第59話:ゴブリン退治⑧
「よ、よっしゃあああ!」
「ふー。コイツ強かったなー」
さすがにリリィだけでは苦戦してたな。ここまで上手くいったのはショーンがいい感じに動いてくれたお陰だろう。
「や、やっと倒れたわね……。しぶとかったぁ……」
「何回攻撃しても全然倒れなかったもんね……」
「まだまだ強くなりたいわね……」
さすがに相手が悪かったかな。ジェネラルを相手にするならレベル30ぐらいは欲しいからな。
「ショーン! 大丈夫だったかい!?」
ロイが慌ててショーンの元に近寄る。
ショーンは気が抜けたのか、フラフラと歩いた後に地面に座ってしまった。
「あ、ああ、これくらい平気さ。一撃貰っただけだしな。これくらいポーション飲めば治るさ」
「しかし無茶するなぁ……。あの棍棒が直撃したら即死しかねないのに……」
「けど直撃しなきゃいいんだ。当たらないように必死に立ち回ってたからな」
ショーンはジェネラルの背後に回ることが多かったな。リリィに気を取られている隙に攻撃しようとしてたんだろう。
ジェネラルはリリィとショーンを同時に相手をせざるを得ない状況だったし、その分リリィの負担も軽くなったはずだ。いい連携プレイだったと思う。
そんなことを考えているとリリィがニコニコしながら近づいてきた。
「なぁゼスト! アタシどうだった?」
「良かったと思うぞ。初見であそこまで動けるとは大したもんだ」
「そ、そうか? そんなに良かったか?」
「ああ。ジェネラル相手にここまでやり合えるのは驚いた。さすがリリィだ」
「! そんなに褒めるなよぉ……えへへ……」
実に嬉しそうだ。こいつは褒めて伸びるタイプだろうな。
まぁ実際、お手柄だと思う。リリィがジェネラルを引きつけてくれたお陰で、後衛も安全に戦えたからな。前衛として十分活躍した。
「しかしネーチャンもなかなかやるなぁ。あのバケモン相手に一歩も引かないなんて大したもんだ」
リリィの近くで戦ってたショーンからの評価も高いようだ。
「まーな! でもずっと戦ってたからな。さすがに疲れたぞ」
「それにしても……デカいのによく動けるよな……」
「この剣か? これくらい大きいほうがぶっ飛ばせるから気に入ってるんだぞ」
「いやそっちじゃなくて……」
「?」
気まずそうに顔を反らすショーン。
気持ちは分かる。あの巨乳で俊敏に動けるのが不思議に思っているんだろう。リリィも大変そうだ。
「ラピスもよくやったよ。ブラインドアローが上手く決まったお陰で状況を変えられたしな」
「そ、そうかしら? 運がよかっただけだと思うけど……」
「その運を引き寄せたのはラピスだよ。運も実力のうちってな。間違いなくラピスの功績だ」
「そ、そんなに褒められると照れるわね……。でも悪い気はしないわ」
ラピスが嬉しそうに照れていると、フィーネがとある方向に向きながら声を上げる。
「ね、ねぇ……あれ見て!」
「ん?」
フィーネが遠くを指さす。
その方向を見てみると……
「……ッ! 冗談だろ……」
「そ、そんな……」
遠くからとあるモンスターが歩く姿が見えた。
そのモンスターはすごく見覚えがある姿をしている。
この場に居る全員がそう思っているに違いない。
何たってそのモンスターは――
「な、何でまたあいつが出てくるんだ!?」
「2匹目とか聞いてねーぞ!」
そう。
近づいて来るモンスターは、たった今倒したばかりの奴と見た目が一緒なのだ。
つまり――2匹目のゴブリンジェネラルが襲来してきたのだ。
「いくらなんでも連戦は無理だ! まだ倒したばかりで回復しきってないぞ!」
「ボクも矢がもう無いよ……」
「あたしも撃ち尽くしちゃったわ……」
「しばらくスキルは撃てそうも無いです……」
みんな全力を出し切って戦ったからな。また同じ相手と戦うのは厳しすぎるか。
