二十四話 文化祭(準備編)#2

 次の日――――


 この日は、授業時間を使って、文化祭の準備の時間がとられた。


「昨日は、本格的に始まるって言ったんですけど、今日は、ステージの構成とか、衣装とかについて話し合いましょう。俺も、家で軽く調べてきたので、分からないとこあったら聞いてください。それじゃあ、はじめてください」


教室は三等分され、話し合いが開始された。


「あ、拓斗。質問!」


遠くの方から、美月の声が聞こえてきた。


「何?」

「今回のファッションショーのテーマは?」

「倫也、テーマは?」

「う~ん、なし!」

「は?どういう意味?」

「いや。なしってことは、自由に出来るって事。全員の個性を爆発させようってこと」

「なるほどな」


倫也にしてはまともな意見に、思わず感嘆してしまった。


「じゃあ、テーマは『無形』ってな感じでOK?」

「拓斗、ナイスネーミングセンス」

「サンキュ」

「じゃあ、そのテーマにあった服を選ぶために、男子たちの私服が見たいから、モデル班の男子は出来るだけ多く私服を持ってきてほしい」

「おけ」



美月の大きな瞳に吸い込まれるように自然と返事をしていた。


 その時、ステージ構成チームは――――


「まずは、それぞれの個人ポージングでしょ?」

「男女ペアとかも良くない?」

「良いね!男子、男子のペアも見たいかも!」

「確かに……でも、時間わからなくない?」

「そういう時は……拓斗く~ん?」

「はいはい?」

「えっと、一公演の時間ってどれくらいかなと思って」

「ん~、そうだなぁ。二から三十分ぐらいでどうかな?」

「OK。それで考えてみる」

「お願い」


会場装飾・設営係は――――


「ランウェイは、モデルの待機場所は、まあ、これぐらいでいいでしょう。衣装の場所とか考えても」

「ライトとか、その辺の演出は?」

「まあ、天井からつるすしかないっしょ。演出とかも一緒で」

「だね。じゃあ、次はライトの色とか音楽決めてこうか」

「おう」


各班、順調に話し合いは進んでいるようだった。


 それから十数日間、放課後などを利用して話し合いを重ね、大体のステージの形や演出、音楽などが決定した。


「え~っと、これは……」


話し合いをしているとき、廊下に陽夏の姿が見えた。ちらりと時計を見ると、ミスコン実行委員の時間になろうとしていた。


「真佑、悪い。今から、実行委員」

「わかった。任せといて」」


おおきく胸を叩いた真佑に全てを任せて、俺は教室の外に出た。


「すみません、遅くなりました」


予定の時刻より少しだけ遅れて音楽室に入った。


「委員長、しっかりしてくれよ」

「すみません」

「それで、どれくらい集まったんだ?」

「え~っと、ざっと数えてみたところ、男子は三十人ちょい。女子は五十人強って感じですかね?」

「マジか。けっこう集まったな」

「はい。と言うわけで、選考頑張りましょ!」

「おう。で、一次では何人まで絞るんだ?」

「ん~。出来たら十人程度に絞りたいところではありますね。二次で六人ほどに絞れば、最終の枠内に収まるはずなので……」

「OK。じゃあ、やってこ~!」

「おう。そうだな」


男子チームは女子を、女子チームは男子を見て、一次審査の書類選考を始めた。


「めぼしい人は脇に置いていきましょう」

「おう」


俺は、パッと見の印象と直感だけで半分ぐらいの人数にしぼり、書いてある内容や、写真などをじっくりと見て、更に半分の十二人ほどに絞った。


「先輩方、終わりましたか?」

「げっ、お前終わったの?」

「早くない?」

「いや、先輩達が遅いんすよ。読書とかしてます?」

「「してない」」

「だからだ」


数十分後に先輩たちの選考も終わり、協議に入った。といっても、残った人たちはほとんど同じだったため、人数の調整メインで話し合いをした。


「じゃあ、このメンバーを合格にしましょう」

「だな」


多面的に評価をした結果、一次審査を通過したのは十人だった。その中には、美月の名前も残っていた。


「こっちは終わったぞ。そっちは?」

「こっちも終わった~」

「それじゃあ、結果の報告しましょう」


俺達は、応募用紙に記載されていたメールアドレスに合格通知と不合格通知を送った。


「よっし完了。次あつまるのは……、一週間後ですかね」

「だな。んじゃまたな」

「はい」


俺は急いで教室に戻った。


「ごめん。で、どうなった?」


扉を開けて一番に真佑に尋ねた。


「えっと、大体のコーディネートのイメージが出来たから、足りない分の買い出しに行ってもらおうと思ったんだけど、美月と拓斗で行ってきてもらえないかな?」

「う~ん……」

「いいよ!ね?拓斗」


美月がまっすぐに向けてくる視線が、鋭く突き刺さってきたため、俺は


「うん」


と言うことしかできなかった。


「じゃあ、明日にでも行ってきてくれるかな?」

「わかったぁ」


そして、その日の準備作業が終了した。

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