十話 体育祭(一日目)自宅にて……
荷物を机の上にドサッと置いて、ベッドに横になった。サッカーはついこないだやったばかりだが、やはりボールが足に当たる感覚は、格別に気持ちがよかった。そんな、嬉しい感覚をかみしめていると、枕元でスマホが震えた。
『もしもし、拓斗?』
「陽夏?どうしたの?」
『明日、ほとんど初めてサッカーするからコツとかないかなって思って』
「さっき出来そうな気がするって言ってたじゃんか」
『いざとなると、そう言うの気になっちゃって』
「コツかぁ~。う~ん、止めて、蹴って、走れば大丈夫だと思うけど……」
『その、ボールの蹴り方とか知りたいんだけど……』
「ボールの蹴り方ねぇ。そうだなぁ。蹴らない方の足をグッて踏み込んで、ガッて足引いて、ドギャって蹴れば大丈夫だと思うけど」
『よくわからないんだけど……』
「まあ、遠くに飛べって思えば飛ぶと思うよ?」
『そうゆうもの?』
「そういうもの」
『そういうものなのか……。じゃあ、ドリブルは?』
「ドリブルかぁ……。あんま意識したことないけど、膝曲げて、膝下にボール来たら押し出すイメージ?」
『う~ん。分からない……』
「まあ、言ってできるもんでもないけど……。明日の朝、時間あるなら学校で教えてあげようか?」
『良いの?』
「ま、減るもんでもないしな」
『じゃあ、お言葉に甘えて』
「六時集合でどう?」
『わかった。じゃあ、また明日ね?』
「おう」
そこで通話が終了した。俺は、落ち着いてスマホを机の上に置き、ベッドにダイブした。枕に顔面を押し付け、足を全力でバタバタする。
「マジか!明日、朝から!陽夏に会えるなんて……!」
その日は、遠足を控えている小学生かのように一睡もすることが出来なかった。
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