第16話:スキル習得

 俺達は街から出て草原へと移動した。

 ラピスは弓を持ち、フィーネは杖を装備している。

 これらは俺のインベントリから取り出した物だ。どっちも適正レベル1の初期武器となっている。


「ああそうだ。スキルを習得するの忘れてたな」

「たしか冒険者カードから習得するのよね?」

「そうだ。2人とも冒険者カードを見せてくれないか」


 そういうと両方とも自分の冒険者カードを見せてきた。

 どれどれ。


 ―――――――――――――――――

 ラピス

 ランク:F

 レベル1


 STR:1

 VIT:1

 INT:1

 AGI:1

 DEX:2

 ―――――――――――――――――


 ―――――――――――――――――

 フィーネ

 ランク:F

 レベル1


 STR:1

 VIT:1

 INT:2

 AGI:1

 DEX:1

 ―――――――――――――――――


 おおう……なんつーステータス……

 こんなに低かったのか。こりゃスライムに負けるわけだ。

 だけどステが低くても装備やスキル次第で何とでもなる。


「と、とりあえずラピスからスキル習得してみようか」

「わかったわ」


 ラピスが冒険者カードに触れると、〝スキルツリー〟が表示された。

 スキルツリーは現在のスキル習得情報を確認することができる。

 左上には『SP1』と表示されていて、これは現在のSPスキルポイントの量を示している。


「なにも書いてないわね……」

「まぁ1つも習得してないからな。けど下の部分に未習得のスキルが表示されてるだろ?」

「あ、これのことね」


 未習得のスキルは灰色の半透明の文字になっている。


「3つ表示されているけど……どれを取った方がいいのかしら?」


 今は弓を装備しているので弓系統のスキルが出ている。

 弓の初期スキルは《パワーショット》、《マジックアロー》、《ロングショット》の3つだ。

 今はこれだけしか習得できないが、レベルと熟練度が上がれば習得できるスキルが増えていくシステムだ。


「んーそうだな…………」

「パワーショットってのが強そうだけどこれにしたらいいの?」

「いや、ここはマジックアローにするべきだ。他のは後回しでいい。というかぶっちゃけ覚えなくてもいい」

「な、なんでよ?」

「後々使わなくなるからだ」


 初期スキルは序盤では活躍するが、ある程度スキルが増えていくと使わなくなっていく傾向にある。

 結局、上位互換や使いやすいスキルを使うことになることが多い。


「マジックアローは終盤まで使えるかなり有用なスキルなんだよ。だから真っ先に覚えるべきだ」

「そんなに強いの?」

「いや、別にこれといって威力が高いわけじゃないんだ。でも一番のメリットは『矢を消費しない』という点だ」


 そう。マジックアローは矢の代わりにMPを消費して撃てるスキルなのだ。

 威力自体はそこまで高くないが、使いやすくあらゆる面で活躍できる。


「そっか。いざとなれば矢が無くても撃てるわけね」

「そういうこと。だから最初に取ったほうがいい」

「わかったわ」


 ラピスはマジックアローを選択しスキルを習得することになった。

 それと同時にSPの表示が0になる。


「んじゃ次はフィーネ。とりあえずラピスと同じようにスキル一覧をだしてみ」

「は、はい」


 フィーネがスキルツリーを表示させるが……


「わわっ。なんか沢山出てきましたよ!?」

「だろうな」


 杖を装備してるフィーネには、杖系統の初期スキルが並んで表示されている。

 杖系統の初期スキルは全系統の中で一番多い。


「えーと……えーと……ど、どれにしたらいいんですか?」

「落ち着け。さっきの話した通り、杖系統ってのはスキルが複雑なんだよ。けど有用なものが多いからどのスキルも腐ることはないはず」

「そ、そうなんですか……」

「とりあえず直観で選んでみたらどうだ? どれも強いから大して変わらんぞ」

「う、うーん……ファイヤーボール、ファイヤーアロー、ウインドシュート、アイスショット、アイスボルト、ポイズン……」


 ぶつぶつ言いながらスキル一覧を眺めている。

 これは時間が掛かるかもな……


「……決めました。ファイヤーアローにします」

「へぇ。いいんじゃないか。ファイヤーボールよりは威力が低いけど、チャージすれば高威力になるぞ。悪くない」

「これって矢みたいなもので攻撃するんです?」

「そうだ。火の矢を作成して敵を射抜くタイプだ」

「うん。これにします」


 案外あっさり決まったな。

 もう少しかかると思っていたんだが。


「なんでそれを選んだんだ? カン?」

「あの、その……なんとなくお姉ちゃんみたいな感じしてみたくて……」

「ラピスみたいな? どういう……ああ、そういうことか」

「え? どういうこと?」

「お姉ちゃんが矢を使ってるから、私もなんとなくお揃いにしたくて……」

「フィーネ……」


 なるほどね。判断基準はそこか。

 仲が良くて微笑ましい。


「これで準備は整った。んじゃ実践いくぞ」

「が、がんばるわ!」

「は、はい!」


 んーと……手頃なモンスターは……あれでいっか。


「ラピス。あそこにいるスライムに弓で攻撃してみろ」

「あいつね。よーし……」


 弓を引いてスライムに狙いを定める。

 そして……


「やぁ!」


 スライムに向かって発射。

 だが狙いが外れて、矢はスライムの近くに落ちてしまった。


「あ、当たらない……」

「最初はそんなもんだ。気にすんな。矢はまだあるからどんどん撃っていいぞ」

「次こそは当てるわ」


 慣れるまでは命中率が酷いことになるだろう。

 けど数をこなせば上達していくはずだ。


「ついでにフィーネもやってみろ。覚えたてのスキルは慣れた方がいいからな」

「はい。やってみます」


 そういってラピスが狙っているスライムの方向に向いた。

 そしてスキルを発動させる。


「えーと……《ファイヤーアロー》! きゃっ」


 スキルを発動させると、手の平に火の矢が作成された。


「その状態を維持するとチャージすることが出来るんだ。とりあえず1本のままで撃ってみろ」

「や、やぁ!」


 手の平から発射された火の矢はスライムめがけて発射。


「! 出来ました!」


 矢はスライムに命中し、一撃で倒すことが出来た。


「え、あ、あれっ?」

「ほー。いきなり命中させたか。やるじゃん」


 さすがにスライム程度なら1本で十分だったか。


「す、すごいわ! 今のフィーネがやったの!?」

「う、うん。初めてやったけど……当たっちゃった」

「さすがあたしの妹ね! きっと才能があったのよ! すごいじゃない!」

「そ、そんな褒めないでよぉ……えへへ」

「よーし。あたしも負けてられないわ!」


 うんうん。やる気が出てきたみたいでいい感じだ。

 スライムに苦戦してた昨日とは大違いだ。

 ちゃんと武器を装備してしっかりスキルを使いこなせば戦えるじゃないか。

 もしかすると本当に才能があったのかもしれん。

 これは将来が楽しみだ。

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