アラはなにをしたのか

 今日はディスカルがやってきてアラの作戦の全貌の推理をユッキー社長とコトリ先輩とやってます。


「偉大なるアラの怪鳥退治は後半になると、軍隊の出動はなかったと見て良さそうです」

「みたいだね。治安維持のための出動はあっても、鳥退治ではないと見て良さそうね」

「それは、わかるんやが、どういうこっちゃろ」


 たしかに。


「ここでなんですが、怪鳥退治が終わってしばらくしてから、食糧に関するデモ騒ぎがかなり起ってます」

「鳥が食べてもて、不足したんちゃうん」

「不足のためでないのはたしかです」


 エランは統一食だし、量さえ足りれば問題はないはずなのに。


「食糧不足は暴動のタネになるけど、量が足りているのは不思議ね」

「アラの特別食への反感か?」

「それは慢性的にあるとしても良いですが、それとも違うようです」


 なんかミステリーみたい、


「原因は」

「機密指定が厳重で、それ以上は残念ながら」


 う~ん。鳥と関係しているのか、そうでないのか、


「それとこの時の怪鳥事件はエラン史に残るもので、これが最後の怪鳥事件と私も思っていましたが・・・」

「まさか、その後も出現したとか」

「だいぶ小型だったようですが、出現しています」


 なんかおかしい。エランでは『災いの鳥』としてディスカルさえ知っている怪鳥なのに、小型とはいえ、その後は事件どころか話題としても残らなかったのは不思議過ぎる。


「その後の怪鳥は例のガトリング砲で退治したんか」

「いえ、どうも何もしている様子がないのです。だからこそエラン史に残らなかったとしか言いようがありません」


 ユッキー社長もコトリ先輩も考え込んじゃった。これじゃ、謎々だもんね。


「ちょっと話を整理しよか。


 ・怪鳥が出現しときにアラは通常兵器による駆除を試みたが失敗した

 ・かつてのハンティング法の情報を集めた

 ・最終的には積極的な動きをしていない


 こんなもんやろ」

「そうね、付け加えると、その後の怪鳥対策も積極的に動いた形跡がない」


 なにが起ったんだよ。


「コトリ先輩。アラがあの詩を解明して駆除に成功したと考えるのは」

「そこやねんけど、アラも解読できへんかったと見るわ」

「わたしもそう。あれはハンティング法でしょ。たとえば、どこかに弱点があってそこを撃ち抜くとかのはずよ」

「そのはずや、なんにもせんでも鳥がいなくなるんやったら、ハンティングちゃうやんか」


 そうだよね。ディスカルに聞いても、エランのハンティングの楽しみも地球と大差ないで良さそうだもんね。勝手にいなくなるのじゃ、ハンティングの楽しみゼロだもの。ホントにアラはどんなマジックを使って怪鳥退治に成功したんだろう。


「ディスカル。もうちょっと関連情報ないんかいな。これだけじゃ、アラが魔法使ったぐらいの結論しか出えへんやん」

「ええ、私もそう思ってあれこれ調べたのですが・・・」


 ここでユッキー社長が、


「例の詩だけど、ハンティング方法は解読できなくても、怪鳥の寿命の情報を得たんじゃないかしら、たとえば大きくなりすぎると早く死ぬとか。それを知ってアラが動かなかったとか」


 なるほど。それならある程度説明は可能になるけど、


「それは否定的やな。まずアルゼンチンにそうでない証拠がピンピンしとるやないか。それにやな、寿命がわかってても、死ぬまで食糧襲ってくるやんか。アラが動かん理由にならへんで」

「そうよね。だってその次の怪鳥出現でも動かなかったわけだし。とにかくアラはその時に怪鳥対策の決定打を編み出したのよね」


 そっかそっか、十メートル級で三ヶ月だったら、五十メートル級以上になってる地球の怪鳥ならとっくに死んでるはずだもんね。そしたらディスカルが、


「偉大なるアラは神の力を使ったのではないでしょうか」

「使えるもんかいな。コトリもユッキーもアラには会ってるんよ。悪いけど地球の神には相手の神が見えるから、アラの神としての力はよう知っとる。あの程度なら三秒かからへん」

「そういうこと。神の力でなんとかなるのだったら、わたしもコトリも心配しないよ。あそこまで大きくなった鳥には、わたしでも通用するとは思えない」


 マモルから聞いたんだけど東太平洋海戦の時の鳥の力は怪獣そのものだったでイイみたい。蹴飛ばしただけでジェット機は海に落ちたっていうし、甲板だってつかんだだけで破れたって言うんだもの。とにかく、鳥が掴んだだけで、なんでもボロ雑巾のようになったってさ。


「忘れるとこやった。もう一つヒントというか謎がある」

「まだあったっけ」

「怪鳥退治の功績をアラはアピールしてへん事や」


 そうなのよね。


「おかしいと言えば、ここまで怪鳥情報を機密にしてる事もじゃない」


 そしたらディスカルが、


「その点は私も不思議です。軍事情報は機密にされるものが多いのは間違いありませんが、これは相手にその情報を知られる事によって、こちらが不利になると判断されるからです。怪鳥情報がその扱いになるのは解せません。むしろ逆のはずです。だからデータベースさえ開くことが出来れば容易に情報を得られると考えていました」

「そうなのよ。功績のアピールをやらなかった事と、ここまで怪鳥情報を機密にしているのはリンクしているはずよ」


 どういうこと、


「そっか、それならわかる」


 えっ、コトリ先輩、なにかわかったの。


「リンクしてるのはユッキーの言う通りやと思う。隠したかったんは鳥の情報やないんやと思う。鳥の情報は単なるセットなんや。もっと重大な情報を伏せるために、鳥情報も伏せたんや」

「そっか、そうだよ。鳥対策に使ったなんらかの施策を国民に知られたくなかったんだ」


 二人は何かつかみかけてるみたいだけど。さらにコトリ先輩は、


「そっか、そっか、エランと地球は違うんだ」


 そりゃ、そうだけど、


「だから食糧の抗議デモが起ったとすれば話が合うやんか」

「さすがは知恵の女神ね」


 ディスカルまでわかったようで、


「なるほど。その線ならあり得ると思います。鳥よりそちらの方が重大と言えば重大です。その線に絞って調べ直してみます」

「お願いね、ディスカル」

「お任せください。こちらの方が出やすいと思います」


 どうにもわかりにくいシノブでしたが、


「どういうことですか」

「近いうちにディスカルが調べ出してくれるよ」

「でも、それじゃ、鳥対策にならないよ」

「実はそれもディスカルに頼んである」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る