第36話:決勝戦
訪れた決勝戦。
ようやくここまできた。これが最後の戦いだ。
『いよいよ決勝戦が始まります! 今回の勝者は誰なのか!? 目が離せません!』
これに勝てばラピスが救われる。
待ってろよ。絶対に助けてやるからな。
『選手の入場です! 右手からやってくるのは……ゼスト選手ぅぅぅぅ!』
実況が叫んだ後にリングに登り中央へと移動していく。
『続いて登場する対戦相手は、前回の覇者……ヴォルギッシュせぇぇぇぇぇんしゅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!』
「「「「うおおおおおおおおおおお!!」」」」」
うわっ。すげぇ盛り上がり。観客もみんな大声援だ。
俺が出てきた時とは大違いだな。
リングにやってきたのは細かい傷がいくつもついたガタイのいい男だった。
ヴォルギッシュとか言ってたな。そいつは剣を担ぎながら悠々と歩いてくる。そんな光景に観客も大賑わいだ。
そして俺の前に立って互いに睨み合う格好になった。
「よお。テメェの試合見てたぜ? なかなかつえーじゃんか」
「そりゃどうも」
「最近はどいつもこいつも雑魚ばっかでよぉ。退屈してたんだよ。覇者だとか言われてるけど全然実感ねーんだわ。雑魚相手に勝っても嬉しくないんだよ」
「それがどうした」
「テメェみたいな強敵が現れてようやく戦いになると思ってな。楽しみなんだよ!」
随分と嬉しそうだ。よほど自信があるんだろうな。
「テメェも一緒なんだろ? 強敵が見つからなくてつまんねー思いしてたんだろ?」
「なんでそう思うんだよ」
「ずっと素手だったじゃねーか。つまりまだ実力を発揮するまでもねぇってことだろ? オレには分かるぜぇ?」
こいつ俺の事を戦闘狂か何かと勘違いしてやがるな。
別に訂正する気も無いからこのままでもいいけど。
「とっとと始めようぜ。最高の
そういって背負っていた剣を構えて戦闘態勢になった。
……ふむ。こいつなかなか手強いな。
少なくとも今まで戦ってきた奴らとはオーラが違う。明らかにこいつのが実力が格上だ。前回の覇者ってのは伊達じゃないらしいな。
これはさすがに素手のままだと分が悪い。せめてナックルがあればなんとかなったかもしれんが、このままだとかなり厳しい。
さすがに素手で倒せる相手じゃないな。
……仕方ない。
俺は剣をゆっくりと抜き、そして構えた。
「そうだ! それでいい! やっと本気が出せるってわけだ! 全力でかかってこい!」
「…………」
お互いに剣を構えて戦闘態勢に入る。
『注目の一戦です! 勝つのはやはり前回優勝者のヴォルギッシュ選手か!? それとも初登場のゼスト選手か!? まさかの大番狂わせになるか!? それでは行ってみましょう! 試合開始ぃぃぃ!!』
実況が叫び終えると同時にヴォルギッシュが突っ込んでくる。
「おらっ!」
「ッ!」
剣での攻防が始まり、ガキンガキンと打ち合う音が鳴り響く。
相手の攻撃が激しく、俺は防御を固めざるを得なかった。
「ヒャハハハハハ!」
なんつー猛攻だ。
ダメージを与えるよりもとにかく当てることを優先した動きだろう。質より量で攻めてくる。
俺は剣をかわして側面に移動し、すぐに攻撃。
「あめぇ!」
だがすぐに反応されて剣で防がれてしまう。
「そらよっ 《ダブルアタック》!」
「!」
素早い2連撃のスラッシュが襲い掛かりそれを防ぐ。
「へぇ。これ防ぐか。ならこれならどうだ……《ソニックスラッシュ》!!」
「ッ!」
目にも止まらぬ高速の斬撃が襲ってくる。
何度か防いだがさすがにかわし切れないと判断して少し後退。
だが――
「ほらよっ!」
「ぐっ!」
蹴りが俺の胴体を直撃。
剣で切りかかってくると見せかけてのキックだった。
その衝撃で少し吹き飛ばされ、お互いに距離が空いた。
だがヴォルギッシュは距離を詰めて来ることなく、その場に立っていた。
「……いいねぇ。いいねぇいいねぇ。実にいいねぇ! 楽しいぜぇ!」
「…………」
「テメェは最高だよ! どいつもこいつも張り合いのねぇ雑魚ばかりだったからな! ここまでやり合えるのは久しぶりだなぁ!」
「…………」
「さぁこいよ! まだ始まったばかりだぜ? その程度じゃねーんだろ? 本気出して来いよ! もっとオレを楽しませてくれよ!」
………………
「……うん。大体分かった」
「ああ? 何がだよ」
「いやこっちの話」
俺は体勢を整えて剣を構えた。
「そろそろ攻めさせてもらう」
「やっと本気になったか! いいぜぇかかってこい!」
今度は俺から距離を詰めて攻撃を仕掛けた。
再びガキンガキンと剣での攻防が始まった。
何度かそんな攻防が続き、攻撃をかわして側面へと回り込む。
「チッ!」
ヴォルギッシュが反応して剣で迎撃しようとするが――
「――《カウンタースラッシュ》」
「ッ! ぐはっ!」
俺のカウンタースキルが直撃。
ヴォルギッシュは後ろに吹き飛び地面に倒れた。
だがすぐに起き上がる。
「か、カウンタースラッシュだと!? テメェそんなスキル覚えてたのか!」
「…………」
カウンタースラッシュは敵の近接攻撃を無効化し、即座に反撃するカウンタースキルだ。
「クソッ! テメェがそんなスキルを使ってくるとは予想外だったぜ……。だがそのスキルはもうオレには通用しねぇよ!」
そういって素早く起き上がって剣を構える。
「おらぁ!」
「…………」
再度剣での攻防が始まる。
ガキン……ガキン……と打ち合うが、さっきと違い手数が明らかに減っている。こっちの様子をうかがって慎重になったようにも見える。
それに加えてフェイントを多く混ぜるようになった。さっきのカウンタースキルを警戒しての動き方だった。
カウンタースラッシュのカウンター判定は正面にしかない。つまりスキルを使った直後は硬直で動けなくなり他の部分がガラ空きなる。だから考え無しにスキルを使うと逆にピンチになるのだ。
相手はそれを知っているからこそこういった動きになったんだろう。
だが……
――甘いな。
「そらっ!」
攻撃をかわして側面に回り――
「くそが!」
「《カウンタースラッシュ》」
「!? ぐおぉぉぉ!」
スキルが直撃して吹き飛び地面に倒れた。
「ば、馬鹿な……オレが2度も――」
「終わりだ」
「ッ!?」
地面に倒れているヴォルギッシュの喉元に剣を突き付ける。
「…………」
「…………」
しばらく互いに睨み合いが続く。
そして……
「…………参った。オレの負けだ」
そういって剣を放り投げ、両手を上げて降参のポーズをした。
『!! な、なんと! ついに決着!! まさかの展開!! 優勝候補がついに敗北! 巨星落ちる!! 勝者…………ゼスト選手!!』
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