黒薔薇の魔女 ～クラスメイトのお嬢様は魔女でした。そして、私も魔女になるようです～

第15話 湯船の中で

「さて、そろそろ湯船に入るとしましょうか」

「あ、うん……」

　黒薔薇さんは立ち上がり、湯船の方に向かって行った。私も立ち上がり、黒薔薇さんについて行く。

　黒薔薇さんは、ゆっくりと湯船の中に入る。私も、それに続いて入っていく。

　温かいお湯は、疲労した体にとても染みる。体の芯から温もるこの感覚は、何にも代えがたいものだ。

「気持ちいいね……」

「ええ、そうですわね」

　私も黒薔薇さんも、しっかりとお風呂を味わう。疲れがゆっくりと取れていく感覚がとても気持ちいい。

　本当に、お風呂に入ることができてよかった。この入浴があるのとないのでは、かなり気分的に違っただろう。

「あっ、え？」

「あら？　どうかしましたか？」

　そこで、私はあることに気づいた。それは、私の隣にいる黒薔薇さんの大きな胸が、湯船に浮いていることだ。

　思わず見てしまったそれは、私の心を大いに揺さぶってくる。

　やはり、黒薔薇さんの体はすごい。目が行ってしまうが、なるべく見ない方がいいだろう。

「ああ、私の胸を見ていたのですわね」

「あ、うん。ごめん……」

「別に構いませんわ。なんなら、触ってもらってもいいですわよ」

「え？」

　黒薔薇さんの言葉に、私は驚いた。触ってもいい。その発言は、私をさらに動揺させるものだった。

　その胸に触ってみたいという気持ちはある。しかし、本当にそれでいいのだろうか。

　いくらなんでも、触るのはまずい気がする。そんなことをしたら、私は大変なことになるだろう。

　それに、触ってもいいと言われたから触るというのは、違うはずである。遠慮というものを覚えなければならないのではないだろうか。

「え、遠慮しておく。動揺で大変なことになる気がするから……」

「そうですの？　それなら、別に構いませんが……」

　私は、精神を強く持って、遠慮することにした。

　その答えに対して、黒薔薇さんは少し残念そうにしている。それは、触ってもらいたかったということなのだろうか。

　そのような表情をされると、私の心には迷いが生じてきてしまう。触りたいと言った方が、よかったのだろうか。

　黒薔薇さんは私に見てもいいと言ってくれるし、触ってもいいと言ってくれる。もしかしたら、それは自身の体に自信を持っており、それを褒めて欲しいからそう言っているのかもしれない。

　そう考えると、むしろ触った方がいいのではないだろうか。その方が、私も黒薔薇さんもいい気分になれる気がする。

「や、やっぱり、触ってもいい？　こんな機会、もうないかもしれないから……」

「あら？　もちろん、いいですわよ」

　私が触りたいと言ったら、黒薔薇さんは笑顔になってくれた。やはり、触るという選択が正しかったようだ。

　黒薔薇さんは、ゆっくりと私の方に体を向けてくる。私も、それに倣って黒薔薇さんの方を向く。

　そもそも、黒薔薇さんの裸は、見るだけでも刺激が強いものだ。そのため、体を向けられただけでも、かなり動揺してしまう。

　だが、今からもっとすごいことをするのだ。この程度のことで、参ってはいられないのである。

「それじゃあ、触るね……」

「ええ……」

　私は、ゆっくりと黒薔薇さんの胸に向かって手を伸ばす。

　とりあえず、下から包み込むようにその胸に触る。その瞬間、柔らかい心地いい感触が私の手の中に入ってきた。これが、黒薔薇さんの胸なのだ。

「や、柔らかいね……」

「ええ、そうでしょうね」

　当然、それは私にもあるものである。しかし、その触り心地は自分のものとは少し違う。

　私は、少しだけ指に力を入れてみる。すると、その胸は私の指を受け入れていく。

「んっ……」

「あっ……」

　その瞬間、黒薔薇さんは少しだけ声をあげた。その甘い声は、とても官能的なものである。同性の私でも、大いに動揺するような声なのだ。

　その声に動揺した結果、私は、咄嗟に指から力を抜いていた。その瞬間、黒薔薇さんの胸も形を取り戻し、私の指に戻ってくる。

　その事実も、私の心を大いに動揺させてくれた。これは、もう駄目だ。一度、手を離した方がいいだろう。

「あら？　もう終わりですの？」

「あ、うん……ありがとう」

　私が手を離すと、黒薔薇さんは再び残念そうな表情をしてきた。もっと、触って欲しかったようだ。

　しかし、このまま触っていると、私はどうにかなってしまうだろう。そのため、今回はこれで終わりとさせてもらいたい。

「あ、黒薔薇さん……」

「あら？　なんですの？」

「その……別に触りたくもないかもしれないけど、私のもよかったら、どうぞ……」

　そこで、私はそのような提案を口に出していた。

　このような提案をするべきではないことはわかっている。黒薔薇さんに胸を触られたら、私は大いに動揺するだろう。そんなことをわざわざ勧めるなど、自殺行為である。

　だが、触らせてもらったからには、そういう提案をするのが礼儀だと思ったのだ。触らせてもらったのに、この提案をしないのは公平さに欠けると思うのである。

「……それなら、お言葉に甘えさせてもらいますわ」

「あ、うん……」

　少し考えた後、黒薔薇さんはそう言ってきた。お風呂に入る前に、黒薔薇さんは公平な精神を好んでいるように言っていた。だから、自分も触って、公平にしようとしているのではないだろうか。

　そうでなければ、黒薔薇さんが私の胸に興味を持ったりしないだろう。別に、私なんかの胸を触りたいとは思わないはずである。

「それでは、行きますわよ」

「うん……」

　黒薔薇さんは、私の胸にゆっくりと手を伸ばしてきた。私と同じように、下から包み込むような形で胸に触れてくる。

　その瞬間、私は変な感覚に陥った。他人に胸を触られている。それは、変な感覚だった。いや、相手が黒薔薇さんだから、このような感覚に陥っているのだろうか。

「……総も、私程ではないですけど、中々大きいですわね」

「え？　あ、そうかな？」

「それに、いい触り心地ですわ」

「あっ……」

　黒薔薇さんは、指に少し力を入れたり、抜いたりして、私の胸を揉んできた。その感覚に、私は思わず身震いしてしまう。

　黒薔薇さんが私の胸を褒めてくれたのは、嬉しいことだ。お世辞かもしれないが、それでも嬉しいことは嬉しい。

　ただ、黒薔薇さんの胸を触っていた時のような変な感覚が、今襲ってきていることが、私は心配だった。あまり揉まれるとまずいことになりそうだ。

「ああ、申し訳ありませんわね。私、思わず夢中になってしまいましたわ」

「だ、大丈夫、全然、大丈夫だよ」

「ありがとうございました。中々、楽しかったですわ」

「う、うん。それならよかった……」

　私がそんなことを思っていると、黒薔薇さんは手を離してくれた。

　一応、大丈夫だと言っているが、本心ではまったく大丈夫ではない。あのまま触られていたら、私はどうにかなっていただろう。

「ふう、戯れもたまにはいいものですわね」

「そ、そうだね……」

　私と黒薔薇さんは、再び元の横並びの体勢に戻った。これでやっと、落ち着くことができる。

　お風呂に入るまでに、本当に色々とあった。色々と緊張したし、動揺したが、なんだかんだ楽しかったといえるだろう。

　そんなこと思いながら、私はお風呂に入っているのだった。