第六話 生きたい

呪いの言葉。空耳なんかじゃない、確かに聞こえた。

「そういうことだったのか…」

俺は呪いをかけられたとは思えないほどの冷静さだった。多分まだ頭が追いついていない。


その時、ふと頭をよぎった。母親の取り乱している顔。何かを決めたような顔。

「俺が…俺があんなこと聞かなければ…圭太も、止めればよかった…呪いなんて信じないなんて言わないで一緒に行くよって言えばよかった…」

考えても考えても後悔は尽きない。でも、呪いの内容は簡単だ。口に出さなければいい。それだけなんだから。


俺は謎の自信を胸に、

「ありがとうございました」

と警察にお礼を言って、その場を離れた。

まだ子供だから、葬儀その他の手続きは親戚がやってくれるみたいだ。


俺、この先どこで暮らすんだ…ただ、それだけが不安だった。親を間接的に殺しておいて申し訳ない気持ちはほぼ消えていた。これも呪いの効果なのかもしれない。いや、きっとそうだ。俺はもっといいやつだ。

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