第14話 メル、恐ろしい子……!
「いやぁ、まさかこんな短時間で習得出来るとはね。本当は1週間はかかるものと思っていたよ」
ヨムルは急に、そんなことを言い始めた。
「え、でもヨムルさんは人化は簡単だって……」
「いや、それは
「………なるほど」
ということらしかった。俺が数時間で終わったのは前世のおかげなんだろうけど。
「ところで、人化出来る人はどれくらいいるんですか?」
と、ここでフィーネが尋ねた。確かにそれは俺も気になったことだ。俺が知っているのは全員ではない、ってことだけだからな。まあ、集落の大人の半分くらいは出来るだろう。だから、30人くら──
「あぁ、5人だよ」
……へっ?
「僕と、ガルドさんとシルさん。君のお父さんとお母さんだね。そして君。あとは、大婆様が出来た筈だ。僕は見たことないけどね」
「それだけ………なんですか?」
フィーネが驚きながら言う。まあ、そうだろうな。だってさすがに少なすぎる。
「それだけ? いやいや、寧ろ多いくらいだよ。昔は2人が普通だったらしいんだ。そもそも全員が人化を覚えたところで使い道ないからね。その2人が人化を覚えてるのは、近くにあるヒューマンの街に行くためだよ。ここら辺は獣が少ないから肉を調達しにね」
ということらしかった。まあ、考えてみればそりゃそうか。
あ、ということは……
「じゃあ、ヨムルさんもにんげ……ヒューマンの街に?」
「───お兄ちゃん」
「え?」
「お兄ちゃんと呼んでくれないか。ヨムルさんだとなんか堅苦しくてさ。あと、敬語も無しで」
え、えぇぇ、お兄ちゃん……? ちょっとハードル高くないか? て言うかここにはロリコンしかおらんのか。
いやまぁ、良いんだけど。お兄ちゃん単体だとなんか嫌だから、ここは妥協案でいくか。
「分かった。ヨムルお兄ちゃん」
ま、これで良いだろう。
「お、変えてきたね。うん、良いよ………実は夢だったんだ。お兄ちゃんって呼ばれるの」
やっぱロリコンだったわ。ていうか目が怖い!
…………ていうか、質問に答えてもらってないじゃん!
「ヨムルお兄ちゃん。さっきの質問に答えて」
「ん? あ、あぁ、そうだった。ええと、ヒューマンの街に言ったことがあるかって言う質問だったかな。もちろんあるよ、近くの街にね。ガルドさんに何回か連れて行ってもらっていた」
「この近く………ということは、カルディナですか?」
フィーネが聞く。あ、因みに今まで流してきたけど今使ってるのはキリシス語だ。フィーネはシャンパーユ語使えないからな。
「うん、そうだよ。それがどうかしたのかい?」
「いや、やっぱり人化ってスゴいなと思いまして。カルディナは獣人を認めないサリエス教が根強く残っているカーネリア神聖国の領地なので、結構審査は厳しい筈なんですけど………」
「あぁ、それに関しては大丈夫だよ。言うのもなんだけどラクーン種はちょっと変わってるからね。人化している時はステータス鑑定でもヒューマンと出る」
「な、なるほど………」
やっぱりヒューマンと出たのはそういうことだったらしい。
それにしてもスゴいな、人化って。なんか歩きにくくて、いつもと違う感じがするけど。これは慣れるしか無さそうだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
5ヶ月後、弟が1才になった。そう、名前を付けてもらえる日である。因みに俺は3才3ヶ月だ。
大婆様のところに行き、弟に名前を付けてもらった。大婆様は良い意味で全く変わってなかった。
村娘(仮)の人はちょっと大人っぽくなっている。て言うか何歳なんだろう。20はいってないと思うのだが。
まあ、そんなこんなあって弟の名前は『アル』になった。やっぱりネーミングセンスあるよなこの人。
弟には立派に育ってほしいものである。
因みにフィーネたちは3ヶ月前に帰っていった。そしてその時に、俺の誕生日を祝ってくれると約束してくれたのだ。
『ほんとは弟君が一才になるまでいるつもりだったんだけど、急に用事が出来ちゃって。ごめんねぇ……でも、また2年後くらいに来るから!』
とはフィーネの言葉である。良い人たちだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
5ヶ月前、フィーネ達がラクーンの里にやって来て、親への尋問が終わったその夜──メルと
ガルド、シル、フィーネ、ローゼット、ユーインの5人は、真剣な顔持ちで集まっていた。
「どうしたフィーネ。話ってのはなんだ」
腕を組みながらそう言うのはユーインだ。
「いや、話って言うより、その前にちょっと質問があるんだけど……」
「なんだ、早く言え。俺は娘達の寝顔を見ることで忙しい」
ガルドは相変わらずの溺愛っぷりである。
「じゃ、じゃあ、単刀直入に聞くけど、3才にもなってない子どもがさ、ステータス鑑定って使えると思う?」
「「……は?」」
ガルドとユーインがいきなり何を言い出すんだという風な顔をした。シルもそれに続く。
「いえ、思わないわ。ステータス鑑定って言ったら、ステータス閲覧を数えきれないほど使って希に習得出来るというアレでしょう? 3才……ましてや子供なんかに習得出来る筈もないわ。私でさえ持ってないのに………」
彼女はスキルのエキスパートだ。その彼女が言うのだから間違いはないのだろう。
「やっぱり、勘違いだったのかなぁ………」
「……どうしたんだ。勘違いでも良いからとにかく喋ってみろ」
「うむ! 俺もそう思っていた!」
「声がうるさいぞ、キン肉
「そうだったな。すまない!」
「「…………」」
「……えーっと、じゃあ言うね。私、鑑定察知っていう死(しに)スキル持ってるんだけど、それが反応したんだ。メルちゃんに鑑定されました、って………」
「「「「 」」」」
場が静まり返った。そりゃそうだ。今の言葉が本当なら、3才にも満たない子が世界に数えるほどしかいないステータス鑑定を持っているということになる。
因みに死(しに)スキルとは全く役に立たないスキルのことだ。鑑定を持っている人が少ないのだから当たり前ではあるが。
「それは、確かなのか。スキルの誤差動とかではなく?」
「………安い
「分からないだぁ?」
「違う違う! 分からないって言うより、自信が無いってだけ。鑑定察知のレベルは1だし、反応したのは今回が初めてだし……」
「「………………」」
沈黙が訪れる。だが、ユーインがその沈黙を破って言った。
「じゃあ、こうしよう。またメルちゃんに鑑定されたとスキルが反応すればもう一回俺たちに言え。もし無かったら、気のせいだったと思え。別に本当に鑑定されていたとしても、実害は無いんだからな」
「そうだな。もしそうならメルはやはり天才だったというだけだ」
ガルドは相変わらずの親バカっぷりだった。
「そうね。メルは天才だから、もう何がきてもそんなに驚かないわ」
シルも同じく親バカであった。
「………ップ。アハハハハハハ!」
思わず笑ってしまう。
それに吊られて、皆も笑っていた。
結局5人は、朝になるまで、今までにあった出来事を話し合ったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます