第9話

その後、刀夜は注文していた剣を受け取った。

その代金を支払うため財布を出すと、鋭一郎が、

「今回はいらねぇ、孫を助けてもらった礼だ」

と言い代金を受け取るのを拒否した。


「そんな、剣をタダでなんて貰えません!」

と刀夜が断ると、

「じゃあこの剣は渡せねぇ」

と言うので、刀夜はありがたく貰うことにした。


「よかったね!先輩!」


この浮いたお金でまたこいつと遊びに行くか、と刀夜は思った。


二本の剣を持った刀夜と千草は、夕日を浴びながら、土手を黙ったまま歩いていた。

先に口を開いたのは千草だった。


「剣、一本持ちますよ」


「いや、大丈夫だ」

と刀夜は強がったが、両手に鞘付きの剣を持っているのは中々辛く、腕が震え始めていた。それを千草は気づいていた。


「腕、震えてますよ。落としたら大事な剣に傷が付きます。だから持たせてください」


「そうだな。ありがとう頼む」

と言い、新しい方の剣を千草に渡した。

千草もやはり剣士であるから扱いには慣れている。ノヴァの重さを感じさせないような持ち方だ。


土手を下りる坂を下っている時、千草が窪みにつまずいた。

刀夜は、とっさに剣を持っていない方の手を伸ばして抱くように千草を支えた。


「あ、ありがとうございます」

千草は、顔を赤くして言った。


「おう、気を付けてな。」

と、刀夜は素っ気なく言った。その時は実際、何も思ってはいなかったのだが。


学校の校門に着くと、その先は紅玉は左に、黒鉄は右にへと分かれる。


「今日はありがとうございました!とっても楽しかったです!また今度も行きましょう」

千草がノヴァを刀夜に渡しながら、少し寂しそうな顔をして言った。


「俺も楽しかったよ。じゃあな!」

と刀夜も挨拶をして二人は別れた。


刀夜は部屋に着くと、二本の剣を置き、ソファーに座った。刀夜はその時、胸に変な違和感を覚えた。ムカムカするような気持ち悪い感じでは無いがそれに近い何かがそこにあった。

その後は、風呂に入り、冷蔵庫にあった物を適当に料理して食べ、布団に入った。

しかし、なぜか眠れない。頭から千草の色々な表情が離れない。

そう、刀夜は千草に恋をしていたのだ。

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