第53話:ゴブリン退治②
翌日。
俺達はゴブリン討伐の為に指定された場所まで行くことにした。
やってきたのは古の森と呼ばれる森の近くだ。ここら周辺にゴブリンが良く湧くらしい。
周囲には既に冒険者達が待機していて、装備の手入れをしていたり何かを話し合ったりしていた。
見た感じ、ざっと30人以上は居るだろうか。思ったより多かったな。それだけこの依頼に力を入れているということだろうか。
そんなことを考えていると、スキンヘッドのおっさんが叫び出した。
「みんなよく来てくれた! オレは今回の作戦を指揮するゲイルだ! よろしく頼む!」
あの人がまとめ役ってわけか。
スキンヘッドだけどなかなか渋くて頼れそうなおっさんだ。
「今回はゴブリンを退治するわけだが、報告によると奴らの巣がこの森に存在するらしい。だが近年とんでもなく数が増えているという話だ。実は千匹は居るんじゃないかという噂すらある」
千匹というワードに反応したのか、周囲の冒険者達がザワめき始める。
「しかし安心してほしい! こちらでもBランクの精鋭を何人か用意してある! 退治に向かうのは基本的にこちらで行う!」
じゃあ俺達要らなくね?
という意見が飛び出そうだったが、ゲイルは構わず話を続ける。
「諸君にやってほしいのは逃げ出したゴブリンを潰すことだ。こればかりは人手が居るから本日こうして諸君に依頼したわけだ。手短に説明すると――」
ゲイルが話した内容をざっとまとめるとこうだ。
古の森は入り組んでいて迷いやすい。だから冒険者もあまり近づかない。ゴブリンが増え続けたのはそのせいらしい。
そこでこの森に慣れたBランクの精鋭がゴブリンの巣を叩きに行く。しかし森は複雑に入り組んでいて、全てのゴブリンを逃がさずに倒すのはほぼ不可能。
そこで森から逃げ出した奴らを片っ端から倒すのが今回の依頼というわけだ。
ゴブリンは1匹でも逃がすとまた別の場所で増えていくから、なるべく逃がさずに倒したいという話だった。
森の外である程度の間隔で冒険者を配置し、森からあぶり出されたゴブリンを待ち構えるという作戦らしい。
「――というわけだ。出来る限り逃がさずに退治してほしい。こちらもどの程度の数が居たのか把握したい。なので討伐したゴブリンが多いほど報酬を上乗せするつもりだ」
なるほど。報酬は歩合制だということか。
「説明は以上だ。準備が終わり次第、森に入るつもりでいる。諸君もすぐに配置に着いてほしい。では健闘を祈る!」
ゲイルが話し終わると、周囲の冒険者達はそれぞれ散らばって去っていった。
そんな中、近くに居た冒険者から会話が聞こえてきた。
「なんでオレらは待ち伏せしなきゃならないんだ。全員で一緒に行って殲滅すりゃいいのに」
「それがさ。この森は別名、迷いの森といわれるぐらい複雑な地形になってるらしいぞ。慣れてないと遭難しやすいんだと。だから精鋭だけで向かうことになったらしい」
「ほぉ。ゴブリン退治しにきたのに遭難したら馬鹿らしいもんな。それならいっそ森を燃やしたらどうだ? まとめてゴブリンの丸焼きにすりゃいい」
「それも却下されたらしいぞ。ここには貴重な薬草や果物などの素材が色々あるんだと。ゴブリン程度で森を失うぐらいなら現状のがマシという判断だってさ」
「なるほどなぁ。だからこんな面倒な作戦になったのか。なんつーかじれったい感じだな」
「そういうな。そのお陰でこうして依頼が発行されたんだ。楽して報酬が期待出来そうな依頼は簡単には見つからん」
「相手はゴブリンだしな。面倒だけど精々頑張ることにするか」
「だな」
そんな会話をした後、冒険者達は立ち去って行った。
さて。俺達も配置につかないとな。
そう思い移動しようとした時にラピスに服を掴まれた。
「ね、ねぇ。さっきゴブリンが千匹いるって聞こえたんだけど、本当にそんなに集まってるの?」
「さすがに盛りすぎだと思うけどな。いくら森が広くてもそこまで密集してるとは思えん」
どんなに多くても500匹ぐらいなはずだ。いくら俺でもそんな大量なゴブリンと遭遇した経験は無いしな。
それに森に入ったBランクの精鋭達もある程度倒していくはずだ。ならその分だけ数が減ることになる。
ついでに言えば、ゴブリン達は森の中を散らばって逃げていくはずだ。つまり俺が居る方向にやってくる数は分散して減るわけで。
「来るのは精々、50匹前後だと思うぞ。だからそんな不安になることはない」
「そ、そうなのね……」
「どれだけ来ようが俺がなんとかするから。大丈夫だって」
「そうね……ゼストが居るもんね。なら安心よね!」
「アタシも居るぞ! いっぱい来ても全部ぶっ飛ばしてやるから任せろ!」
「うん。頼りにしてるわ」
そんな会話をしつつ俺達も配置について待機することにした。
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