第2話
かくして、少女は目を開けた。
「なあ、これ上手くいったのか?」
「いや、俺に聞かれても。」
少女は起き上がってみた。起き上がって頭を確認する。
「・・・・・・」
さて。
私は早速頭の包帯を取ってみる。
「おおおおお!」
「魔法のちからってやべえええええ!」
私は頭を触ってみる。うむ、なんともない。念のため頭全身を触ってみてもなんともない。
みんなが歓喜の声を上げる。私は自分の頭を何度も確認し、特に怪我らしい異常はないことを確認。いたって正常である。
だが、歓喜の声を上げた人たちは、だんだんと顔が引きつり始める。
「いや、でもよく治ったよな・・・? 人間だよな?」
「人間・・・か? いやでも氷の女王って誰か言ってなかった?」
ここまで言われて、私はようやっと我に返る。
ここはいったいどこ? いや、それ以前にこの状況は、何?
「あの・・・。」
そういえば、声が出せない。最後に誰かと会話したのはいつ以来だろうか。
ついさっき、誰かに向かって助けを呼んだ気がしなくはないが・・・
「まって! お嬢ちゃんが何か言おうとしてる!」
「よく聞き取れないぞ?」
「いや、ついさっきまで氷漬けにされていたからな。」
・・・違う。私は元からこうだ。私は他人とほとんど話したことがない。本来であれば、この状況は腰が引けてしまう。だが、不思議と今は心が穏やかな気がする。
先ほどの回復魔法とやらの効果なのか?
「あの・・・」
何を質問したらいいかわからない。何なのだろう、この思いは。
思い切って口にしてみる。
「ここ・・・どこ?」
私はそう発した。
「え? ここか? ここの事か?」
「ああ、それならここは"眠り町"の唯一の酒場! ここ一つしかないんで、ここにねぇ酒は大金払って取り寄せしなきゃならねぇ、ぼったくりBAR・・・」
「おっと、てめぇ出禁な。」
酒場、酒場?
「・・・酒場って何?」
「は???」
私は酒場を知らない。そう聞いた男たちは慌てふためいている?
「ちょっと待った。おい、テメェら。この氷の女王もといこの子をどこから連れてきた?」
氷の女王? 私は氷の女王なんてものじゃない。
すると後ろにいた猟師たちが答える。
「いや、酒場のすぐ目の前につったってたけど?」
「ここの前で氷漬けになってたのか? その前にどこから来たかは見てねえのか。」
「あー、わかんねぇ。吹雪で足跡消えちまってたからな。ただ、像の向きからして、町の外から来たんだと思うんだが。」
「ふむ。」
より大柄の男が私に聞く。
「あんた、自分がどこから来たのか、覚えているかい?」
私がどこから来たのか? 氷漬けにされたのは本当らしい。私は私自身のことを記憶から思い出そうとしている。
よくよく頭を動かし、思考を巡らせる。そうだ。私が覚えている中で、最後にいたのは・・・
私は、氷の女王なんかじゃない。私はただの・・・
病人だ。
「私・・・病院、いた。」
「病院?」
「私、病院で、寝てた。」
男たちは驚いて顔を見合わせる。この町に病院がないのは周知の事実であるのだから。
「なあ、お嬢ちゃん。病院って、どこの病院だい?」
どこの病院なのか。私は思考を巡らせる。
... ... ...
病院名が、思い出せない。おかしいな、あれほど病院にはお世話になったのに。まるでノイズがかかったように思い出せない。
そうだ。
「点滴。」
「あん?」
私は自分の腕をまくり上げる。そう、私は病院ではいつも点滴をしていた。もちろん、ここに来る前も。だけど、私の腕にそんなものはつけられておらず。そのうえ傷もついていない。あ、そっか、回復魔法。
男たちは顔を見合わせる。点滴を知らない?
「てんてき?」
「てんてき・・・」
「天敵」
「ハッ!?(戦慄)」
「おいお前ら。話がややこしくなりそうだから黙っとけ!」
とりあえず、私が最後に覚えているのは、病院にいたことだったはず。
それならば、あとは直接確かめてみるしかない。
「ん? どうした?」
私は酒場のカウンターの上から飛び降りる。長さにして1.2メートルくらいだからそれほど高くない。
「よっと。」
普通に着地。少し咳が出そうになったが。
私はそのままスタスタと酒場の入り口に向かい、凍ってしまわないように遠くから外の様子を眺めてみた・・・
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