第2話
私、異世界転生して10歳になりました。
それなりに良い暮らしを満喫中。子爵家の令嬢として、すくすく育っています。
「それで、どうしてまたあなたが私の前に現れたの?」
例の前髪以外ツルッパゲ……チャンスの神様と二人きりで向かい合う私。
礼儀作法の時間が終わり、小休憩しようとベッドへダイブした所で突然現れたのだ。
「私とて不本意なのだ。出来れば貴様とはもう関わり合いたくなかった」
押し掛けといて失礼な奴だな君は、神様よ。
「そうですか、じゃあもうお帰りになったらいいんじゃないですかね」
「可愛げのない女だ」
「ははは、今は10歳の幼女ですから、微笑むだけで可愛いの嵐を頂けますよ? 実際見た目も超可愛いですし」
ウルトラボーナスだろうか、転生後の私は空色の髪と深海の如き青の瞳が似合う美少女だった。
深窓の令嬢らしく肌は抜けるような白。華奢な体もあってか、会う人会う人の庇護欲を刺激しまくっていた。
「ふん。その程度の見た目、神族にいくらでもおるわ」
「へえ、神様も人間みたいにいっぱいいるんですか。そっか、チャンスの神様って言ってたし、きっと色々役割分担してるんでしょうね」
ベッドの上に座り込み、うんうん頷く私に呆れた視線を寄越す神様。
「まあいい、今回来たのは不本意ながら貴様の願いを叶える為だ」
およ? 私の願い?
「三つの願いを叶えると以前言っただろう。転生した時に一つ消費しているから、残り二つだ」
あら、残念。けど、まぁ、願いか。
「なんでもいいの?」
「無論だ、神に出来ぬ事は無い」
「ほんとにほんっとーーーに?」
「なんでも良いと言ったぞ。思いつかぬのならば、もう」
「あー! 思いついたー!」
相変わらずせっかちな神様の言葉を遮り、両手を上げる。
「ちっ、早く言うがいい」
今、舌打ちした? したよね? 神様の割に柄悪いよ、カイロスさん。
「世界一の魔法使いにしてください!」
「不可能だ」
「えぇ、さっきなんでも言ったじゃん、ウソツキぃ」
「嘘では無い! 貴様の知能が足りていないのだ! そのような曖昧な願いではなく、ハッキリした願いを言え」
成程。確かに、何をもって世界一というか、これじゃ人によって見方が変わってしまうかな。癒しの魔法で、攻撃魔法で、魔法理論で世界一とか、色々あるもんね。
「うーん、それなら、人間以外の言葉が分かるようにして下さい」
「ふむ。多種言語を会得したいという事か、分かった」
やった! これで、動物との交流が出来ちゃったり!
ファンタジーな世界に夢を馳せる私を見下ろして、神様は私へ手をかざした。何事かを呟いて、光が私を包んで消える。
「ありがとうございます! 早速試しにっと、もう一つ残ってた」
今にも駆けだそうとしたが、もう一つの願いを思い出して止まる。そんな私に、再び舌打ちする神様。
「さっさと言うがいい、それで二度と会う事もなかろう」
「え? そっか、そうですよね、神様だし普通は会えない存在ですもんね」
そう思うと、寂しい気持ちもしなくは……なくも無いか。まぁ、恩義は感じていますよ。
「分かりました。最後の願いです。カイロスさんに望む通りの髪が生えてきますように」
私の言葉に、めんどくさそうに見下ろしていた瞳が驚いて見開かれる。ターバンがもさもさ動いて、ズレた。恐る恐る頭に手をやる神様へ、私はサイドテーブルの手鏡を差し出す。
震える手でターバンを外し、手鏡を手にした神様はハラハラと涙を流し立ち尽くしていた。
「私に、私に、髪が」
絞り出すように吐き出された言葉は、彼がどれだけ渇望していたのかを如実に語り、私も嬉しくなった。
「良かったですね、カイロスさん」
ニコッと微笑んでカイロスさんを見上げると、彼は涙を流したまま光に包まれて消えて行った。
三つの願いを叶えたらもう会えないって言ってたもんね。最後に恩返しも出来た事だし、これからの私の人生は何があっても手に職は出来たようなものだし、お互いハッピーでよかったね! カイロスさん!
この世界へ転生させてくれて、特殊能力まで与えてくれた神様に感謝を捧げると、早速能力を試さんと、私は部屋を飛び出していった。
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