01-22. 安全条項違反と罰則
はっ、と目を覚ます。
知らない天井が見えた。
白い天井だ。
ラフィーは記憶をたどる。
第84回
様々なアクシデントと幸運の最後にトップでチェッカーフラッグを受けたはずだ。
自分が今いるのはどこかの病院だろうか。
柔らかく白いベッドに横たわり、左腕に浸透点滴を兼ねたメディカルチェッカーが巻かれている。
病室と思わしき個室にノックの音が鳴る。
身体を起こしたラフィーが返事をする前に、老執事のグライブが姿を見せた。
「おはようございます。お嬢様」
「まずは状況を知らせて」
「それでは失礼いたしまして」
グライブは懐から年季の入った革手帳を取り出すと、読み上げ始めた。
「現在、時間は午前11時。
グランプリレースより一日が経過しております」
「随分と眠ってしまったわ」
「ファナタ・マグンダラ様の主名義で、複数のエアリエルよりお見舞いのメッセージが届いております」
「ははは。少し心配させてしまったかしら。
それで翔子たちは?」
「ピットの撤収後、残務処理を行い連絡が付きません。
F衛星大学への問い合わせも返信がございません」
「ボードのこともあるし、向こうも連絡を入れるタイミングをはかっているのかも」
「それを踏まえて、お伝えしたいことがあります」
「改まって、なによ?」
「先のレースで安全条項に違反してしまいました。
お嬢様のグランプリレース結果は、参加資格消失による記録無しです。
ゴールより先に意識を失ってしまったので、正式なコースを飛翔したとみなされておりません」
「え? どういうこと?」
「エアリエルの心身への危機を見過ごしたペナルティーとして、向こう三ヶ月公式レースへの参加申請不可が言い渡されました。
ASF協会からの公式な通達です。
期間中に改善事項をまとめて監査を受けなければなりません。
超過もしくは通達の無視はさらなる罰則を受けてしまうでしょう」
「ちょっと、それって……」
「これを踏まえると、彼らは逃げたのかもしれません。
貴重な試験機を壊しておきながら、連絡がつかないのも意図的なものやも」
「もしかして……?」
「お嬢様は当初の目的であった
全身から力が抜ける。
ベッドに倒れるが、柔らかなマットは音静かに受け止めるだけ。
涙がにじむ。
このままでは大婆さまとの約束を守れないばかりか、彼女の名誉を貶められてしまう。
『振り返るな!
集中しろ。自分が飛ぶ先を、信じる未来だけを見ろ!』
最後に聞いた魔女の言葉を思い出す。
二代目
飛んできた巨大手裏剣を蹴り返した。
勝利の魔女の言葉に
敗北は必定だ。
ここまで来たのに。
ここまでやれたのに!
ラフィーは胸張り裂けんばかりの、自分だけが知っている秘密の苦境に、声を上げて泣き叫んだ。
Act01. Fin
次回予告
Act02. 天海貫き輝く白銀灼の極煌刃(Excalibur13)
「瞠目して拝しなさい!
これこそがわたしの
エクスカリバー十四世よ!! 」
「ラウンドランドの王族は、人生で一つの物品を国宝に推薦する権利を持っていマす。
ええ、権利は推すのみで決定は国王他複数名の承認が必要なのデす。
実際には14番(仮)でスね」
「フィフスは余計なことを言わないで!」
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