第26話:武器探し
次の日のことだ。
宿の部屋で準備をしていると、姉妹が話があるということで部屋に入ってきたのだ。
「どうしたんだ急に。聞きたいことでもあるのか?」
「ううん。違うの。はいこれ」
ラピスの手元には弓と短剣が握られていた。
それを俺に差し出してきたのだ。
「? それがどうした?」
「そろそろ返そうかなって思ったのよ。フィーネの杖も返すわ」
そういえばこの2人が使っている武器は俺が渡した物だったな。
「ん? いいのか? それだと戦えないぞ」
「もう大丈夫よ。ちょっと考えがあるの」
「ゼストさんから借りた武器のお陰で本当に助かりました」
「でもこのまま借りっぱなしだと悪いわ。だからあたし達はね……自分で武器を買おうかと思っているの」
「はい。これは昨日お姉ちゃんと相談して決めたことなんです」
「ほー」
自分で武器を買う……か。
「大金が手に入ったからね。だからそろそろ自分たちで買った武器を使いたいと思ったのよ」
「そういうことか。だからその武器は不要だと」
「何もかもゼストに頼りっぱなしだといけないと思ったのよ。だからせめて自分の使う武器ぐらいは自分で手に入れようとしたわけ」
「そういうことです」
なるほど。ちゃんと自立しようと考えているわけだ。
良い心掛けだ。
2人から武器を受け取り、インベントリにしまい込んだ。
「ならついでだ。俺が買う武器を選んでやろうか?」
「え? い、いいの?」
「そろそろ武器更新のタイミングだと思ってたところなんだよ。お前らもレベル上がったわけだし、それに合わせて武器も新調するべきだ」
「そ、そうなの?」
「とはいっても何を買えばいいのか分からんだろ? なら俺がアドバイスしてやるよ。少しでも目利きを磨いた方がいいだろ?」
「確かにそうね……」
「じゃあお願いできますか?」
「おっしゃ任せろ! 今日は先に武器屋に行くぞ!」
ということでまずは武器屋を目指すことになった。
宿を出てから街を歩き武器屋を目指すことになった。
しばらく歩いていると近くに武器屋があったので入ることに。
中には様々な武器が並んでいてそれなりの値段がするようだ。
「へぇ~ここが武器屋なのね~」
「でも弓は置いてるかな?」
「ん~……あっちにあるな。見てみよう」
弓を展示してある場所に移動してさっそくチェックしてみる。
ラピスは近くにあった弓を手に取って構えのポーズをしていた。
「これとか強そうだわ! どう? あたしに似合うと思わない?」
「うん! お姉ちゃんにピッタリだと思うよ!」
「ふふん。そうでしょう! これにしようかしら」
弓を持ったまま自信たっぷりのラピス。
だが俺は待ったをかける。
「ちょい待ち。俺にも持たせてくれないか」
「いいわよ」
ラピスから弓を受け取ってからスキルを発動させた。
「《
どれどれ……
――――――――――――
□ショートボウ
攻撃力:10
適正レベル:50
・
――――――――――――
う、う~ん……これは……なんというか……
「どうしたの?」
「いや……これは買わない方がいいぞ」
「え、ええ!? なんでよ!?」
「ちょっと待っててくれ」
嫌な予感がしてきた。
俺は弓を置くと、近くに展示してある剣を解析することにした。
――――――――――――
□ロングソード
攻撃力:11
適正レベル:40
・
――――――――――――
………………
もしかしてここに置いてある武器は全部このレベルなのか……?
