52
夢が丘公園――。
そこは前リーダーを失った嫌な思いでしかない場所だった。
大きな穴が開いていて、今も立ち入り禁止のテープでおおわれている。
出現してきたモンスターも同じだった。しかも3体。
ブラックは何とか冷静さを保っていたがブルーは無理だった。
いきなり突撃しそうになったところにブラックが立ちふさがる。
「冷静になれブルー!」
「だって、こんなのあんまりじゃないっすか!」
「カネルの思惑に乗るな! 簡単に倒して朝笑ってやろうじゃないか」
「簡単にっすか?」
「あぁ、そうだとも。レッドが居なくとも相手の攻撃が分かっている以上やることは簡単なはずだ」
「じゃぁ、どうするんすか?」
やっと少しばかり冷静になってくれたかとブラックはほっとする。
「サンドイッチにしてやればいいのさ」
「サンドイッチっすか?」
「あぁ。ブルーは攻撃力が高すぎるからな、拳じゃなくて手のひらで押してやればいい。相手が直線状になるように私が削りながら誘導する。後は腹を押してやってくれ」
「分かりました、やってみます…」
克斗がやったのとまったく同じとはいかないが圧迫された中心のヤツが爆発すれば残り2体も爆発して四散し――公園にはさらに大きな穴が一つ増えていた。
「攻略方法が分かってればこんなにも簡単だったんですね……」
「そうだ、これは、自分達を戒める戦いとして胸に刻むべきだ」
「レッドは、大丈夫っすかね?」
「きっと彼ならなんとかしているさ」
*
俺たちは毎日、1日に2回モンスターを倒し続けた。
厄介なヤツにめんどくさいヤツ等、色々倒し続けた。
そして――。
レベル2のボス戦に突入したのである。
昼間、大きながんもどきそっくりのサービスモンスターを倒し戦力は増強しているはずなのに不安は大きかった。
場所が小学校の校庭という事もあり、巨大型モンスターが出るとなると少し手狭な感じがしたし。なによりも初めて体験することとなる熱線攻撃を仕掛けてくるモンスターらしいのだ。
状況次第では被害は大きくなるだろう。近隣の方々にはあらかじめ避難をしてもらっている。こういった事ができる存在が強力してくれていることは本当にありがたかった。
「柊さん、そろそろ時間なんで避難してもらっていいっすか?」
「あぁ、分かっている、死ぬなよ!」
「はい! この戦い一緒に終わらせましょう!」
最初は何で毎回俺のところについてくるかなぁ、とか思っていたが監視役だったそうだ。
俺が不特定多数を害するテロリストみたいな行動を取ったら即報告という話だった。
だが今となっては、戦友みたいな感覚すらある。今回みたいに、けっこうむちゃなお願いも通してくれるし。死者が出ていないのも五石家の方々の協力あってこそである。
時間通りに出現したのは巨大な亀だった、違う点があるとすれば甲羅のかわりに火山みたな物を背負っていることだろうか。
「バーニングナックル‼」
ブルーの腕が変形し小さなロケットエンジンのようなものが飛び出してきて爆発的に攻撃力を増す必殺技。
おなじみとなった、ブルーの先制攻撃が敵の前足を直撃するが、撃破には至らず。
ほぼ同じのタイミングで高高度からの強烈なかかと落としが敵の頭を直撃――これもほとんど効果がなかった。
「かってーなおい!」
「耐久力AAAはさすがに厳しいか⁉」
「熱線攻撃来がくる! 備えてくれ!」
俺はシールドでガードし、二人は跳躍してかわしたが、横に薙ぐ形で放たれた熱線は地面を焼き鉄棒やうんてい等を巻き添えにして溶かしていた。
校庭の周りを覆うように生えていた木々が燃えているだけじゃない。近くに在った体育館までもが燃えていた。開幕早々地獄絵図である。
こうなることを予測していて、それなりの対応は出来るようになっているが遠距離からの放水でどこまで被害を小さく出来るのかわからない。
いくら相手の動きが遅いとはいえこんなのが歩き出して建物を焼き始めたら大災害である。
つまり俺達は最悪でも足止めしないと街が火の海になってしまうのだ。
「ノエル! シールドは持ちそうか⁉」
【肯定。敵モンスターの攻撃によるダメージ皆無】
さすが防御特化型と言ったところか。だがそれでは倒せない。
「ノエル! ブルーの攻撃はどのくらい効いている⁉」
【回答。敵モンスターのダメージ軽微。撃破まで100回以上の攻撃が必要と判断】
マジかよ!
