第57話:ゴブリン退治⑥
叫び声が聞こえた方向に向くと、遠くから2人の男が必死に走ってくるのが見えた。
まるで何かから逃げているかのような必死さだ。
「どうしたんだろう?」
「さぁな」
「こっちに向かってきてますね」
男達は近寄ってから息を切らしながら話かけてきた。
「き、君たちもすぐに逃げた方がいい! おれ達では太刀打ち出来る相手じゃねぇ!」
「あんなのがいるなんて聞いてないぞ!」
「落ち着いて。何があったのか説明してくれないと」
やたら切羽詰まった感じだな。
よく見たらあちこち小さなケガをしているみたいだ。
「おれは見たんだ……ゴブリンの中に馬鹿デカい奴が居るのを……」
「馬鹿でかい?」
「そうだ。通常のゴブリンよりずっと大きいやつが出たんだ!」
「ありゃバケモンだ……」
普通よりもデカいゴブリンか……
ひょっとして……
…………
「き、来たぞ! あいつらおれ達を殺そうと追ってきたんだ!」
「お、おい! お前らも今すぐ逃げろ!」
男達が逃げてきた方向から、1匹の巨大なゴブリンが追ってくる姿が見えた。
そのゴブリンは他よりも何倍も大きく、軽鎧を身に纏い、大きな棍棒を持っていた。
明らかにいつも見るゴブリンとか見た目が違っていた。
「な、なんなのあいつ!?」
「見たことない種類です……」
「お、なんか強そうなやつが来たぞ!」
巨大なゴブリンは複数のゴブリンを引き連れてこっちに向かってきていた。
まるで小さな軍隊のような光景だ。
そいつの正体は――
「やっぱりあいつか」
「あのデカいやつのこと知ってるの!?」
「ああ。あいつはゴブリンの上位種――〝ゴブリンジェネラル〟だ」
ゴブリンには様々な種類が存在していて、その中でもトップクラスに強い個体がゴブリンジェネラルなのだ。
数は非常に少ないが、その分かなり強化されている。
「ゴブリンジェネラル!? そんなのが居るのか!?」
「あれは今のお前たちではなかなか手強いと思うぞ」
ジェネラルは単体だけでも厄介なのに、複数の取り巻きを連れてやがる。
はっきり言ってリリィでも厳しいかもしれない。
「グズグズすんな! 早く逃げろ!」
「そうだ! おれ達が戦って勝てる相手じゃねーよ!」
んー。まさかジェネラルが出てくるとはな。
あれは変異種ではないが、変異種並にレアな個体なんだよな。当然、戦闘力も通常より桁違いに強い。
けれども、今の俺達なら倒せない相手じゃないはずだ。
3人を見てみるが、姉妹はどうしようか迷っているようだった。
だがやっぱりというか、リリィはやる気があるようだ。
「どうする? 戦うか? 逃げるなら今の内だぞ」
「今のあたしでも倒せるかしら……」
「こ、怖いです……」
やはり不安か。無理もないか。
見た目だけなら迫力ある個体だもんな。
「アタシは戦いたいぞ! でもみんなを守り切れるか不安なんだ。危ないと思ったら逃げてもいいんだぞ」
「向こうの方が数は上だしな」
明らかにジェネラルが引き連れているゴブリンのほうが数が多い。向こうは20~30匹近く居るしな。
それに比べてこっちは4人だ。今来た2人組を含めれば6人だが。
「いっそ纏めて吹き飛ばしたいんだが、この距離だとヘルズボムは使えんな。逃げる前に巻き込まれる」
あれは詠唱が長い上に弾速も遅いからな。さすがに今から詠唱しても間に合わん。
「おい! 何してんだ!? 早く逃げろよ!」
「すぐそこまで来てるじゃねーか! おれ達はもう行くからな!」
「静かにしてくれないか。こっちは倒すかどうか決めている最中なんだ」
「は、はぁ?」
「アレを倒すだと……? そんな無茶な……」
どちらにしろここで倒さないと他の冒険者を狙いにいくだけだろう。ならここで食い止めたほうがいい。
というかリリィはやる気満々なんだよな。
「あいつと戦ってみたいんだ。アタシならぶっ飛ばせるはずだ。でも逃げろと言うなら我慢する。どうするんだ?」
「んー……」
姉妹の方を向いてみると、不安そうにしてはいるが逃げようする気配は無かった。
「ちょっぴり怖いけど……あたしも戦うわ。だって頼れる仲間が居るんですもの」
「よく考えたらあれより大きいのを見たことありますからね。それに比べたら大したことないです」
「だよね」
グレートボアのことか。確かにアレは馬鹿みたいに巨大だったもんな。
この程度でビビらないとは大した度胸だ。やはり色んな場所に連れて行って正解だな。
「決まったな。じゃあアレを退治するか」
「あのデカいやつはアタシに任せてくれ!」
リリィが自信たっぷりな態度でそんなこと言ってきた。すげぇウキウキしてやがる。
「いいのか? 一番負担が大きそうだけど」
「平気だって! あの程度の奴にやられたりするもんか! それに強そうだからな!」
「そうか……ならジェネラルはリリィに任せた。俺達は周りの雑魚を掃除するぞ」
「分かったわ!」
「はい!」
さーて。いっちょやりますか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます