第48話:お風呂タイム
リリィとの戦いを終えた後、俺達は自分の家に向かって歩いていた。
あれから少し考えたが、リリィも俺の家に住むことに決まったのだ。姉妹はそのことをアッサリ受けいれてくれた。
なんとなく理由を聞いてみたが、
「だってゼストの家じゃない。あたしのことは気にしないでいいわよ」
「それに……その……、広いお家なので、他に人が居てくれたほうが安心できるというか……」
とのことだった。
なのでこれからリリィと一緒に家に向かうことになったのだ。
姉妹とリリィはすぐに打ち解けて仲良くなったみたいだ。
道中でも楽しそうに会話している。
「竜人族ってみんなその角がついているの?」
「そうだぞ。アタシの一族はみんなあるぞ」
「へぇ~。なんかカッコイイじゃない」
「そうか? そんなに強そうか?」
「うん。ドラゴンみたいで頼りになりそうな感じがするわ」
「そ、そうか! へへっ! オマエいいやつだな! 気に入ったぞ!」
相性が良さそうな2人だ。
まるでラピスに姉が出来たような構図にも見える。
「その大きな剣って重くないんですか?」
「ん? これか? そうでもないぞ? どんな奴もぶっ飛ばせるからこれがいいんだ」
「す、すごいですね……」
「まぁな! フィーネもこういう武器にしたらどうだ?」
「い、いえ。遠慮しときます。重くて持てなさそうなので……」
「えー。こっちのほうが絶対強いぞ。もっといっぱい食べて力つけたほうがいいんじゃないか?」
「そ、そうですね。考えてみます」
とまぁこんな感じで、すぐに馴染んでしまった。
そんな会話をしつつ、家へと辿り着いた。
「ここが俺の家だ」
「おー! すげー! こんなでっかい所に住んでるのかー!」
「ちょっと広すぎるとは思うけどな……」
「アタシは広いのが好きだぞ!」
「そりゃよかった。とりあえず中入れよ」
「おう!」
全員で家の中に入ると、リリィは居間の広さに喜んでいた。
「ありがとな! こんな広い家に泊めてもらえるなんて思ってなかったぞ!」
「別にいいさ。部屋はいくらでもあるから好きな所を使っていいぞ」
「ほんとか!? やったー!」
すごい嬉しそうだ。
なんというか、純粋で分かりやすい性格してんな。
「…………やっぱり大きいわね」
ラピスがリリィの胸元を見ながらそんなことを呟いた。
「も、もう! お姉ちゃんったら……」
「え? どうしたんだ?」
「そのおっぱいって、どうやったらそこまで大きくなるの?」
ストレートに聞いてきたな。
そんなの本人に聞いても困るだけだろうに。
「コレのことか? コレってそんなに大きいのか?」
「お、俺に聞くなよ……」
つーか男の俺に聞いてくるとかどんな神経してんだこいつ。
「んーでもなー。あまり大きくても困るんだよなー。動きにくくなるし」
「そうかもしれないけど……やっぱり羨ましいわ……」
「お姉ちゃん……失礼だよ……」
巨乳の人は色々な悩みがあるって聞くしな。
やはりリリィもそういった悩みを抱えていたんだな。
「でもアタシの母さんはもっと大きかった気がするぞ」
「!?」
「それに女はみんなこれくらいだったぞ」
なん……だと……
あの大きなメロン級より更に上がいるだと……
………………
……………………竜人族やべぇな。
「ねぇ……竜人族ってどうやったらなれるのかしら……?」
「お姉ちゃん!? どうしたの!?」
「あたしも竜人族になれば……あの大きさになれるはずだわ……」
「お姉ちゃん! しっかりしてよ! お姉ちゃーん!」
「うふふ……」
「?」
……仲が良さそうでなにより。
これなら特に問題なさそうだな。
夜になり、俺は1人で風呂に入っていた。
「ふぅぅぅぅ……」
やっぱり風呂はいい。1人でゆっくり浸かるのが至福の時だ。
風呂自体もそれなり広く、10人程度なら一緒に入れそうなぐらいのスペースがある。こういった無駄に広い空間を独り占めできるのはなんともいえない快感がある。
やはり風呂付の家を買って正解だったな。こうしてのんびり出来る時間は大枚をはたいてでも手に入れた価値があった。
リラックスして湯に浸かっていると、入り口付近から声が聞こえてきた。
「おー! こんなに広いお風呂は初めてだ!」
湯気で少し見難いが、この声はリリィだな。
そういや俺が先に入るってことを伝え忘れたな。
「あーすまんリリィ。今は俺が入っているんだ。後にしてくれないか」
「ゼストか。なら丁度いいや。一緒に入ろうぜ!」
「…………え?」
今こいつなんて言った……?
一緒に入る……だと……?
「お、おい……今一緒に入るとか言ってた気がするんだが……聞き間違いか?」
「すげー! 本当に大きいんだな! これなら泳げそうだな!」
「!!!!」
既にリリィは浴槽の目の前までやってきて、全身が見れるぐらいの距離に居た。
そこに居たのは――
全裸のリリィだった。
「ば、馬鹿! なんで入ってきたんだよ!?」
「だって一緒に入ろうって言ったじゃん」
「そうじゃねーよ! つーかなんで何も着てないんだよ!?」
「うん? お風呂って服を脱いで入るもんじゃないのか?」
「間違ってないけど……今はちがーう!!」
「???」
てっきりバスタオルみたいなものを巻いているかと思ったが、何も付けていない。
正真正銘の素っ裸だった。
「つーか少しは隠せよ! 俺が居るんだぞ!?」
「? 隠すって何をだ?」
「だから……その……胸とかを……」
「えー。何でそんなことしないとダメなんだ?」
どうなってんだよおい。
恥ずかしがる素振りすら見せない。こいつには羞恥心というものが存在しないのか?
男の俺が居るっていうのに、体を全く隠そうともしない。
竜人族ってのはこんなにオープンな性格なのか?
……しかしデカいな。
服の上からでも強調されるぐらいの大きさだったが、こうして直接見るとマジで反則的な大きさだ。
…………いかんいかん。何を考えているんだ。
「と、とにかく後にしてくれよ! 俺が入っているんだから――」
「おっ。アタシ好みの熱さじゃん。これくらいが丁度いいんだよなー」
「!!」
俺が入っているのも関わず、リリィは何事も無かったかのように湯に浸かってきた。
「ふ~。やっぱお風呂は気持ちいなぁ~」
「…………」
…………すげぇ。浮いてやがる。
巨乳の人は湯に浮くって聞いたことがあるが、マジで浮くんだな。
分かってはいるんだが、あの中には何が詰まっているのか気になる……
って違う!
だから何を考えているんだ俺は!
えーと……えーと……そうだ。
何か話題を出して別のことを考えねば……
「そ、そうだ! リリィはなんで強くなりたいんだ?」
「ん? 強くなりたい理由を知りたいのか?」
「そ、そうだ。ちょっと気になったんだよ」
そういや理由を聞いてなかったな。
まぁなんとなく想像はつくからどうでもよかったが。
「んとね。母さんとの約束なんだよ」
「母親との? へぇ意外だな」
本当に意外だ。
こいつの性格からして、最強の座が欲しいのが理由だと思っていた。
「うん。実はアタシが小さい頃に死んじゃってさ。それ以来、強くなるために頑張ってきたんだ」
「……! そ、そうだったのか……」
亡くなった母親との約束だったのか。
そういや姉妹との会話でリリィは、『でもアタシの母さんはもっと
ただの脳筋だと思っていたが、しっかりした理由があって強くなろうとしてたのか。
「でもアタシはまだまだ弱い。これくらいで満足してちゃダメなんだ。もっともっと強くなりたいんだ」
「そうか……」
「だからアタシを強くしてほしいんだ! どんな奴でもぶっ飛ばせるぐらいに!」
「そこまでいけるか分からんが、今よりは強くなれるはずさ。俺に任せろ」
「おう! 頼んだぞ! ゼスト!」
竜人族の強さならトップクラスに強くなれる可能性は十分ある。もしかしたら俺すらも超えるほどの実力者になれるかもな。
それはそれで楽しみだ。
「んじゃそろそろ上がるよ」
「お、おう。俺はまだ入っているよ」
「そっか。じゃあまた後でな!」
「…………」
リリィは風呂から上がり、ゆっくりと立ち去って行った。
俺は湯船から出られずにその場でジッっとしていることにした。
出られなくなった理由?
聞くな。
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