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明らかにブルーの声に覇気がなかった。相当なダメージを受けていると思って間違いない。
仲間がこれだけ痛めつけられてるのに見てるだけの俺っていったいなんなんだろうか……。
生涯を通して人の上に立つのは止めようと心に強く誓う。絶対に訴えられるからな!
「分かった! 悪いがもう一回だけ頼む!」
「後は……くっ……どうする、つもりだ?」
「一か八かやってみたいことがある!」
「レッド! なにか考えがあるんだな⁉」
「はい!」
「じゃぁ……もう一回……行き、ますよ、ブラックさん!」
「死ぬなよ! ブルー!」
またしても同じように吹き飛ばされていくブルー。
【報告。敵モンスターの大破を確認。ターゲットをブルーに固定。熱線攻撃開始まであと3秒】
「よし! ノエル! シールド収納! 瞬発力最大で頼む!」
【了解。基本運動性能330%で固定】
俺は、大きく開いた口の中に飛び込む。
「ノエル! シールドモード全開だ!」
【了解。外骨格装甲変形シールドモード全開】
シールドが、上下に食い込んで完全に相手の口をふさぐ。
ノエルは、熱線の直撃を受けてもシールドがあればダメージは、ないと言っていた。
こうして、口をふさいでしまえば熱線が逆流してダメージを与えられる可能性があると思ったのだ。
強すぎる炎は自らを焼くというやつである。
そして、思った通り自爆覚悟で敵モンスターは熱線を吐いた。
一瞬遅れて、とんでもない爆音が響き俺は吹きとばされていた……。
ココがどこか分からないが、相当飛ばされてきたことだけは分かる。
目には星空が映っていた。
【報告。敵モンスター撃破を確認】
「ノエル……ブルーは大丈夫か?」
【回答。ブルー及びブラックの生存を確認。こちらに向かっている模様】
そうか……よかった。
「なぁノエル、俺のダメージはどのくらいだ?」
【回答。ダメージ軽微と判断。完全回復まで約10時間必要と推測】
けたたましいサイレンの音がする。
身体を起こして見ると、どうやら俺は道路の真ん中で寝転がっていたらしい。
警察や五石家の人達が付近一帯を封鎖してくれてなかったらどこかの誰かに迷惑をかけていたかもしれない。
それにしてもひどい話だ、あちらこちらから火が上がっていて大惨事である。
あらかじめ、消防車を用意してもらっていてこれなのだから、本来ならもっととんでもない事になっていたのだと思うとぞっとする。
「レッド! 大丈夫か⁉」
ブルーをお姫様抱っこしたブラックさんが来てくれた。
そこは、俺の指定席なのだが今日は譲としよう。
「はい大丈夫っすけど、それよりブルーさんはどんな感じっすか⁉」
「……言っただろ、あと、一回なら、いけるって……」
「話すくらいは出来るんすね?」
「あぁ、さすがにいつもみたいに走ったり、跳ねたりの移動は無理だがな……」
「まぁ、いいさ、しばらくの間、休んでいるといい。私が足になればいいだけの話だ」
*
激戦から3時間ほどたった深夜――。
本日の反省会の始まりだった。
「ブルーさん、調子はどうっすか?」
「あぁ、動くくらいは何とか出来るようになった」
「すまないな、ザコ相手ならともかくボス戦では二人に負担を押し付ける形になってしまって」
「なに言ってるんすか! 最後、ブラックさんが受け止めてくれてなかったら俺、もっとヤバかったすよ!」
「それに、俺なんてほとんど見てただけっすよ!」
「だがなレッド! 自滅覚悟の突撃は感心できない!」
久しぶりに聞いたブラックさんの怒った声色だった。
「あ、でも、俺シールドありますし」
「それでもだ! いくら防御特化型とは言え相手の攻撃力が上回れば死んでいたかもしれないんだぞ!」
「はい、以後気を付けます……」
言われてみればそうだよな。本来ならダメージないはずが軽微って言ってたし。
相手が弱っていたからこそ、今があると言われれば……その通りな気がする。
「いずれにしろ、明日からが本番だ!」
「今度は、3か所同時とか、レベル1やレベル2のボスが複数ってこともあるんすかね?」
「そうだな、ブルーの言う通り。その可能性は高いだろうな」
「げ、さすがにそれってヤバくないっすか⁉」
1体ですら大惨事だった。いったん家に帰って見たテレビでは、そのことばかり報道していた。
そりゃそうだよな……学校丸ごとどころか、その周辺の家までなくなっちまったんだもんな……。
上空から撮影された映像を見る限りだと復旧するのにどれくらい時間がかかるかさっぱり分からないレベル。まるで大きな隕石でも落ちてきた後みたいだった。
「いずれにしろ、同じモンスターがザコとして出現する可能性は高い」
「そうっすよね。カネルのヤツなんかパターンが見えてきたってゆーか、とりあえず数増やしときゃ難易度上がるだろ的なところありそうっすもんね」
まったくの同感だった。
でも、さすがに今日のが複数はまずい。とてもじゃないがなんとかできる気がしなかった。
「正直なところ、攻撃に振るか防御に振るかで悩ましいところではあるな」
俺にかんして言えば、いまさらな話ではあるがブラックさんとブルーにしては大きな問題だと思った。
攻撃力を上げないと相手にダメージ与えられないし。かと言って防御上げとかないと死にかねない。
そこで、俺は一つの提案をしてみた。
「とりあえず、明日の1っ戦目の相手を見てから決めるってゆーのはどうっすか?」
「うむ、消極的な判断だとも思うが、方向性を見定めると考えれば悪くない判断かもしれない」
「あの~」
ブルーが、軽く手をあげた。
「俺、もうほとんど防御に振っちまったんすよ。そんで、ボーナスポイント使ってバーニングナックルを最大まで強化しちゃいました」
「いや、ブルーはその方向性で間違ていないと思う。問題は私さ……」
「何かいい装備とかと交換って出来ないんすか?」
「空中で制止し姿勢を安定させるためと思われるものならあるのだがな……」
今のままでもブラックさんは自由に飛び回っているように見える。むしろ空中で制止出来る能力なんて手に入れたところで使い道が思い当たらない。ただ的になるだけだと思った。
「やっぱり、スピード重視型が調子良かったのって最初の方だけだったってことっすね」
「だろうな。あと使えそうなのは今使っている加速装置の上位互換で超加速装置と言うのもあるにはあるのだが。手に余る速さは自滅しか道がないと思えてならない」
「えっ? だったらとりあえずもらっといてダメだったら使わなければいいんじゃないんすか?」
ブラックさんが首を振る。
「残念ながら一度選択したものを戻すことは出来ないんだよ」
「えっ、じゃあ」
「罠ってことだよ」
心底嫌そうにブルーさんが言った。
そういえば、前にも似たようなこと言ってたもんな。
*
――油断があったとは思えない。
でも、想定外ではあった。
レベル3になって初めて遭遇したモンスターの攻撃力はゼロ。
つまり、レベル上げを促進させるためのサービスモンスターだったのだから――。
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