15●『劇場版 M限列車編』(2)“敵を知らず、己を知らず”、無計画なお館様。
15●『劇場版 M限列車編』(2)“敵を知らず、己を知らず”、無計画なお館様。
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作品最大のヒーロー、R獄KJ郎氏。
R獄さんはK殺隊の隊員であり、“柱”と称される幹部級の人物です。
俄然、強い。破格の戦闘能力を誇ります。
しかし、だからといって完全無敵が保証されているわけではありません。
幹部級の剣士であっても、これまで幾多の犠牲者を出してきたことは、物語冒頭の墓参りシーンで明らかでしょう。
お館様が名前を列挙する、殉職剣士たちの数のおびただしいこと……
さぞやさぞや、大切な戦力を失ってきたことに違いありません。
で、なぜ失ってきたのか、失い続けているのか。
その事実を反省するならば……
お館様は、もう少し合理的でまともな作戦を考案して、剣士たちに徹底させなくてはなりませんね。味方が有利に戦い、犠牲を最小限にとどめて、最も勝利しやすい戦闘計画を、です。
お館様は、K殺隊の最高司令官なんですから!
しかし実態は……
今回の“無限列車作戦”は、問題点だらけ、というよりも、最初から自滅フラグ立ちっぱなしの、無能丸出しケツまくり作戦だったのです。そうですよね、皆さん。
具体的には……
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無限列車での戦いを、K殺隊の正規作戦とするならば……
R獄さんの敗因と“無限列車作戦”の失敗の原因は、おもに下記の四点にあると思われます。
第一に、敵情偵察の情報を欠いた、無計画な作戦を強いられたこと。
第二に、
第三に、目的が矛盾する、
第四に、最高司令官が作戦失敗の責任を取らないこと。
下記に、順を追ってご説明します。
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●第一に、敵情偵察の情報を欠いた、無計画な作戦を強いられたこと。
R獄さんは、最初から、敵情を全く把握していません。
作戦の大前提は、“敵情把握”にあります。
小学生でもわかりますね。戦って撲滅すべき敵は何者か、どこに何体いて、どれほどの戦闘力を持ち、そして“鬼”の場合は、昼間のねぐらがどこにあるのか、ねぐらから犯行現場への行動経路はどうなのか、そういった“敵の所在・戦力・行動”をできる限り正確に掴んでおかなくてはなりません。
そうしないと、投入すべき味方の戦力を見積もることができないからです。
しかしR獄さんは……
数十人の乗客が行方不明になり、数人の剣士を送り込んだが還ってこないので、“柱”の俺が出向いてきた……といった説明で、サッと済ませます。
おいおい、それだけかよ。
それだけなら敵情は全く不明。いつ、どこから、どんな鬼か出てくるのか、そいつと戦うリスクはどれほどか、どう戦うのか、そういった大事なことが全然わからないまま、R獄さんは出撃……というか、戦場に放り込まれたことになります。
文字通り、“取り敢えず、いきあたりばったりの出たとこ勝負”。
R獄さんが自分の強さをどこまで過信していたのか知りませんが、これは無謀というか、ほぼアホと指弾されても仕方のない行動です。
ましてや今回、戦闘に不慣れなT治郎たち、計三名と鬼一匹を連れての作戦です。
どこまで使えるのかわからない新米隊士は、戦闘のお荷物になりかねません。
では、どうすればよかったのか。
最初に乗客が行方不明となり、数名の隊士を送り込む段階で……
敵情を偵察し、その情報を本部へ持ち帰る算段を整えておくことです。
たとえば、乗客に扮した隊士が偵察専用員として密かに乗り込み、その隊士はたとえ味方が殺されても戦いに加わらず、敵の情報を必ず持ち帰ることに専念する……といった仕組みです。
さらに、カラスでは鳥目で夜は役に立たないでしょうから、ミミズクやフクロウ、ヨダカなど夜目の効く連中を組織化して、夜間偵察に使うことですね。
そうやって敵の情報を得られれば、R獄さんたちの戦い方は全く変わっていたことでしょう。
うたた寝して「よもやよもや」と穴があったら入りたいほど恥ずかしい失態など、最初の最初から起こさなかったはずです。
そしてなによりも……
そういったことを、お館様が知らん顔していて、いいのでしょうか。
“敵を知り、己を知る”ことこそ、勝利と生還の基本条件です。
まず敵状を掴む、敵に勝利する戦力はこれだけ必要だ、作戦はこれで行こう……といった、当然の打ち合わせをやったのかどうか……
まあ、やっていないでしょう。
お館様は“理”の人でなく、“情”の人です。
隊士を愛し、思いやり、温かく導く高潔な人格。
だから隊士たちはみな彼を慕い、命すら捧げます。
「頼む、行ってくれ」の一言で、部下たちはためらうことなく死地へ赴くでしょう。
ある意味、極めてニッポン的な浪花節型組織社会です。
そこに独特の“美学”があることも確かです。
しかしこれ、早い話が、索敵も補給も戦闘もみな、作戦の全てがスッポーンと部下に丸投げなのです。
これは、戦う前から敗ける確率が最も高い、バカマネジメントの典型例とも言えるでしょう。
“美学”はすばらしい、けれど、これではたいてい敗けます。
敵戦力を無視した
しかもお館様、R獄さんが単身、死地へ赴いているというのに、お墓参りです。
これメッチャ、縁起でもない習慣です。おやめなさい、と申し上げたいものです。
明日から、お館様が唱える名前に“KJ郎”が加わるかも知れないじゃないですか。
せめて、R獄さんの戦勝祈願をしてやんなさいよ。あなたが千年万年墓参りを続けても、死んだ人は還ってこない。そんなことよりも、今やるべきことがいくらでもあるでしょうに……。
お館様がすべき喫緊の事案は……
過去数十年、鬼と戦ってきた戦訓の蓄積から、まずは無限列車作戦の役に立つ情報を引き出し、最も確実に良い結果を生み出せる作戦案を検討し、R獄さんを始めとした戦闘員への支援を実施することでしょう。
R獄さんは貴重な戦力です。
R獄さんがここまで成長するのに、本人のみならず多くの育成者の膨大な時間と労力と費用が投じられています。
それだけの事情をもってしても、R獄さんや隊士たちを“無計画で戦場に放り込む”愚行があってはならないはず。
お館様自身に作戦の立案能力がなければ、そのための幹部を抜擢し、作戦情報室……コンバット・インフォメーション・センター(CIC)を整備すべきでしょう。
とりあえず戦って、生きて還って来たら、てんぷらを食わしてやる……
そんな、おめでたいマネジメントが通用するのは、やっつけ仕事でも結果を出せた、昭和の高度成長時代とバブル景気の時代くらいではありませんか。
K殺隊の最大の不幸は、部下が生きて還るための作戦努力を完全に怠った、愚かな最高司令官に帰結する……と思わざるを得ないのです。
翻って、鬼さんたちはどうでしょうか。
下弦クラスの
どうやってかわかりませんが、R獄さんの出撃を事前察知していたと思われます。おそらく同行する隊士の人数まで。
ということは、鬼軍団の方が先手を打ち、敵情把握に努めて、正確な事前情報を得ていたことになります。
鬼さんの方が、情報力で
この“無限列車作戦”、最初からK殺隊の側が負けていたのです。
【次章へ続きます】
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