二十二話 文化祭(委員会編)#2

 次の日の放課後――――


 委員会の集まりで、俺達は3年A組に集まった。


「じゃあ、今日も頑張りますか」

「おう。で、今日は何すんだ?」

「う~んと。じゃあ、最終審査でステージに上がってもらう先生の選定と、依頼に行きますか」

「で、誰に依頼に行くんだ?」


普通、熟考するところかもしれないが、ミスターコンテストの審査員の先生は全会一致で決定した。


「ミスターコンテストは、七瀬先生一択だよな」


七瀬先生とは、学園のアイドルと謳われるほど、可愛らしくて美しい先生で、他校の生徒からも話題になってるとか、なっていないとか……。


「ですね。ミスコンは……」

「うちの高校、おっさんしかいないしな……」


男子の間で、頭を悩ませていると


「別に、おっさんでもいいんじゃないの?」


この話で影を潜めていた生田先輩が声を上げた。


「なんで?」


齊藤先輩が生田先輩に聞き返した。


「ステージには拓斗君もいるんでしょ?なら、おっさんでも全然大丈夫でしょ」

「なんでっすか?」


純粋に聞き返すと、


「だって、拓斗君かっこいいもん!」


生田先輩の熱い視線と、語尾の言い方が可愛すぎて、ドキッとしてしまった。


「それもそうだな。んじゃ、とりあえず一番若い川崎に頼むか」

「賛成」

「両方決まりましたね。じゃあ、俺は七瀬先生のところに行きますけど」


そう言ったとき、齊藤先輩と河合先輩が、ものすごい熱い視線をこちらに向けてきた。


「じゃあ、生田先輩。一緒に行きましょうか。川崎先生の所にはお二人で。お願いしま~す」

「拓斗。お前ぇ」

「生田先輩、行きましょ」

「うん!」


俺達は逃げるようにして教室を出た。


「七瀬先生は数学準備室ですかね?」

「たぶんね」


階段を降りて数学準備室に向かった。

コンコン


「は~い?」

「七瀬先生。少しお話いいですか?」

「あら、拓斗君といくちゃん。どうしたの?」


先生に招き入れられ、先生の目の前に立った。


「えっと、今年の文化祭からミス・ミスターコンテストがあるじゃないですか」

「そうだね。私、結構楽しみにしてるんだよ?」

「ありがとうございます。あの、それで、七瀬先生にミスターコンテストの最終審査の審査員をしていただきたいんですよ」

「私が?どうして?」

「そ、それは……」

「りっちゃんが綺麗だからだよ」


ものすごく言いづらそうにしている俺を見て、生田先輩が言ってくれた。


「そ、そう?そこまでストレートに言われると照れちゃうなぁ」

「あの、それで、お返事は……?」

「私でよければ全然」

「本当ですか?当日は、ステージに上がって最終審査の様子を見て頂くことになるんですけど、ご都合の方は……」

「大丈夫」

「わかりました、ありがとうございます。それじゃあ、失礼します」


俺と生田先輩は、丁寧にお辞儀をして数学準備室を後にした。


「生田先輩、さっきはありがとうございました」

「何が?」

「さっき七瀬先生に、代わりに言ってくれて」

「いいっていいって。拓斗君って、そういうの照れちゃうんだ。こんなクールな見た目して、可愛いとこあるじゃん」


少し前かがみになって、可愛らしい笑顔を浮かべそう言ってきた。


「ちょ、ちょっとからかわないでくださいよ。生田先輩も、いつもフワフワした感じですけど、意外とちゃんと周り見てるんですね?」

「ちょっとぉ。それ、バカにしてる?」

「ちゃんと褒めたつもりなんですけど……」

「なら、よし」


俺達はそんな会話をしながら、教室に戻った。


「齊藤先輩、そっちはどうでしたか?」

「すぐにOKもらえた。そっちは?」

「大丈夫でした」

「マジか。これは第一回、盛り上がるな!」

「ですね」

「そうだ、梅!」


生田先輩が、何かを思いついたように梅澤先輩のもとに駆け寄った。


「どうしたんですか?」

「今からここに字、足せる?」

「サイズによりますけど、イケます」

「だったらさ、ミスコンには拓斗君が、ミスターコンには白石先生が参加するって書けば応募増えるんじゃないかな?」

「なるほど。確かにそうですね」

「イケる?」

「イケます」


梅澤先輩は、出来る限り大きく生田先輩が言った言葉を書き並べた。


 それから数十分後――――


「「できたぁ~!!」」


陽夏と梅澤先輩の声が教室にこだました。


「おっ!見せて見せて」


いち早く近づいて行ったのは河合先輩だった。


「おぉ~!みんなも見ろよ」


俺達は少し遅れて、完成したポスターを見た。


「すっげ~!!」


そこには、容姿端麗な男女と、スタイリッシュであり、カラフルな背景が描かれていた。そして、中央には大きく『ミス・ミスターコンテスト開催!』の文字が書かれていた。


「いいね。じゃあ、これを文化祭の実行委員長のところに持って行こう」


俺は、ポスターを一時的に丸めて音楽室に持って行った。


「委員長、完成しました」

「どれどれ、見せて」


俺は手に持っていたポスターを委員長に差し出した。


「マジ?短期間でこのクオリティー?すごいよ、君たち」

「これでOKですか?」

「もち。じゃあ、昇降口の誰にでも見えるところに掲示してきてくれるかな?」

「分かりました。後は、適当に応募用紙を配置すればいいんですよね?」

「うん。頼んだぞ?」


俺と梅澤先輩と陽夏は昇降口に向かった。


「梅澤先輩も、陽夏もすごいですね。あんなにきれいなポスター初めて見ました」

「ちょっと、褒めすぎだよ!ね?」

「そ、そうですね」


昇降口に到着した俺達は、すぐに掲示の作業に入った。


「陽夏ちゃん、どう?曲がってない?」

「はい、大丈夫です」

「じゃあ、ここで」


俺と梅澤先輩は、テープでポスターを固定した。


「で~きた。じゃ、戻りますか」

「ですね」


俺達は再び教室に戻った。


「で、これからどーすんの?」

「審査の内容とか、審査の項目とかを決めて行こうかなと」

「まーそれないと決めれないもんな」

「ですね。審査の回数は、最終審査を含めて3回みたいです」

「だったら、第一は書類選考だろうね」

「ですよね。二次審査は、特技披露って感じですかね?」


 その後、選考の項目を決定して最終審査の審査内容を決める作業に入った。


「最終審査は、時間が長めに取られてるんで、いろいろできると思うんですけど」

「ならさ、コスプレとか、ファッションセンス審査とかどうよ」

「ここでも、特技披露してもいいかもしれないよね」

「いいっすね。盛り上がりそう。てか、MCの人決めてなかったですね」

「俺やりた~い!」


勢いよく手を上げたのは河合先輩だった。


「本当ですか?じゃあ、お願いします。進行は、一任で!」

「任しとけ!」


その後、最終審査の審査内容まで決定し、ミス・ミスターコン関係の話し合いは全て終了した。

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