「ブルー! バーニングナックルに回数制限はあるのか⁉」
「俺の気力次第だ!」
「だったらとりあえず100発ほど頼む!」
「とりあえずって! わかったよ! やるだけやってみる!」
「レッド、私の攻撃は通っているのか⁉」
「ノエル! ブラックの攻撃はどのくらい効いている⁉」
【回答。敵モンスターのダメージ更に軽微。撃破まで1000回以上の攻撃が必要と判断】
そのまま伝えるか一瞬悩んだが隠しても仕方がないと割り切った。
「ブルーの10分の1程度だがダメージは入っている続けてくれ!」
「分かった!」
ブラックさんは跳び上がってからのかかと落とし。ブルーはバーニングナックルを連続で繰り出しているが相手の熱線攻撃が厄介で思ったようにはダメージを入れられていない。
それでもブルーの攻撃が一番厄介だと判断した敵は地面に向かって熱線を吐きながらぐるりと一周した!
地面がめくりあがるように溶けて飛び散り――適度な足場がなくなってしまう。
そこでブルーは相手の背に飛び乗り拳を打ち下ろし始めるが、あまりダメージは入っていない。
どうやら、背中の部分はより強固になっているみたいだ。
そうこうしている間にも熱線攻撃は続き――花壇が焼け、校舎が焼け、近隣の民家までもが焼かれ始めた。
レベル2の時みたいに口の中が弱点というわけでもないらしく刀もどきを投げても無駄。下手すれば空中で溶かされて終わりである。
「ノエル! 本当に弱点とかないんだな⁉」
【肯定。現時点で敵モンスターの弱点は不明】
「おいレッド! あとどのくらいだ⁉」
「ノエル! 今どのくらいダメージ入ってる⁉」
【回答。敵モンスターのダメージ軽微。約15%のダメージと推測】
ど、ちくしょう!
「特に背中は硬いみたいで、まだ半分も削れてない!」
「ざけんな!」
「ブルー! 相手の下にもぐりこんで腹を狙うことは可能か⁉」
ブラックさんからの提案にブルーはすぐに反応した!
「やってみます!」
「せっかく相手が掘ってくれた穴があるんだ、そこに倒し込めるかやってみよう!」
「了解っす!」
「いくぞブルー!」
「バーニングナックル!]
ブルーが敵モンスターの左下腹をジャンプしながら殴り上げると同時にブラックさんも、ほぼ同じ場所を蹴り上げる。
二人の息の合った攻撃にモンスターは思ったよりも簡単にひっくりかえってくれた!
「よし! ブルーこれで相手の腹が狙えるぞ!」
「はい!」
【警告。敵モンスター突撃攻撃を選択】
すでにブルーは「バーニングナックル!」と叫びながら相手の腹に向かって一直線だった。
「相手が突っ込んでくる! 備えてくれ!」
「――っ⁉」
敵モンスターの背中の盛り上がった部分――まるで火山が噴火したみたいに爆音が轟き強烈な熱線が飛び散ると同時にブルーを吹き飛ばす。
形的には一応ブルーのカウンターが決まった形になっているのだが質量が桁違い過ぎた。
ダメージ覚悟の突撃とか本当にボスはいさぎよすぎだろ⁉
それに、見事にひっくり返って元の位置とか力加減も絶妙である。
【報告。敵モンスター小破を確認。比較的腹部にダメージが通り安いと判明】
「大丈夫かブルー⁉」
俺の叫びに少し間をおいてから反応が返ってきた。
「なんとか……ってか、まだやれる!」
「今の攻撃! 今までで一番ダメージ入ってる! 続けられるか⁉」
まったくにもってひどい話である、ダメージ覚悟で突っ込めと言っているのだから。
それでも、ブルーは勇ましかった!
「ブラックさん! もう一度今のやりましょう!」
「いけるんだな⁉」
「ったりめっすよ! まだまだ、俺はこんなとこでくたばるわけにはいかないんで!」
相手の熱線攻撃をかわし――再びブラックさんとタイミングを合わせてのバーニングナックルが決まると先ほどと同様に敵はひっくり返り背中の火山を爆発させる。
そこに、きっちりタイミングを合わせてブルーの必殺技が決まる。
「バーニングナックル‼」
そして再び吹き飛ばされて行くブルー。
【報告。敵モンスターの中破を確認】
「よし! ブルーあと半分だ!」
「……すまないレッド……たぶんあと一回が限度だ……」
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