第11話

一年のフロアに行くと、ほとんどの人が刀夜に視線を向けた。

一年にまで噂が広まっているのか。まあ事実なのだが。

刀夜はそんなことを思いながら千草がいると思われる教室に行った。


教室のドアを開け、教室を見渡すとすぐに、一人で一番前の席に座っている千草を見つけた。

その席の前まで歩いて行き席の前に立つと千草は顔を上げた。言われなくても分かる。相当泣いたのだろう、目が赤く腫れている。


「そんな顔をしてたら俺が校長に千草の名前を言わなかった意味がないだろ。ちょっと来てくれるか」


刀夜はそう言うと千草を連れて人気の少ない場所に行った。


手頃な場所を見つけた途端、先に千草が口を開いた。

「私もこの学校を去ります!そして私も近衛兵になります!一般で採用してくれる制度があると聞きました。それで…それで!」


「分かったから。誰から聞いたか知らないけど正直それは現実的じゃないし、俺のせいで退学させられない。君の人生を俺が変える訳にはいかないんだ」

刀夜は、厳しくそう言い放った。


しかし千草は

「嫌です!先輩とあと一年はこの学校でいれると思ってたのに」

と言って涙を流し始めた。


「悪いが俺は明日から王都に向かうし、千草はこの学校に残ってもらう。君がなんと言おうとそうしてもらう。分かってくれないならもう二度と会うことは出来ないよ」


沈黙が続いた。しかし、その後

「分かりました…。またすぐ会えますよね?」

千草はそう決断した。納得はできていないだろうが、刀夜の思いが届いたのだろう。


「うん、会えるさ。その時は連絡するよ」


「先輩。今夜、最後にデートしませんか」


「もちろん、しよう。放課後いつもの広場で会おう」


二人は別れ、授業に戻った。二限の開始にはギリギリ間に合わなかった。


時間はあっという間に過ぎ、放課後になった。

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