第8話:ハンターウルフ

 冒険者ギルドを後にし、街の外へ出ることにした。

 見晴らしのいい草原地帯だ。

 街からある程度離れた場所で立ち止まって周囲を確認する。


「んーと……おっ。居た居た」


 視界の先にスライムを発見。

 ゲーム中でも最弱のモンスターだ。


 このままでも戦えるが……とりあえず武器は出しておこう。

 そう思いインベントリを呼び出す。

 そこには無数のアイテムがずらりと並んでいた。


「……そういや整理してなかったな」


 手に入れたアイテムは片っ端から保管してたからなぁ。そのうち整理しよう。

 今は武器が欲しい。


「たしか初心者の時に……あった。これでいいか」


 目的の物を選択すると剣が出てきた。

 スライム程度ならこの武器で十分だろう。


 ――――――――――――

 □ブロンズソード

 攻撃力:5

 適正レベル:1


 ・

 ――――――――――――


 これはほぼ最安値で買える最弱クラスの剣で、ゲームを始めて最初に使う武器の一つだ。

 もちろんこれより強い武器はいくらでも持っている。

 では何故こんな武器を使う必要があるのか疑問に思うかもしれない。


 この武器を使う理由。


 それは――『適正レベル』にある。


 これがAROこのゲームにおける一番重要と言っても過言ではないポイントだ。


 全ての装備が今すぐ使えるわけではない。

 なぜなら『適正レベル』を満たしていないからだ。


 適正レベルとは全ての装備に備わっている基本システムだ。

 これはAROにおいては非常に重要なシステムでもある。

 なぜなら適正レベルを満たしていない武具を装備すると、性能が大幅に制限されてしまうからだ。


 例えばこの武器。


 ――――――――――――――――

 □バスターソード

 攻撃力:19

 適正レベル:10


 ・攻撃力+3%

 ――――――――――――――――


 この武器をレベル10未満の人が装備した場合、適正レベルを満たしていないので強制的に『攻撃力が75%低下』してしまうのだ。

 つまり、武器性能を25%しか引き出せないわけだ。

 これがこのゲームにおける共通システムとなる。


 さらにアビリティ効果も発揮できなくなる。

 アビリティとは適正レベルの下に書いてある『攻撃力+3%』の部分だ。

 これは装備ごとに付与されている追加効果みたいなもんだ。

 装備している間は常に適用される仕様になっている。

 だが適正レベル未満の場合、アビリティ効果は全て無効化されてしまうわけだ。


 つまり適正レベルを満たしてない装備はほぼ使えないわけだ。

 まぁ装備しようとすれば出来なくはないが基本的にはしない。完全にデメリットしかないわけだしな。

 しかもそれ以外・・・・にもデメリットは存在する。


 んで、これが今の状況と何が関係するのかというと……

 今の俺は「レベル1」なのだ。

 転生したてだから当然だ。

 ということは、インベントリに入っている装備の大半は使えないということになるわけで……


 一応使おうとすれば使えなくはないが……

 まぁここは無理せず身の丈にあった装備を使うしかないかな。


 さっそく装備したブロンズソードを握りスライムの元へと移動する。

 念のためスキルを使うことにする。


「《オーラソード》!!」


 オーラソードは一定時間、武器の威力を上昇させ、追加ダメージを与える効果を付与できるバフスキルだ。

 剣を握ってスライムに向かって振り下ろす。


「せいやっ!」


 剣を振り下ろすと、スライムが一刀両断された。

 一撃で倒してしまった。


「うん。さすがに楽勝だな」


 というかオーバーキルだった。どう考えてもバフスキルは要らなかったな。

 そういや転生特典でステータスが上がってるんだった。


 さすがにスライム程度だと余裕すぎたな。別のモンスターを狩ろう。

 その場から歩き出しさらに街から離れることになった。




 それからしばらく歩き続け、森付近へとやってきた。

 この辺りに手頃のモンスターもいるはず。


「グルルル……」

「おっ。はっけーん」


 遭遇したのはハンターウルフだ。

 大体レベル5ぐらいから狩り始めるモンスターだが、今の俺なら倒せるはずだ。


「さあこい。勘を取り戻すのに付き合ってもらうぜ」

「ガァァァァァ!」


 ハンターウルフは俺を見ると走り出し、勢いよく突進してきた。


「おっと」


 それをかわした後、ハンターウルフは反転して再び襲い掛かろうとしてきた。


「グルァァァァァ!」

「あまいっ!」


 すれ違いざまに切りつける。


「!! キャインキャイン!」

「これで終わりっと」


 地面をのた打ち回るハンターウルフにトドメを刺す。

 するとすぐに動かなくなった。


 うん。このくらいのモンスターが丁度いいな。

 しばらくはこいつを重点的に狩ることにするか。


 死体をインベントリに仕舞った後、次の敵を探すことにした。

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