三十五話 選手権~After Story~

 選手権優勝の喜びも束の間。俺に、衝撃的なニュースが舞い込んできた。


「清水。お前に話がある」


部活終わり、顧問の先生に呼び出された。


「何すか、話って」

「それがだな。お前に、トップチームからのオファーが来てる」

「え?俺まだ、1年ですよ?」

「そうなんだが……」

「どこからっすか?」

「ドイツのフォルシア・トルドムントからだ」

「マジっすか?」

「あぁ」


まさかの話に、そんな言葉しか出てこなかった。


「でも、無難なのは夏季の移籍期間での移籍ですよね?」

「そうなるな」

「う~ん」


必死に絞り出して、出た決断は、


「再交渉できますかね?」


そんな、幼稚な考えだった。


「あと2年待ってもらえないですかね?それも、冬季のシーズンでの移籍ってことで」

「わからない。でも、お前のキャリアアップのために、今すぐにでも行きたいんじゃないか?」

「……行きたいです。でも、倫也たちとのサッカーも楽しいんです。3年間、一緒にプレーした証を残したい。そんな考えじゃだめですかね?」


先生は苦虫をかみつぶしたような表情を浮かべ、


「分かった。訊いてみよう」


と、言ってくれた。


「ありがとうございます」


先生の言葉に、なんとも言いようのない喜びを肌で感じた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る