二十三話 文化祭(準備編)#1
実行委員会から1週間が経過し、俺達はクラスの出し物を何にするか話し合っていた。
「何か、やりたいのある人?」
手を上げて発表してくれるのは、お化け屋敷や、カフェ、演劇などといった無難な内容ばかりだった。
「じゃあ、この中から……」
と多数決を取ろうとしたとき、倫也が元気に手を上げた。
「どした?」
「なんか、無難なのじゃつまんないから、ファッションショーとか、どう?」
倫也の意見を聞いて、クラスが小さくわいた。
「みんな、どう、かな?」
倫也がみんなに聞くと、全会一致でクラスの出し物が決定した。
「てことで、発案者の倫也にどんなのを想像してるか話してもらおうかな」
「マジかよ」
クラス内で、小さな笑いが起こった。
「じゃあ、倫也。よろしく」
「おう。えっと、俺は他クラスと被らないのは何かなって考えたときに出たのが、これでした。で、イメージはTGC!華やかで、スタイリッシュなステージとか、照明とか。めっちゃこだわりたい!最高の思い出にしたいです」
倫也の熱のこもったスピーチに、クラス中が静まり返っていた。
「ありがとう。で、誰がランウェイ歩くんだ?」
「そーだな。う~ん、クラスの選抜。8人くらいでどう?」
「それは良いんだけど、誰が決めんの?」
「それは、クラスのみんなの投票でいいんじゃね?」
「まあ、そうなるよな。公演の回数は1回?それとも何回かやんの?」
「それは何回もやるっしょ」
「おっけ。じゃ、その方向で。まずは係の分担から始めようかな。えっと、係は……。モデル、会場の装飾と設営、衣装、構成の4つになるのかな。モデルに選ばれた8人はどれかに加わる感じで、お願いします」
「は~い」
「じゃあ、この人にモデルやってほしいよって人がいる人」
そう聞くと、怖いぐらいに手が挙げられた。
「じゃあ、まずは秋元」
「えっと、私は、拓斗君がいいと思います!」
「え?ランウェイって、女子が歩くもんじゃ」
「男子も歩くよ。知らないの?」
「そういうのには疎くて……。まあ、意見として」
その後、男女数名の名前が挙げられた。
「これから多数決ってのもあれだろうから、投票で決めたいと思います。みんなには、第一候補から第三候補まで書いてもらって、この箱に入れていってください。男女4人ずつで構成します。じゃ、書いてください」
俺はメモ帳のページを破り、全員に配った。
「じゃ、俺らも書くか」
誰が適任なのかさっぱりわからなかった俺は、女子は第一美月、第二真佑、第三秋元。男子は第一倫也、第二司、第三翔太で投票した。
「全員投票したかな?じゃあ、こちらで開票するんで、その間みんなはどの係に入りたいか考えておいてください」
そして、俺と真佑、発案者の倫也の3人で開票作業を始めた。開票作業を始めて少しした時、倫也が声を上げた。
「おいおい拓斗と美月は全部第一候補だぞ」
「ま、当然でしょ?2人とも綺麗だし」
「おれ、正直やりたくないんだけど……」
「そこはクラスの総意に従わないと」
「そうだな……」
開票作業が終了し、結果が出揃った。
「じゃあ、結果を発表します」
クラスが静まり返り、全員が俺の声を一言一句聞き逃すまいと耳を澄ましていた。
「まずは女子から。女子は、小林美月、早瀬真佑、立花ひかる、秋元玲香の4人になります」
女子の結果発表に、男子は納得の表情を浮かべていた。
「次は、男子を発表します」
真佑の可愛らしい声が教室に響く。
「男子は、清水拓斗、生田倫也、東島翔太、杉山司です」
クラスからのリアクションは特になかった。割と面白味のない結果だったのかもしれない。
その後、係の分担をして、次の文化祭準備の用意が整った。
「じゃあ、今日の話し合いは終わりにします。次から、本格的に準備が始まると思うので、いろいろ考えておいてください。それじゃあ、お疲れさまでした」
そうして、この日の話し合いは終了した。
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