14●『劇場版 M限列車編』(1)あるのは、乾いた涙のみ。
14●『劇場版 M限列車編』(1)あるのは、乾いた涙のみ。
この項、
映画を未見の方は、必ず本編をご覧になってからお読み下さい。
本稿は、『劇場版 M限列車編』の本編のみを対象として記述しております。
コミック版やTVアニメ版は参照しておりません。
あくまで“映画版に表現された内容に限定しております”ことをご了承下さい。
*
『劇場版 K滅のY刃 M限列車編』が公開されたのは2020年の10月。
それからほぼ一年経過して、2021年9月25日にTV放映されました。
その間、映画の興行収入は400億円超。
国産アニメ、いや世界のアニメのダントツ最高峰を記録したことはご承知の通り。
しかし世はコロナ禍、私は劇場へ出向いて観る勇気はなく、じっと我慢をしておりました。
そうこうするうち、DVDが意外と安価に。よもやよもやのラッキータイミング。
“完全生産限定版”がネットで三千円を割ったところで購入。
TV放映の二日前に入手して、観ることができました。
いや、すごく期待していたのですよ、なにしろ400億円超の怪物ですから。
これぞ究極の超傑作か……と思いきや。
よもや、よもやの……
感激、ほぼゼロでした。
観終わって、きょとんとしましたよ。
これって、何なんだろう? って。
ご免なさい、すみません、ファンの方々には本当に申し訳ありませんが、あくまで私個人の感想です。
もちろん、画像のクオリティは凄い面もありました。
鬼さんたちとのバトルシーンは、さすが、さすがの壮絶感。
しかしながら、本作の実質的な主人公であるR獄さんが……
あまりにも、可哀そう過ぎるのです。
そりゃまあ、彼の最後の運命を思うと、“可哀そう”そのものなのですが、ただ哀しいというのではありません。
R獄さんへの、この扱いは、あまりといえばあんまりだ……という、やるせない哀しさです。
というのは、彼、R獄さんは……
破れるべくして破れる絶望的な戦闘に放り込まれ、そこから逃げられぬまま見捨てられ、最後は意味のない無駄死にすら強いられてしまう悲劇のキャラクターなのですから。
はっきり申し上げます。
物語のヒーローであるR獄さんの最期は、じつは、死ぬ必要のない“無駄死に”だったのです。
だから、とてつもなく可哀そうです。
そして、とてつもなく愚かですらあります。
ですからそこに、燃えるような感動の涙は一滴もありません。
ただ、
理由はしっかりありますので、次章以降に続けて述べます。
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さて、泣かせる映像作品、私の体験では、以下のものが強く印象に残っています。
『シベールの日曜日』、胸にじんと沁みます、涙ホロリです。
『空軍大戦略』のラストで見上げる美しく澄んだ大空。これも涙ホロリです。
『大列車作戦』のラストシーン、去り行く主人公の背中が、胸を打ちます。
『ラ・マンチャの男』で、アロンソ・キハナ最期の場面。男泣きってこれかな。松本幸四郎さんの時の舞台を観たときでも、涙ボロボロでした。
アニメでは、『太陽の王子ホルスの大冒険』でヒルダがホルスに剣戟を挑む場面。これは特別です。ヒルダは絶対に勝てるのに、どうしてもホルスを斬れない……そこにあるのは憎しみと愛のせめぎ合い、ここだけは完璧に大人のシーンですね。そのあとでヒルダが死を選ぶ伏線となっているからです。彼女の心の逡巡をコマ送りで観ると、ズキンと胸に刺さります。
『おおかみこどもの雨と雪』、ラストシーン近くの母親の叫び「しっかり生きて!」に涙腺決壊。
『この世界の片隅に』のラスト数分とエンドロール。しみじみと泣けます。
TVアニメ『クロノクルセイド』の最終話、ロゼットとクロノの最後の場面。そして『スクラップドプリンセス』の終盤で、ラクウェル姉が仇敵であるマウゼルの神にパシフィカの助命を請い願う場面。グッときます。
ヘヴィ級なのは洋画の『レ・ミゼラブル(2012英・米)』、これは凄い。サントラ聴くだけで目頭が熱く、もうあかん……
古い国産映画ですが、『生きる(1952)』『名もなく貧しく美しく(1961)』、そして『ここに泉あり(1955)』には、心の底から揺さぶられます。
そして国産戦争映画で、『太平洋奇跡の作戦 キスカ(1965)』。
北の果ての孤島キスカで玉砕確実のまま放置されている守備隊の兵士五千人を救出するために、ある司令官のもと、非力な救出艦隊が挺身するお話です。救出対象の兵士を一人でも多く船に乗せるため、上官が命じて、余分な重量物となる銃器を海に捨てさせる場面。ほんの一瞬のワンカットですが、涙、にじみます。
これについては後の章で改めて触れます。
しかし『劇場版 M限列車編』には……
感動の涙など、一滴も無いのです。
あるのは、余りにも
どういうことかと言いますと……
【次章へ続きます】
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