王都で

第13話

〜3年後〜


「副団長!このままだと一班が壊滅します!加勢しましょう!」

団員の一人が叫ぶ。


「ここは俺が一人でやる!二班の者は全員一班と合流しろ!」

草刈刀夜は指示を出す。


刀夜はその才能が買われ、たった三年で近衛兵団の副団長になっていた。

今は戦闘の真っ只中である。刀夜たちの王都フェーロウルべから隣の王都アウリウルベに向かっている最中だった。人々の間では「アサシン」と呼ばれていて、殺戮を生業としている集団に襲撃されていた。

奴らの目当ては輸送対象である芸術品などだろう。その価値は刀夜たちの王都でも五番に入るくらいのものだ。

アサシンは戦闘能力が非常に高く、近衛兵団にも匹敵する強さだ。もちろん刀夜にかなう者はいないが刀夜が「楽しめる」ほどの相手だ。


刀夜はあっという間に相手をしていた集団を殲滅した。すぐに一班の元に向かう。一班は団長の班だ。

しかし、刀夜が着いた時には無残な光景が広がっていた。団長と団員数名しか生きておらず、彼らの足元には味方や敵の死体が転がっていた。

刀夜の不意をついてアサシンが斬りかかってきたが、片手で相手の剣を払い、斬り殺した。


「団長!加勢します!」

刀夜が団長の後ろから声をかけると、団長は前を向いたまま頷いた。


その時だった。木々の間から矢が放たれ、団長の首に刺さった。

ぐあぁぁ...と言う声と共に団長は倒れた。刀夜は目の前の光景を一瞬疑った。しかし、すぐに我に返り岩陰に隠れた。団長のことを気にしつつも隠れて戦況を伺った。


「今スーパーノヴァを使ってもいいが団長を巻き込んでしまう...」


そのようなことを考えていた刀夜だったがその心配は不要だった。魔導部隊が援護に来たのだ。


「誰か団長に魔法防御壁シールドを張ってくれ!そしたら全員すぐに離れろ!」


「分かりました!副団長!」

魔導士の一人がそう言い、団長に魔法防御壁を張った。

その瞬間刀夜は岩陰から飛び出し、

「スーパーノヴァ!」

と叫び、全体魔法を放った。倒れている団長を避けて炎が広がっていく。辺り一面、火の海になり、木々の間からアサシンたちの悲鳴が聞こえてきた。追い討ちをかけるように刀夜は炎の中に飛び込み、敵にとどめを刺してまわった。魔法を放った本人である刀夜には炎は効かない。


敵の全滅を確認すると生き残った団員たちは団長のところに集まった。


「魔導士!団長の治療を!」

刀夜が呼びかけると三人ほど魔導士が来た。

矢を抜き、傷口を魔法で塞いだが団長は動かなかった。


「脊髄を損傷しているようです。一命は取り留めましたが、動けるかどうかは...」

魔導士が言った。


「おい!どうにかしてくれよ!まだ生きているんだ!今なら時間も経ってないしどうにかなるだろ!」


「副団長、お気持ちは分かりますが、我々にはどうすることも...」


「そうだよな...分かった。団長を車に運んでくれ。任務を続行する。以後、俺が指揮を執る」

刀夜は静かに任務の続行を宣言した。


「はっ!」

近衛兵団、魔導部隊が声を揃えて返事をした。


団長が指揮を執れなくても、団員が減っても任務を続けるしかなかった。

刀夜の車を先頭に、引き続きアウリウルベへと向かった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る