第10話

刀夜が眠りから目を覚まし、目を時計に向けると、針は九時を指していた。

「まずい!寝坊した!」

刀夜は急いで制服に着替え荷物を抱えると部屋を飛び出した。寮から学校へ全速力で走った。しかし本館の入口に生徒指導の先生が立っている。


「おい!草刈!なに遅刻してんだ!こっち来い!」


先生に連れて行かれた場所はなぜか校長室だった。


「なんで遅刻くらいで校長室なんですか!」


「うるさい!黙って入れ!」


先生は刀夜を校長室に押し込みバタンとドアを外から閉めた。部屋の中には校長がいて、校長と刀夜の二人だけの空間になった。


「遅刻したことをそこまで咎めはしない。聞きたいことがあったから君を呼んだんだ」


だったら普通に呼べばいいのに、と思った。


「聞きたいこと…ですか?」

と刀夜が言うと校長は一枚の写真を机の上に置いた。


「これは君で間違いないか?」


その写真は、刀夜と千草が抱き合っている写真だった。刀夜の顔はしっかり写っているが、千草はその黒髪が写っているだけで顔は全く見えなかった。だが、刀夜は一瞬で顔を真っ青にした。


「はい、間違いありません」


「不純異性交遊は校則で禁じられているはずだが?どうゆうことだ、説明しなさい。そして相手は誰だ?」


そう、このような行為は校則で禁じられている。


「これは不純異性交遊ではありません。その子は落ち込んだ僕を慰めてくれただけです。」


刀夜は否定したが校長はさらにしつこく聞いた。


「『その子』とは?」


「言えません」


「言えないとなると君は退学処分を免れることはできないな」


「退学…ですか。」


刀夜はショックを受けた。せっかくここまで登り詰め、出会いや力を手に入れた。そして次の大会で勝てば名誉を得ることができるだろう。こんな所で退学になる訳にはいかないが千草が罰せられる訳にもいかない。

刀夜は頭の中で葛藤していた。


「君が言わないならば退学は決定事項だ。しかし、君は行くべき場所があるだろう」


「もしかして…」


「そう、王都だ。君は近衛兵にならなければならない」


「その話は無かったことにならないのですか?」


「決まった者は代えられないと国が決めている。君は退学処分も王家に仕えることも免れることはできない」


王家に行けるならそれでいい。ただ千草と、もっと一緒にいたかった。


刀夜は中休みに教室に戻った。教室に入るとクラスの人たちは、一斉に刀夜に視線を向けた。

刀夜は居心地が悪くなり、荷物を机に置くと教室を出た。

ドアの横で刀夜を待っている者がいた。伊達翔だ。


「退学か?」


「そうみたいですね」


「はぁ、やっぱりそうか。千草ちゃんは本当にそれでいいのかな」


「な、なんでそれを」


「至る所に知れ渡っていることくらいわかるだろ」


やはりさっきのクラスの奴らの反応はそれだったのか。


「でも、僕にはどうしようもできません。今までありがとうございました」


刀夜がそう言って立ち去ろうとすると、伊達は、

「草刈!」

と呼び止め、

「こちらこそありがとうな。お前ならどこに行っても最強を目指せる」

と言った。


刀夜は会釈をして伊達と別れた。

そして向かったのは千草の教室だ。

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