第21話:巨体の査定

 俺達はセレスティアまで戻り、冒険者ギルドに訪れていた。

 いつものように受付嬢のレイミに報告をすることにした。


「討伐終わったから査定お願いしたいんですけど」

「ゼストさんご苦労様ニャ~。Eランクなのに毎日すごい成果なのニャ。これならDランクにランクアップするのもそう遠くないと思うニャ~」

「そうですかね?」

「この調子ならすぐなれると思うニャ。ここまで優秀な冒険者は滅多にいないのニャ!」


 ちなみにラピスもフィーネも既にEランクになっている。毎日のようにホーンラビットを狩っているのが評価されたらしい。


「話がそれてしまったニャ。査定だったニャ。今日もホーンラビットを狩ってきたのですかニャ?」

「あ、いや。今日は森の方面に行ってきたんですよ。そこでヘビーボアとかを討伐してきました」

「なんと! もうヘビーボアを狩っているのニャ!? あそこはレベル10はないと厳しい狩場だと聞いたのニャ!」

「まーそこは3人で協力してがんばりました。なぁラピス?」

「え……あ、うん。そうだったかもね……」


 棒読みで目が泳いでいるが……まぁいいか。


「ではさっそく査定場で確認させてほしいニャ」

「あーそうだ。できれば広い場所に案内してほしいんですけど」

「ニャ? どういうことニャ?」

「ちょっと大物が釣れましてね。たぶんいつもの場所だと入りきらないかもしれないんですよ」

「大物? 森にそこまで大きいモンスターいたかニャ……?」

「見ればわかりますよ。どこかいい場所ないですかね」

「なら案内するニャ。付いてきてくださいニャ」


 俺らはレイミの後を追って広場へとやってきた。

 ここなら大丈夫そうかな。


「じゃあ出しますね」

「お願いしますニャ」


 インベントリに収納したグレートボアを取り出す。


「せーの……っと!!」


 ドスーン!!!!


「ギニャアアアアアアアアアア!? こ、この大きい塊は何なのニャアアアアアア!?」

「これはグレートボアといってヘビーボアの変異種ですよ」

「へ、変異種……? そういえば聞いたことがあるのニャ……。モンスターの中には稀にとんでもなく強い個体が生まれるとか……」


 グレートボアの死体は広場を埋め尽くしそうなぐらいの迫力がある。

 これ1匹で焼肉何人前になるんだろうな。


「改めて見てもすごい大きさだわ……よくこんなのと戦おうとしたわね……」

「これをゼストさんが倒したなんて……今でも信じられない……」

「安心して。あたしもよ……」


 後ろでそんな話し声が聞こえてくるが特に気にしない。


「し、しかしこんなに大きいと私1人では――」

「い、今の揺れはなんだ!? 何が起こった!?」


 そう叫びながら現れたのはギルド支部長のおっさんだった。

 勢いよく飛び出して広場にやってきた。


「おい何が起きたのか説明を――ぬおっ!?」


 ようやくグレートボアの存在に気づいたらしい。


「な、な、な、なんだこのモンスターは!?」

「グレートボアですよ。いつもの査定場だと狭い気がしてこっちまで来たんですけど、正解でした」

「!? ま、また君か……」


 呆れるような驚くような、そんな複雑な表情で俺を見つめてきた。


「ほ、本当に君が倒したのかね? こいつはBランクでも苦戦するやつだぞ? まだEランクである君が倒せるわけが……」

「いやいやとんでもない。3人で協力したんですよ。いやー強敵だったなー。俺達も必死になって戦ってようやく倒せたんだ。そうだよな?」


 ラピス達に振り向くが、2人は何故か黙ったまま目をそらしてしまった。


「? 何も言ってこないみたいだが……」

「だいぶ疲れているみたいで喋る元気が無いんですよ。まぁまぁそんな細かいことはいいじゃないですか」

「し、しかしだな……」

「それとも何か? また拾ったとかでも言うつもりでも?」

「……ッ!」


 おっさんはしばらく俺を眺めていた。

 特に何か聞いてくるわけでもなく、疑いの目で見るわけでもなく、ただひたすら俺を眺めていた。

 まるで俺の実力を推し量ろうとしてるかのように見えた。


「…………そ、そんなことを言うつもりは無い」

「なら何の用で?」

「いきなり建物が揺れたからビックリしただけだ。こんな大物を持ってくるならせめて一言伝えてくれ」

「じゃあ次からそうしますね」


 ふむ。これで疑いは晴れたかな。


「おいレイミ! 人を集めろ! こんなにデカいと1人では処理しきれんだろうからな!」

「わ、分かりましたニャー!」


 レイミは慌ただしく去っていった。


「査定には時間が掛かるだろう。終わったら呼ぶから待機しててくれ」

「了解」


 というわけで、査定が終わるまで待機所で待つことにした。

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