この武器屋はダメかもしれない。
「2人ともここを出るぞ」
「な、なんで? いきなりどうしたのよ?」
「ど、どうかしたんですか?」
「いいから。さっさと行くぞ」
不満そうな2人を引き連れて武器屋から出ることにした。
「ね、ねぇ。説明してくれない? 何があったのよ?」
「まーなんというか。一言で言うならば……あそこにあった武器はどれも『粗悪品』なんだよ」
「そ、そうなの?」
「そうには見えなかったですけど……」
俺がハッキリと粗悪品だと断定した理由。それは適正レベルの高さにある。
攻撃力が10前後の武器なら、適正レベルは精々5ぐらいが適切なはずだ。どんなに高く見積もっても10もいかないはず。
これはどういうことかというと、大した性能でもないのに使いこなすにはそれなりの力量が要求されるということだ。
つまり『粗悪品』を意味するのだ。
恐らくあの武器屋にあるやつの大半は粗悪品だろう。だから時間の無駄だと思って出てきたわけだ。
「参ったな……まさかここまで酷いとはな……」
「そんなに酷かったの?」
「お前のレベルが10倍ぐらいあってやっと使いこなせる。なのに武器そのものは大して強くないんだよ」
「な、なるほど……。確かに酷いわね……」
もしかしたらさっきの武器屋の質が悪かっただけかもしれない。
他の店ならまともなはず。
「とりあえず他行ってみよう。ここよりマシなはずだ」
「わかったわ」
ということで別の武器屋を探すことになった。
結果から言おう。
どれも似たり寄ったりだった。
最初に訪れた店よりは比較的マシだったが、それでも今のラピス達には相応しくない物ばかり置かれていた。
やはりどこも攻撃力が低いくせに適正レベルが高い粗悪品ばかり売られていた。
一応、攻撃力が高く適正レベルも相応の高価な物もあった。だが今欲しいのはそういうのじゃないんだよな。
「もうここで5軒目だけどまだ決まらないの……?」
「そろそろ疲れてきました……」
「ん~」
さすがにこれ以上連れ回すわけにはいかないか……
というか何でこんなに粗悪品ばかりなんだろう?
俺がプレイしてた時はここまで酷くなかったはずだぞ。
しかしどうしようか。このままだと2人とも武器無しで戦うことになる。
やはり俺が武器を貸したほうがいいかもしれんな。無いよりはマシだ。
そんなことを考えている時だった。
「なんだお前ら。うちに置いてある武器では満足しないってか?」
武器屋の店員が俺らの態度をみてそんなことを言ってきたのだ。
「ああいや……手になじむ物が無いなーって思ってただけで……」
「そんなに納得しないのなら鍛冶屋に作ってもらえるように直接頼んでみたらどうだ?」
「へ? 鍛冶屋?」
「ああ。その代わり高く付くだろうが、納得のいく物に仕上がるはずだぜ」
「…………」
……そうか。その手があったか。
無いなら作ればいいじゃないか!
「鍛冶屋ってどこにあるか知ってます?」
「腕が確かな人は知っているが……頑固な人で説得に苦労すると思うぜ? それでもいいのなら紹介するが」
「お願いします!」
店員に鍛冶屋がある場所を教えてもらい、そこへ向かうことにした。
希望が見えてきたぞ。これならなんとかなるかもしれない。
店から出て鍛冶屋に向かおうとした時、ラピスに服を掴まれた。
「ね、ねぇ。本当に鍛冶屋に行くの? そこまでしなくてもいいんじゃない?」
「私たちは別に粗悪品でも構いませんよ? そこまで高価な物は買えませんし……」
「いいや駄目だ。お前らにはちゃんとした物を使ってもらう」
「な、なんでよ? あたしはまだEランクなんだし。あんまり立派な物持ってても宝の持ち腐れだと思うわよ?」
「そういうことじゃない。今のお前らに適した物を使わないと
「へ?」
ぶっちゃけ適正レベルに合ってない武器は使おうと思えば使える。だがあまりにもデメリットが多すぎてやる意味が無いのだ。
攻撃力が75%低下するのは勿論のこと、付与されたアビリティ効果も失われるからな。
下手すりゃ初期武器よりも弱くなる場合もある。
だがそれ以上に厄介なのは……
「とにかく。一度鍛冶屋に行ってみよう。そこならきっと良い物を作ってくれるはずだ」
「う、うん。でもこれが最後よ? これ以上は歩き回りたくないわ……」
「分かってる」
もし鍛冶屋でも駄目なら……いや、止めよう。
今は信じて頼ってみるしかない。
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