後衛は矢もMPも無く、満身創痍でとても連戦できる状態じゃない。
「に、逃げよう! きっとあいつは敵討ちにやってきたに違いない! おれらを狙ってるんだ!」
「あいつボク達を睨んでるぞ! 同族がやられたから怒ってるんだ!」
確かに怒ってるようにも見えなくはないが……
ゴブリンはどいつも似たような感じだからよく分からん。
「まだ戦えるけど……今はちょっと厳しいかも……」
「そ、そうね。さすがにこれ以上は戦えないわよ」
「ゼストさんも逃げましょう! ここに居ては危険です!」
フィーネが心配そうに服を引っ張ってくる。ラピスもフィーネの手を繋いで逃げようとしている。
しかしここで逃げたらやはり他の人が標的にされるだけだ。
ならば――
「お前らは避難してていいぞ。アレは俺が何とかするから」
「え、えええ!? あいつを倒す気なの? リリィでも苦戦した相手よ!?」
「だ、大丈夫なんですか? 私は役に立てそうにないですけど……」
「取り巻きが居ないからな。1匹だけなら平気平気」
1匹目と違い、2匹目は単体で現れてくれたからな。雑魚掃除する手間が省けた。
単体相手なら勝機は十分ある。
「まぁ見てなって。すぐ終わらせてくるから」
「う、うん……気を付けてね……」
「が、頑張ってください!」
「おう」
近づいて来るジェネラルに向かって歩き出す。
ジェネラルと戦った経験はほとんどないが、なんとかなるだろう。さっきの戦いを見たから大よその強さは把握できている。
「お、おい! どこに行くんだ!? そっちはバケモンが居る方向だぞ!」
「ボク達と一緒に逃げよう! 1人で戦って勝てる相手じゃない!」
「大丈夫だって。まぁ見てな」
「なっ……」
ショーンが何かを言いたそうにしてたがそれを待たずに走り出した。
ジェネラルは俺が走り出したのを見て反応したのか、雄叫びを上げて棍棒を振り上げた。威嚇しているつもりなんだろう。
だが構わず走り続ける。
「グオォォォォォォォ!」
徐々にジェネラルとの距離が縮まっていく。
俺はスキルの準備をしながらジェネラルの動きに神経を集中させることにした。
そしてジェネラルの間合いに入ろうとした瞬間――
「危ないっ!」
棍棒が俺に向かって振り下ろされる。
それを回避してジェネラルのふところに入り、スキルを発動。
「――《爆気龍壊拳》!!」
「ッグハァァァッ!」
拳が腹部に直撃。衝撃と共に勢いよく大きくめり込んだ。
これは格闘の中でも特に威力が高いスキルだ。一度使うとしばらく使えなくなるという欠点があるが、それに見合うだけの破壊力になっている。
直撃したのが効いたのか、ジェネラルは血を吐きながら
うーむ。さすがにこれだけでは死なないか。
ならば……
「せーの……《
「グガッ……」
下からの強烈なアッパーが命中し、ジェネラルは空を見上げるような態勢になった。
すぐに高くジャンプし、顔にめがけて足を振り下ろす。
「《流星落》!!」
「――ッ!」
渾身のかかと落としが直撃。鈍い音と共に動きが止まった。
ジェネラルは意識を失ったのか、そのまま倒れて地面へと沈んだ。
そして二度と起き上がることは無かった。
「うっし。これで終わりっと。やはりタイマンだと格闘は強いな」
こういう単体相手にこそ真価が発揮される。それが格闘の魅力だ。
「そ、そんな馬鹿な……本当に1人で倒しやがった……」
「ボク達があれだけ苦労して倒した相手をあんなにアッサリと……」
ショーンとロイが信じられないモノを見たような目で見つめてくる。
「き、君は一体何者なんだ……」
軽く自分の手を叩いてから振り向く。
「ただのEランク冒険者だよ」
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