三十二話 文化祭#3

 その後、5分間の休憩が終わり、俺達は再びステージに登壇した。七瀬先生の位置には川崎先生が変わって入り、そのままミスコンがはじめられた。


「ではでは、続いて、ミスコンテストを開催します!今回の特別審査員は、川崎隆也先生です!」

「よろしくお願いします!」

「他は、ミスターコンテストと同じ面々でお送りいたします。ということで、この学校で、最も美麗な生徒を決める、このコンテスト。楽しみですね?川崎先生?」

「そうですね。我が校でミスコンなんて、楽しみで仕方ないですよ」


と変態のように話す川崎先生を見て、隣の生田先輩はゆっくりと椅子を離して座りなおした。


「それでは、最終審査に残った、皆さんに早速登壇してもらいましょう」


生徒たちがきれいなドレスを着てステージに登壇してきて、一人一人の紹介を行っていった。


「そしてそして、エントリーナンバー6番、小林美月さんです。なんと、美月さんは最終審査に残った唯一の一年生なんですよ!それでは意気込みをお願いします」

「はい。先輩方に胸を借りるつもりで頑張りたいと思います!」

「フレッシュな笑顔、ありがとうございます。では、早速、審査に入りたいと思います!まずは、こちら」


また映像が投影され、スクリーンにでかでかと『コスプレ審査』と表示された。


「では、こちらの内容を説明いたします。こちらは、事前に皆さんにこのことをお伝えして、皆さんに自分の衣装を持ってきてもらいました。それを見て評価するということになっています!」


着替えの時間が終わり、河合先輩が進行を再開した。


「それでは準備が整ったようなので、早速行きましょう!まずはエントリーナンバー1番、月島みなみさんです!」


と、皆さん思い思いのコスプレをして、ステージに上がってきた。


「そして最後に、小林美月さんです!」


美月は緊張した足どりでステージに上がってきた。コスプレは、今流行りのアニメのヒロインキャラの衣装になっていた。観客席はもちろん、審査員の反応も良い感じだった。


 その後、いろんな審査を行い、審査員の選考がはじめられた。


「みなさん、可愛かったですね~」


川崎先生は、鼻の下を伸ばして話している。俺は万一のことを考えて、生田先輩たちを川崎先生の正面に座るように促した。


「ですね。みなさん、各々の個性があって良かったですよね」


梅澤先輩が話を進め始めた。


「だよね~。俺的には小林さんがいいと思ったんだけど、どうかな?」

「私も小林さんに一票で」


俺の意見に、生田先輩も賛同してくれた。


「私は月島先輩がいいと思うな」

「私も……」


梅澤先輩と陽夏は月島先輩を推していた。


「だよなぁ。正直俺も二択だわ」

「私も」

「私も……」


全員の意見は真っ二つに分かれているも、候補は完全に二枚に絞られていた。


「それじゃあさ、今回の文化祭のテーマに合ってるのはどっちだと思う?」


生田先輩が、最上級生らしくまともなことを言ってきた。


「それは、月島先輩かな」

「なら、月島さんだな……」

「確かに……」

「じゃあ、星野先輩で決定だな。準グランプリは小林さんってことで」

「OK」

「異議なし」

「じゃあ、これで決定と言うことで……」


10分の協議の末、ようやく決着がついた。


「清水君、花束は?」


川崎先生は、気持ちの悪い笑みを浮かべそう言ってきた。女子たちの危険を感じた俺は、


「女子たちの意向で、こっちは俺が渡します」


と答えた。


「そ、そうか……」


先生はものすごく悲しそうな、残念そうな表情を浮かべていた。少し申し訳なさは感じたが、女子たちのためと考え、自分を落ち着かせ、ステージに戻った。


「それでは、運命のグランプリの発表になります!桐櫻学園ミスコンテスト、初代グランプリは――――」


ドラムロールが流れ、発表の時が来た。


「グランプリは、3年B組、月島みなみさんです」


嬉しそうな表情を浮かべ、こちらに向かってくる月島先輩に花束を渡し、


「おめでとうございます」


と一言添えた。


「ありがと!」


天真爛漫な返事に、少し元気を分け与えてもらえた気がした。


「そして、準グランプリは――――、小林美月さんです!」


俺はもう一つの花束を美月に手渡した。


「おめでとう、美月」

「ありがとう」

「これにて、桐櫻学園第1回ミス・ミスターコンテストを閉幕いたします!皆様、ありがとうございました!」


会場からは割れんばかりの拍手が送られた。


「いやぁ~、お疲れ」

「お疲れ様です。生田先輩も、梅澤先輩もお疲れ様です」

「いや、拓斗の完璧な段取りのおかげでスムーズに進んだんだよ、お疲れ」

「いえ、皆さんのおかげです。って、あの、すみません。あの、クラスの方行かないといけないんで……」

「そっか。後は任せておいて」

「ありがとうございます。時間あったら、是非見に来てください」

「うん!行くよ」

「ありがとうございます」


頼もしい先輩方に俺を述べ、俺は体育館から飛び出した。

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