二十八話 ミスコン審査
それから文化祭の準備も着々と進み、ミス・ミスターコンテストの二次審査の日を迎えていた。
「美月、頑張れよ?」
「うん」
「じゃあ、お先に」
俺は軽く美月を激励し、教室を出た。
「まずはミスコンからなんで、女子は隣の教室で待機でお願いします」
「OK」
俺達、男性陣は審査室に入った。
「んじゃまぁ、早速始めますか」
「だな」
「河合先輩、お願いします」
「おう」
河合先輩は、審査室の扉を開け、1番から6番までの候補者を中に招き入れた。平たい言葉かもしれないが、写真で見たよりもきれいな女性たちが無機質な教室を彩ってくれた。
「それでは、2次審査の特技披露をしていただこうと思います。それでは、1番さんから、名前、学年、クラス、披露する特技、意気込みを述べてから始めてください。早速始めましょうかね。1番さんからお願いします」
「はい……」
力なく返事をした彼女は、恐る恐る立ち上がり、自己紹介を述べ特技であるサックスの演奏を始めた。
「ありがとうございました。続いて、2番さんお願いします」
その後も、順調に審査は進んでいき、あっという間に最後の一人を迎えた。
「一年C組、小林美月です。私は、お茶を点てさせていただこうと思います。自分の個性をいっぱい出せるように頑張ります!」
「それでは、お願いします」
美月の特技披露を促すと、
「あの……。お一方、前にいてくださるとうれしんですけど……」
と、申し訳なさそうに肩をすくめながらそう言ってきた。
「えっと、じゃあ、俺が……」
俺は率先して前に行き、美月の目の前に正座した。美月は、持参した茶道道具を出し、器用にお茶を点て始めた。茶道はバラエティか何かで数回、見たぐらいだったため、作法だ何だは良くわからなかった。
少しして、キメの細かい泡が浮かんだ抹茶の入った茶碗を俺の前に差し出した。俺は、緊張しながら、茶碗を受け取り、左手にちょこんと乗せ、茶碗をくるくると回した。そして、ゆっくりとその抹茶を口に含んだ。
「け、結構なお手前で……」
口の中には、抹茶特有の苦みがいっぱいに広がりながらも、俺は消え入りそうな声で、そう言った。そんな俺を見て、美月はフッとミステリアスな笑みを零した。そして、綺麗に立ち上がったと思いきや、バタンという音を響かせ、目の前に美月が倒れてきた。
「だ、大丈夫ですか?」
「あの、足、痺れた……」
美月のガチなトーンに、会場は大きな笑いに包まれた。
「皆さん、お疲れさまでした。結果は後ほどお伝えします」
「はい。ありがとうございました」
二次審査、後半の方々は声をそろえてそう言って、審査室を出て行った。
「時間もあれなんで、選考は明日に回しましょう」
「だな。じゃあ、また明日1組集合で」
「はい。さよなら」
「じゃあな」
齊藤先輩達を見送った後、俺は一度大きな欠伸をして、生田先輩たちを呼びに行った。
「生田先輩、梅澤先輩、陽夏。ミスターコンの審査始めるので、来てください」
「OK」
「今行くね~」
「……」
俺は先に審査室に戻り、椅子を一つ追加した。
「ねぇ~、拓斗君。選考は明日るんでしょ?」
「はい。そのつもりですけど。ご都合悪かったですか?」
「ううん。そういうわけじゃないんだけどね。一応、確認?」
「そうですか。じゃあ、はじめちゃいますか」
「だね。張り切ってこー!」
「じゃあ、陽夏、よろしく」
「えっと、1番から6番の方、お入りください」
そこからは、ミスコンの審査と同様、特技を見て、審査が終了した。
「お疲れさまでした~」
「お疲れ~」
「時間は、ミスコンの選考が終わってからなので、17時くらいになると思います」
「OK。じゃあ、時間見てくるね?」
「はい。じゃあ、また明日」
「うん。まったね~」
俺は、どうしてか陽夏と一緒に教室に残った。
「い、生田先輩って、元気だよな?」
静寂を切り裂くように、少し大き目のトーンでそう言った。
「うん」
「陽夏は、文化祭何するの?」
「カフェ」
「そーなんだ。行きたかったなぁ……。残念」
「うん」
終始、会話は弾まないまま各々の教室に到着した。
「じゃあ、また明日な」
「うん」
俺は、教室に入り、文化祭の準備に再び取り掛かった。
そして、次の日――――
次の日、ミスコンの二次審査。協議の結果、最終審査に進出するのは、美月を含めた5人に決定した。ミスターも同様に5人が残った。
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