海外での挑戦!

三十七話 W杯へ#1

 俺がドイツに来てから、早くも4年の月日が経った。

 ドイツに来た初めの頃は、チームに溶け込めず、出場機会も少なく、出れたとしても自分のプレーを出せず、苦悩の日々を送っていた。代表からのオファーも無くなり、悶々としてる中、心の支えになってくれていたのは、あの日みんなにもらったサッカーボールだった。あれを見ると、みんなでバカやった日々や、努力した日が思い出された。


 2年目に入ると、徐々にチームとの連携もとれるようになり、得点も少しずつできるようになっていた。地元紙の評価では2という高評価をいただくこともでき、縁遠かった代表にもちょくちょく呼んでいただけるようにもなっていた。


 そして、迎えた3年目。来年はW杯ワールドカップイヤーということもあり、リーグはもちろん、クラブ、そして個人としても気合が入っていた。ドイツでは一応強豪という部類には分類されているが、最近の優勝がない俺達は、より一層練習に精が出ていた。それもあってか、直近8年連続リーグ優勝をおさめている最強クラブ、バイロン・ミュンヘンを抑え、9年ぶりの優勝をおさめることが出来た。さらに、この年の俺はまさかのリーグ得点王という称号をいただくことが出来た。この結果に、地元誌も、ふるさと日本も大盛り上がりしていた。


「拓斗。すごいな、得点王だって」

「ありがとう、ルイス。君のアシストのおかげさ」

「ハハ。いいこと言ってくれるじゃないか」


優勝を祝う宴会のなか、俺は急に監督に呼ばれた。


「どうしたんですか、監督」

「お前に、ジャパン代表からオファーが来ている」

「本当ですか?頑張ります」

「おっ、やる気だな。今回は、A代表からだ」

「えっ?」


耳を疑う事実を聞いてしまったようで、俺は監督に再度聞き直した。


「A代表?」

「そうだ。来年のW杯に向けてだろう。頑張り給え」

「あ、はい……」


いきなり肩にのしかかってきた重圧。俺がA代表。いつかはと思っていたが、まだ心の準備など出来ていなかった。


「拓斗。元気ないな。どうした」

「ルイス。なんでもないさ」

「どうした。俺達に秘密はなしだろ?」

「実は……」


俺は一連のことをルイスに話した。すると、ルイスはいきなり笑い出した。


「ハハ。そんなことで悩んでたのか」

「そんなことって」

「大丈夫さ。監督は君の力が必要だから呼んだんだ。先輩がどうとか、そんなの関係ない。先輩を食うぐらいの気持ちでぶつかってくればいいんだよ」


ルイスの言葉に俺はハッとした。俺は忘れていたようだ。昔の俺を。誰よりも上手いと過信していた俺を。今は、あんな痛い俺からは数段成長している、はず。


「そうだよな。ありがとう、ルイス」

「あぁ」


その後は、先ほどのように笑顔で宴会を楽しんだ。

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