして……ゼストとなら……もっと強く……」
何やらブツブツと考え込んでしまうリリィ。
なんか珍しい光景な気がする。深く考えるようなタイプじゃないもんな。
まぁいいか。放っておこう。
風呂の準備でもしようかと思っていた時、リリィが立ち上がって俺に近づいてきた。
そしてとんでもないことを言ってたのだ。
「なぁゼスト! アタシと子供を作らないか!」
………………
………………は?
こいつ……今なんて言った?
子供と作るとか言ったような……聞き間違えか?
「すまん……もう一回言ってくれないか。よく聞こえなかった」
「だから! アタシと子作りしようよ! 頑張って育てるからさ!」
「…………」
どうやら聞き間違えじゃなかったようだ……
間違いであってほしかった……
脳が理解することを拒否しているせいで思考が追い付かない。
「な、何でそうなるんだよ!? 自分が何を言っているのか分かってるのか!?」
「だってアタシは十分強いんだろ? ならアタシとゼストの子供はもっと強いはずだぞ!」
「そんな足し算みたいに上手くいくわけ無いだろ……」
こいつの考えが分からん……
竜人族がこういう性格なのか、それともリリィが特別なのか……
「きっと強いやつが生まれてくるはずさ! だってアタシより強いゼストとの子供だぞ? どんな奴にも負けない最強になるに決まってるじゃん! すごくないか?」
「そうなるとは限らんだろうが! そんなアホなことで俺を巻き込むんじゃねぇ!」
「なぁいいだろ? ゼストとの子が欲しいんだ。1人前になるまで育てるからさ」
「ちょ……近い近い」
目の前まで近寄ってきた。
キスしそうなぐらい顔が近い。そのせいで胸が押し付けられている。
なんとか近づけまいと抵抗しているが、徐々に距離が縮まってくる。
やばいやばい。
このままだとマジでリリィに襲われる。
「あわわわわ……」
フィーネは手で顔を隠しているつもりだろうが、指の隙間からバッチリ見てやがる。
というか顔赤くしてないで助けてくれ。
どうしよう……マジでどうしよう……
こいつ脳筋のくせに見た目だけはいいもんな。お世辞抜きでも相当な美人の部類に入ると思う。
それにおっぱいも大きいし。
おっぱいも大きいし。
押し付けられているせいでめっちゃ柔らかい感触が伝わってくる。
これで中身さえまともだったらなぁ……
遠ざけようと必死に押し返しているが、それ以上の力で近寄ろうとしてきやがる。
今の俺では竜人族のパワーに勝ち目は無い。女とは思えん力だ。
どうするどうする……このままだと本当に……
…………そうだ。
「ち、ちなみに聞くけどさ。子供はどうやったら出来るのか知っているのか?」
「バカにすんな! それぐらい知ってるぞ!」
さすがにリリィでも知っているか……
これでは誤魔化しようがない。
そこまで馬鹿じゃなかった――
「チューすればいいんだろ? 知ってるもんね!」
……………………ん?
「あの……一つ聞くが、そのチューってのはキスのことか?」
「そうだぞ! チューすれば子供は出来るんだろ? これくらい常識だぞ!」
ああ……うん。なるほどね。そういうことね。
性知識は小学生レベルだったか。なんというかリリィらしいな。
ある意味安心した。
「だから早くチューしようぜ!」
「ちょ……顔を近づけるな!」
って全然安心できねぇ!
これはこれでめんどくせぇ!
キスしようと顔を近づけてくるが、必死に抵抗してギリギリ食い止める。
だが時間の問題だ。力は向こうの方が上だからな。
このままだと本当に……
「ちょっと待った! 違うわよ!」
「え?」
「キスでは子供は出来ないわよ!」
立ち上がって声を出したのはラピスだった。
お陰でリリィの力が弱まった。
「キスぐらいで子供が出来るはずがないじゃない! 知らないの?」
「そ、そうなのか? ならどうやったら出来るんだ?」
「ふふん。なら教えてあげるわ!」
おい待て。やめろ。
リリィに余計な知識を付けようとするんじゃない。
ただでさえ面倒なのにこれ以上ややこしくするんじゃねぇ!
「いい? よく聞きなさい? 子供ってのはね……」
「ごくり……」
リリィも耳を傾けて聞こうとしている。
やばいやばい。今度こそ正真正銘のピンチだ。
今からでも耳を塞げば……いやもう遅い。
くそ……ここまでか……
…………
「子供ってのはね……鳥さんが運んできてくれるのよ!」
「そ、そうなのか!?」
……んんんんんんん??????
「いい? 夫婦が仲良くしていると、大きな鳥さんが赤ちゃんを運んできてくれるのよ!」
「ほ、本当にそうなのか?」
「だってそう聞いたんだから間違いないわよ! あたしを信じなさい!」
「し、知らなかった……。アタシが間違っていたのか……」
「ふふん!」
…………まさか幼稚園児レベルの子がいるとはな。
「いやいやいや。お前は妊婦を見たことがないのか? お腹が大きくなった母親とか居るだろうが」
やべ。思わずツッコミを入れてしまった。
「そういえばそうね……あっ、そうだわ! きっと鳥さんがお腹に入れてくれたのよ!」
急にスプラッタになったぞおい。
その鳥はエイリアンか何かか?
てっきり俺を助けてくれるための嘘かと思ったが、あの目は本気だ。
本気で鳥が運んできてくれるものだと思ってやがるな。
「お姉ちゃん……」
「な、何よその目は!? 間違っているとでも言うの!?」
「…………」
ラピスをすごく残念な人を見るような目で見つめるフィーネ。
どうやら妹の方は正しい知識があるようだ。
よかったと言うべきなんだろうか。
「じゃあさ! アタシとゼストが一緒に居れば、鳥が赤ちゃんを運んできてくれるのか!?」
「………………ソウダヨ」
「そっか! じゃあそれまで待つことにする! 楽しみだなー! 早く来ないかなー!」
「来るといいね……」
もはや何も言うまい。
納得してくれたのか、リリィはようやく離れてくれた。
色々とツッコミどころがあったが、助かったので余計なことは言わないでおくことにした。
とりあえず後でフィーネにも口止めをお願いしよう。
ゴブリン退治より疲れた……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます