第16話

刀夜を始めとする三十五人の近衛兵がアウリウルベ城、謁見の間に集まった。対価を受け取るためだ。そこには千草もいた。

簡単には壊れそうもない箱が王とともに入ってきた。恐らくあれが対価だろう。


「疲れは取れたかな諸君。この箱の中身は金だ」


「ありがとうございます、確かにお受け取り...」


「しかし!今回は別の物を受け取ってもらおう!」


王はそう言い放ち、手を一回叩いた。すると王を守っていた兵士たちが抜刀し、更に魔導士が転移魔法か何かで刀夜たちの前に現れた。


「さあ、草刈刀夜。受け取れぇ!」

王がそう言うと敵の兵士が剣を片手に向かって来て、魔導士は詠唱を始めた。


「抜刀!戦え!」

刀夜の頭の中は混乱していた。やはり黒だった。しかし何が目的なのか。さっぱり分からなかった。そのせいか、刀夜の指示が遅れ、抜刀できずに斬られた団員が肩から血を流していた。


「大丈夫か!」

刀夜がその団員に声をかけた。


「なんとか!副団長危ない!」


刀夜はその団員に助けられた。ギリギリのところでノヴァの鍔で敵の剣を受け止め、反撃した。

ここは敵の城だ。いくら倒しても湧いて出てくるだろう。ここは逃げるのが吉だ。

刀夜は頭の中で作戦を構築した。


一方、千草は初めての実戦に苦戦していた。男との圧倒的な力の差に押されながらも、剣の技術でなんとか優位に立っていた。


「疾風斬!」

千草の三連続魔法攻撃だ。素早く三回切り返すことができ、三人斬りもできる。その技が上手くいき、三人倒すことに成功した千草はすぐに、

「悠久の風」

と詠唱した。これは自分の脚と剣に風属性魔法をかけて加速させる効果がある。つまり、足の速さと剣の振りの速さが尋常ではなくなるのだ。敵たちはその速さに驚く間もなく床に倒れていった。


「城を脱出するぞ!」

刀夜が敵の減り具合を見て、今だと思い指示を出した。

「陣形をとれ!」

全団員で外向きの円陣を作り、そのまま扉から出て行った。

奥の方から「追え」という王の声が刀夜たちの耳に聞こえてきた。


謁見の間から出ると、全団員は全速力で城を出て車に向かった。しかし、そう簡単にはいかなかった。

当然といえば当然だが、車はあるはずの場所に無く、そこにいたのはまたしても敵の兵士だった。


「副団長!どうしますか!?」


「俺のフレアノヴァで全て焼き払う」


冷酷な眼差しで団員にそう伝えた。


「魔導部隊!魔法防御壁シールドを!」


刀夜が魔導士に命令すると、彼らは何のためらいもなく刀夜に従った。


「焼き払え!スーパーノヴァ!」


刀夜を中心に炎が広がっていき、パチパチと敵が焼き焦げていく。


「フレアノヴァ!」

アウリウルベに対する憎悪をフレアノヴァに込め、撃ち放った。

金で栄えている街が炎に飲み込まれていく。


「この場から離れるぞ!」

刀夜が脱出の指示をし、近衛兵団は炎を背に、平原へと走り去った。

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