五話 号外
次の日――――
いつも通り
教科書類を机にしまい、読書をしていると、普段より教室の外が騒がしく感じた。本から目を離し、廊下に視線をやると、同級生、先輩問わずたくさんの女子生徒が集まってきていた。
「拓斗、すごいよ。この人達、みんな拓斗目当てで来てるんだよ」
美月が面白がっているような笑顔を浮かべてこちらにやってきた。
「こういうのが嫌なんだよ。美月は分かってるだろ?」
「分かってるって。だから今日はそんな拓斗を救済しようと思って」
美月は耳元に顔を近づけ、俺に一言アドバイスをくれた。
「なるほど」
俺は椅子から立ち上がり、教室の開いた扉の前に立った。女子たちは、こっちに来たことにキャーキャーと、鬱陶しい声を響かせた。俺は、廊下にいる女子の多さに戸惑っている陽夏を見つけ、鬱陶しい声と、女子たちを掻き分け、陽夏のもとに向かった。
「陽夏、ちょっと話合わせてくれる?」
「えっ?うん」
俺は、陽夏の手を握り、高く手を掲げた。
「あの、えっと。皆さん、何に期待してきたんだかは知りませんが……。俺、彼女いるんで。そういうの目当ての人たちは今すぐ自分の教室戻ってください」
『え?彼女って?』
どこからかそんな声が聞こえてきた気がしたので、
「今隣にいるのが、俺の彼女です。分かったらどいてくれますかね?迷惑になってるから」
と言うと、女子たちは集団を崩し、各々の教室に戻って行った。
「陽夏、悪かったな。これでなんかあったら悪いから、もしものことがあったら相談してくれよ?」
「あ、う、うん」
陽夏の顔がみるみるうちに赤くなっている。
「じゃあ、そろそろHRだから……」
「うん」
陽夏は恥ずかしそうに手を離し、教室に入って行った。よくよく今の言動を思い返してみると、言葉上ではあるが、一時でも陽夏を俺の彼女にしてしまった。思い返してみると、自分の顔が熱くなってきているのを感じた。
「これで、気兼ねなくサッカーできるね?」
教室に入ってすぐ、美月にそう言われた。
「ありがとな?美月」
俺は平静を装って、美月に感謝の気持ちを伝えた。
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